09/18: 『ぼくはうみがみたくなりました』福田是久監督・伊藤祐貴 対談:第5回
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Posted by: HogaHolic

取材・文/水上賢治
第1回:内ではなく、外へと飛び立つ映画を目指して。
第2回:“天使”を探し求めた主役オーディション
第3回:伊藤祐貴、現場にて撮影期間中“浅野淳一”で居続ける
第4回:監督が目指したこと。浅野淳一が現場にもたらしたもの
自閉症の青年と心に喪失感を抱えた少女の交流を温かく綴る本作。自閉症の愛息への想いを込め、父親の山下久仁明が 書き上げた同名小説をもとに、1000名を越す賛同者からの協力や寄付金で映画化が実現。様々な人々の想いを乗せた作品は、障害者を扱った映画が陥りがちな教育的で品行方正なだけの内容に止まらない。弱者を哀れむような悲壮感とも無縁で、ある意味、“自閉症”というテーマに抱きがちな暗いイメージとは違った、大きく扉が解き放たれた快活な作品に仕上がっている。重要なテーマを真摯に受けとめて“全力投球した”と言い切る福田是久監督と主演の伊藤祐貴が作品に懸けた想いを語る。
第5回:作り手として、演じ手として
ここまで映画の全体像を語っていただきましたけど、最後はお2人が個人的に見てほしいところを語ってもらえたらと思います。まず、福田監督は作り手として"ここは"というのがありましたら。
福田:僕はこの映画を"間"の映画だと思っているんです。それは明日美と淳一の間にある距離であったり、出演者たちの演技の"間合い"であったり。そこをどう表現するのか大切にしたし、それは同時に自分にとって大きなチャレンジでした。あとはこれが観客の皆さんにどんな距離感を持ってみていただけるのか。それでドキドキしています。少しでも皆さんの心の近くに届いてくれるといいんですけど(笑)。正直なことを言うと僕にとっての映画初監督作品ですから、不安がないといったら嘘になる。でも、この映画の公開を誰よりも心待ちにしているのは何を隠そう僕です(笑)。
変な話で恐縮なのですが、僕はこの映画は気持ちのいいロード・ムービーだと思いました。この映画に漂う空気や、登場人物たちの間に流れる時間がすごく心地よくて。その舞台となる各シーンの背景も実にマッチした美しい場所が選ばれている。だから監督もおっしゃっていましたけど、"障害者の"という先入観をもたず、まずは1本の映画として見て。その上で、この映画が自閉症についていろいろと観客のみなさんが興味をもつきっかけになったらすばらしいと思います。
福田:そういってもらえるとうれしいです。僕はこの映画を通して、自閉症の本当のところに関心を持つきっかけが与えられたらいいと思うんですね。
伊藤:そうですね。それこそ、さっき僕が話した山の手線の高校生のような子が自閉症のことに興味を持って家に帰ったらインターネットで検索するみたいになったらうれしいですよね。ある自閉症のクリニックをやっておられる先生にお会いしたんですけど、その先生はこの映画を見て自閉症を"面白がってくれたらいい"とおっしゃっていて。僕はなるほどなと思ったんですよ。僕たち障害者の方を前にしたとき、どこか同情したり、場合によってはへんに警戒したり、好奇の目で見てしまったりするじゃないですか。そうではなくて、僕たち初対面の人と向き合ったら、"どういう人かな"といろいろと探って、そのひとのパーソナリティを知ろうとしますよね。それと同じように自閉症の方を前にしたときも、"どんなパーソナリティの人なんだろう"と関心を持つことが大切なような気がします。
福田:そうそう。物事って無関心ということが変なイメージを植えつけたりする。関心を寄せるだけで何かが変わると僕は思う。そういう映画になってくれたらこれほどうれしいことはない。その一方で映画はやはりエンターテインメントで、僕はみなさんに心地よく楽しんでもらえたらと思っていて。だから美しい映像になるよう努力をしたし、音楽もこだわった。
伊藤:高速道路を走るシーンなんか、ブリティッシュ・ロックがかかりますよね。教育映画だったら考えられない(笑)
福田:そうだよね。あと、ワンシーンワンカットが好きなので、そういうアプローチをしたり。自分でもけっこう映画的に尖がったこともしていると思う。
僕もそう思ったんですけど、監督のロックな(笑)もの作りの姿勢が出ていますよね。では、伊藤さんは演じ手として何かありますか?
伊藤:当時書いていた日記をこの前、読んだんですけど、"これでいいのか"とすごく悩んでいる。反省点はもちろんあるんですけど、現時点での伊藤祐貴という俳優が持つ力はフルに出せたと思っています。先の話で"スクリーンと別人"との話が出ましたけど、これって金井淳一という役に伊藤祐貴という俳優の匂いが残っていなかったことだと思うんですよ。こういうふうに良い意味で、観客のみなさんの意表をついていく役者になりたいですね。"伊藤祐貴は只者じゃない"と思われるような俳優になれたら最高です。
初の大役で、いきなりハードルのものすごい高い役を演じられて。もしかしたら今後の方が大変かもしれません。でも、今後にとって大きな経験にもなったのではないでしょうか?
伊藤:確かにそうですね。"自分はこれぐらいのことはできるけど、こっちのことはまだまだ"というのが明確にわかった現場でした。今回の経験で、役作りに関する自分の中のひとつのベースが出来たと思います。あと、まだまだなんですけど、主役を務めたというのは大きな自信になりました。べストを尽くした作品なのでぜひ多くの人に観てほしいです。

「ぼくはうみがみたくなりました」公式サイト
http://bokuumi.com
東京都写真美術館ホールにて9月18日(金)まで公開中(全国順次公開)
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