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NYAFF2010



ニューヨークアジア映画祭でNY滞在中だった入江悠監督と、ドキュメンタリー映画『選挙』『精神』が国内外で高い評価を受けているNY在住16年の想田和弘監督。作風は似ても似つかないが、インディペンデント映画の在り方を追求、模索し続ける映画への真摯な姿勢はどこか相通じるところがある。「大学進学の時にニューヨークに行くかどうしようかすごく迷った事があって、現地で仕事されている想田さんにとてもお話を聞いてみたかったんです」という入江監督のたっての希望で、緊急企画が実現。話はやはり自主映画の作家として、どのように生計を立てていくかに終始した。

構成・文/植山英美

 

入江:ニューヨークに居たほうが活動しやすいですか?

想田:世界中からいろんな人が集まっているわけですから、自分の視点を見つめ直すというか。日本にいると日本の常識で、物を見ちゃうでしょ。

入江:海外に住んでいると、扱う題材は日本国内に向くものですか?

想田:それまでは主にアメリカでテレビ用のドキュメンタリーを撮っていたので、日本にカメラを向けたのは『選挙』の時が初めてなんです。でも、カメラを向けてみると面白くて。自分の文化を見つめ直すというか、自分自身を鏡で見るかのような、そういう奇妙な感覚があって。

入江:『選挙』はどこかのオファーとかではなくて、自主制作ですか。

想田:完全に自分の(企画で作った)映画です。

入江:『SRサイタマノラッパー』は制作もそうですが、配給は自分でやった部分が多かったです。一応共同配給で一緒にやってくれたところもあるんですけど、基本的には自分で素材とかを送ったりしていたんですね。2作目の『SR サイタマノラッパー2』では制作委員会になってしまっていて、バルト9のT-JOYが配給をしてくれているのですが、それでも地方の劇場はまずお客さんが入らないです。『選挙』とかってどうだったんですか?

想田:『選挙』より『精神』の方が入りました、3万人くらい。

入江:あ、そうなんですか。結構(公開期間が)長かったですもんね。すごいですよね、3万人入るって。何館くらいなんですか?

想田:約30館です。僕も映画館を周りました。『選挙』の場合も『精神』の場合も社会問題を扱ったものだったので、それとの絡みでプロモートするという方法もやれますし。『選挙』公開の時には選挙の事務所に片っ端からチラシを撒いたり。国会議員向けの試写会をやるとか、コアな観客を作るわけです。コアを作って、そこからじわじわ広げる。『精神』の場合は患者さんの家族とか、精神科医の学会とか看護士さんですとか、家族会とか、いろんな精神疾患に関する集まりがあるわけじゃないですか。まずその人たちにアピールするんです、そういう人たちが一番のコアになりますから。『SRサイタマノラッパー』はどのくらい入ったんですか?

入江:レイトの1日1回上映とかから始めたんで、1万人くらいですよ。しかもほとんど東京で占められているんで。PR費もほとんどなかったので、地方とかは厳しいですね。日本とそれ以外とでは、どちらが(収益が)良かったんですか?

想田:『選挙』は世界200カ国でテレビ放映されているので、それが大きかったですね。民主主義に関するドキュメンタリーを、英国BBCとか、日本のNHKとか、世界の33カ国の公共放送がひとつになって、世界で同時にテレビで放映するという企画があって。その時たまたまBBCのプロデューサーが『選挙』を気にいってくれて、ラインナップに入れてくれたんです。日本より収益は断然大きい。

入江:200カ国はすごいですね。

想田:他に映画祭で賞をもらったりして、予想外の収入が多かったです。世界的には、ドキュメンタリーはあまり劇場でかからないので、どうしてもテレビからの収入がメインになります。日本では最近、ドキュメンタリーの劇場公開も一般的ですが、ヨーロッパやアジアでは非常に稀です。アメリカでもやるにはやるんですが、比重的には大きくない。マイケル・ムーア的な、エンタテインメントな要素が強い作品でもないと。でもね、ものすごく低予算でやってコストを抑えれば、何とか回収できる道はあるので、作家の独立性は保てると考えているんです。誰かのお金を使う、という事は、誰かの言う事を聞くということですから。制作費をもらう場合には、独立性が保てるカネかどうかを吟味してからもらいます。

入江:それでも食べていけるんですね。なんでこんな話を聞いているかというと、インディペンデント映画のあり方をラジオで喋らなきゃいけないんですよ。『精神』だけで1年間暮らせちゃうもんなんですね。他にそんな例あります?

想田:どうかな。でも、贅沢してるわけじゃないからねえ。僕はもともと映画で生活しようなんて考えてなかった。特に『選挙』の時なんて、誰かがお金を払ってくれるなんて、思ってなかったですからね。お客さんに観ていただければ、それでいいと思っていたんで。

入江:じゃあカメラを回している時は公開の事は考えてなかったんですか?

想田:僕はテレビのドキュメンタリーをやっていたんですが、テレビの制作方法やスタイルに対する疑問や反発がすごくあって、それが渦のように巻いていたわけ。自分のやり方で一本撮らないことには、どうにもおさまらないところまできていたわけですよ。だから自分の為に撮ったんです。その時はお金のことなんか考えてなくて、それこそ貯金を使って。だから、資金が回収できて、曲がりなりにも今まで作家としてやってこれたのは、ラッキーだったんです。

入江:作品を作る動機に関しては、僕と全く同じです。

想田:『SR サイタマノラッパー2〜女子ラッパー☆傷だらけのライム〜』の制作費はどのくらいだったんですか?

入江:『2』はもともとゆうばり(国際ファンタスティック映画祭)のグランプリの賞金が元手になっていて、それが200万円だったんで、少し足したりしましたけど。

想田:それくらいでできちゃうもんなんですか?

入江:『1』はそんなもんですよ。それ以上コストをかけると回収できないですね(笑)。ちょうど今一緒に来ている松江監督の『ライブテープ』は一番低コストでやってますよね(笑)。

想田:編集も要らないから(笑)。

入江:『ライブテープ』は、制作費2000円と言ってますからね(笑)。テープ代とかって言ってますから。

想田:すごいですね、見習いたい。でも、表現したいものによっては、カネもかかるからなあ。安けりゃいいってもんでもない。難しいところですね。

入江:海外の配給はMG(ミニマム・ギャランティー)というのはあるのですか。

想田:話し合いによると思うんですが、海外配給の独立系ではあまりないですね。売り上げの7、8割が制作側に入る仕組み。

入江:難しいですね。(収益は)読めないですし。米国の独立系の人たちはどうやっているんでしょう。

想田:ドキュメンタリー作家だけで食べている、というと皆に驚かれます。たいてい大学で教えていたり、別の仕事をやりながらという感じですかね。プロダクション会社を運営しながらとか。人それぞれですね。

入江:アメリカだから少しは楽だっていうのはないんですね?

想田:それはないですね。どの国にいても同じでしょう。まぁヨーロッパのように助成金が充実している国以外は。アートが人間にとって不可欠だって思っている国は税金を使ってくれますね。医療に税金を使うのと同じような感覚で。米国も日本もアートは贅沢品だと思われている。そういった国では状況はやはり厳しいですね。

入江:海外に幻想を持っているわけではないんですが、その細かい受注の仕事をやらないでも生活出来るというのは、すごいことですよね。

想田:いつまで成立するかわからないですがね。でも、どんな仕事も先なんてわかんないじゃないですか。大会社の社員でもいつ会社が無くなるかなんて、本当に分からないし、保障はないですもんね、もう。だから同じことなら自分の好きな事をやったほうがいいと思って。僕は選挙を撮る前はプロダクションに居たんです。正社員だったんですが、その会社の経営がちょっと傾くと、ほとんどの人が解雇されちゃって、僕も解雇されちゃったですし。それがきっかけで自分のプロダクションを立ち上げたっていう。あの時本当に思い知ったね。安定した仕事うんぬん言っても、本当に幻想じゃないかって。その後自分のプロダクションを立ち上げて、いろんな仕事をするようになって気が付いたんですが、実は小さな収入源がいくつもある方が、大きな収入源がひとつしかないよりもずっと安全だということ。例えば顧客のうち一社が調子悪くても、他の社が調子よければ、仕事は途切れないからね。それから日本との違いはレートです。フリーの方が、社員よりも単価が数倍高いから。

入江:それが日本との違いですよね、何でなんでしょう。

想田:考えたら当たり前ですよ。例えばホテルに泊まるのと、契約してアパートを借りるのと、どちらが高いですか? アパートは1年単位で契約しなくちゃいけない。ホテルは1日単位で借りれるわけでしょ。フリーランスというのはホテルと同じです。雇う側にとって便利な代わりにお金もそれだけ払わなくちゃいけない。日本だと逆ですよね。

入江:日本では調整要因としてフリーがいるから、安く使って、いつでも切り捨てられる、という考えなんです。

想田:そこが全然違う。僕はフリーになって収入が上がりましたね。そこは日本との大きな違いですかね。

入江:そうですね。もし映画だけでしんどくなった時にその間食いつなげますよね。

想田:フリーでやるには能力も必要だけど、単価が高いから毎日働かなくても生活できるし、映画をやる時間もできるしね。

入江:そうですか、ちょっと考えちゃうな(笑)。今『選挙』公開中ですよね。

想田:『精神』ももうすぐやります。『SR サイタマノラッパー2〜女子ラッパー☆傷だらけのライム〜』も今公開中でしょう?

入江:ええ、がんばって宣伝しないと。もう明日には帰国しなくてはいけないんです。

想田:是非、ニューヨークで再会しましょう。

入江:是非!

  line-up

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  Profile: 想田和弘(そうだ・かずひろ)

1970年、栃木県足利市生まれ。東京大学文学部卒、スクール・オブ・ビジュアルアーツ映画学科卒。93年からニューヨーク在住。ドキュメンタリー映画『選挙』(2007)、『精神』(2008)が国内外の映画祭で高く評価される。現在、劇作家の平田オリザさんと青年団を被写体にした観察映画第3弾『演劇(仮題)』を編集中。

『精神』公式サイト
http://www.laboratoryx.us/mentaljp/
※7月24日のDVD発売を記念し、17日より東京・大阪・岡山などでリバイバル限定ロードショーが決定。

『選挙』公式サイト
http://www.laboratoryx.us/campaignjp/
※7月以降も東京ほか各地で復活ロードショー中。詳細は下記リンク参照
http://www.laboratoryx.us/campaignjp/screenings.html
「精神」
『精神』

(C)2008 Laboratory X, Inc.


  Profile: 入江悠(いりえ・ゆう)

1979年、神奈川県出身(埼玉県育ち)。2003年に日本大学芸術学部映画学科卒業。『SRサイタマノラッパー』(2008)が09年3月の初公開から超ロングランヒットを続け、海外でも好評を博す。その続編にあたる『SRサイタマノラッパー2〜女子ラッパー☆傷だらけのライム〜』は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でのグランプリ受賞を経て、その支援金で製作された。

『SRサイタマノラッパー2〜女子ラッパー☆傷だらけのライム〜』公式サイト
http://sr-movie.com/

※6月26日(土)より、新宿バルト9ほか全国順次ロードショー
「精神」
『SRサイタマノラッパー2
 〜女子ラッパー☆傷だらけのライム〜』

(C)2010「SR2」CREW


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