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第1回:我が女優人生、決断のとき
取材・文/水上賢治
第2回:美代子阿佐ヶ谷気分=マリー阿佐ヶ谷気分?(7/1更新)
第3回:スタッフと共演者が援護射撃(7/3更新)
第4回:私がこの世界に入った理由(7/7更新)
第5回:気づけば30歳。これからのヴィジョン(7/9更新)


江本純子と毛皮族を旗揚げし、その看板女優として知られる町田マリー。これまで舞台を中心に活躍してきた彼女が、ついに映画界でその実力をいかんなく発揮するときを迎えた。そう断言できるぐらい『美代子阿佐ヶ谷気分』で、我々はとてつもないヒロイン像を目撃する。とにもかくにも彼女は、伝説の漫画家・安部愼一の私漫画の被写体である“美代子”という役を生き、女のあらゆる“業”を表現しなくてはいけない難役を見事にやってのけた。チャレンジングな役柄に挑んだその心境を訊いた。


第1回:我が女優人生、決断のとき


この映画は、漫画家の安部愼一と生涯の伴侶となる美代子さんの人生の遍歴が描かれていきます。ただ、この2人の結びつきというのは強烈で、その生々しい愛の軌跡を体の結びつきをもって表現していかなくてはならない。この役を引き受けるのは非常に勇気がいることだと思います。最初に単刀直入にお聞きしたいのですが、正直、話がきたとき悩みませんでしたか?

町田 すごく悩みました。踏ん切りがなかなかつかなくて、結局、2ヶ月ぐらい返事を待ってもらいました。

それは肌の露出とか、性描写に関する部分が大きかった?

町田 やっぱり脱ぐことは決心が必要で、勇気がいりましたね。すべてをさらけ出すわけですから。だから、自分が演じる上で確固たる理由というか、納得するものが欲しかったんです。さらに言うと、そう思える内容の映画でないとやはり一歩踏み出せない。今回の場合、坪田監督は長編デビュー作で、私自身も映画にはそんなに慣れていない。果たして、その責務をしっかりと背負えるのかどうか。あらゆる面で未知数な部分が大きくて、リスクが高いと思っていたんです。

悩み抜かれた上で、最終的に“やる”と決めた理由は?

町田 まず、坪田監督とお会いしたとき、この作品に懸ける意気込みや想いをいろいろとお話していただいて。安部さんに関する資料もいっぱいいただきましたし、イラストを描いて映画の世界観やイメージを可能な限り伝えてくれました。その熱意に動かされたのがひとつ。それから、悩んでいる間にいろいろな方に相談したんですけど、話を聞くと安部さんを崇拝しておられる方ばかり。失礼なんですけど、そこで改めてすごい漫画家さんなんだと認識し直して、そのヒロイン役にオファーをいただけたことを感謝しました。それと、相談した方々に私の美代子役を「合っている」と言ってもらえて。実際に美代子さんにお会いになった監督も「雰囲気が似ている」と言ってくださったんですね。それで、最終的に“これがすごい面白い映画になって、自分が出ていなかったら悔やんでも悔やみきれない”と思ったんです(笑)。ここは思い切ってこの作品に賭けてみよう!と決心しました。

原作を読んで、どう感じられましたか?

町田 最初は正直なことを言うと、ピンとこなかったんですね。ところが出演オファーを正式に受けて真剣に読み込んでいくうちに、急に目の前が開けて。“なんて素敵な漫画なんだろう”と思いました。

具体的にはどういったところに惹かれたんですか?

町田 人の気持ちのちょっとした揺らぎや、ふとした瞬間に芽生える愛情とか、細かい男女の心理がすごく描かれているんですね。同姓の美代子さんの視点から見てしまうんですけど、信じられないぐらい女心がうまく描かれていて。セリフとかも非常に共感を覚えるものばかりでした。例えば、美代子さんが仕事を終えて帰ってきたら、1日中家にいた安部さんは何にもしていなくて。そこで「ごはんぐらい炊いておいてくれてもいいじゃない」と美代子さんが怒り気味に言うんですけど、その後すぐに「ちょっと怒った方がいいかと思って」と言い直すんですね。何気ないやりとりなんですけど、すごい2人の距離というか関係が垣間見えてくる。原作を読んで以来、安部さんのファンになってしまって。撮影を終えてかなり経ちますけど、いまだに安部さんの作品を集めているんですよ。

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■PROFILE
町田マリー(まちだまりー)
1979年、千葉県出身。立教大学在学中、江本純子と毛皮族を旗揚げ。看板女優として活躍。その他の主な舞台出演作にポツドール『激情』(06年)、the company『バーム・イン・ギリヤド』、椿組『東京番外地』、『黒猫』(以上08年)、演劇企画集団THE・ガジラ『PW』(09年)など。また、NHK『エル・ポポラッチがゆく』(06 年)、TBS『ドリアンガールズ』(07年)のレギュラー出演や、TX『週刊真木よう子〜おんな任侠 筋子肌』、CX『33分探偵』(08年)、NHK『白洲次郎』、EX『必殺仕事人2009』などのドラマ出演、WOWOW『プルミエール』ではナレーションとしてレギュラー出演するなど多方面で活躍している。映画出演作に主演を務めた『映画監督になる方法』(06年/松梨智子監督)の他、『東京残酷警察』(08年/西村喜廣監督)、『イエローキッド』(09年/真利子哲也監督)などがある。
09年7月には舞台『ヘッダ・ガブラー』、9月には舞台『中国の不思議な役人』への出演を控える。


『美代子阿佐ヶ谷気分』公式サイト
http://www.miyoko-asagaya.com/
7/4(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開

町田マリー公式サイト
http://www.gorch-brothers.jp/