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TOP > INTERVIEW:塚本晋也andエリック・ボシック インタビュー
塚本晋也インタビュー

トライベッカ映画祭唯一の日本映画参加作品となった『鉄男 THE BULLET MAN』。塚本晋也監督、主演のエリック・ボシック氏は、トークショー、北米プレミア、舞台挨拶、米メディアならびに日本メディアとの会見などを精力的にこなした。全てのスケジュールを終えた4月27日、帰国を翌日に迎えた深夜、現地特派員との単独インタビューに答えてくれた。

取材・文/植山英美

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記念すべき北米プレミアと奇跡のエンディングテーマ

  『鉄男 THE BULLET MAN』
『鉄男 THE BULLET MAN』
© TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009
−ニューヨーカーの反応はいかがでしたか。

塚本監督(以下、T):音が大き過ぎたのか、何人か途中退場した観客がいましたけど、やはりああじゃないと。僕の映画は万人にうけては駄目なのです。賛否両論があって初めて成功した、と感じます。今作品は1や2に比べて少し観客に歩み寄ったストーリーになっていますが、和やかな拍手が起きたりすると、『これは違うな、完成してないな』と思うんです。アメリカ人は全ての反応が自然ですね。日本で一度映像が3分の1ほどずれてしまった事があったんですが、誰も何も言わなくて。アメリカならブーイングでしょう。その点は気が楽です。『鉄男 THE BULLET MAN』は【僕なりのアメリカ映画】です。17年前から何人ものプロデューサーに『鉄男アメリカ』の話をいただきましたが、結局実らずに自主で作ることになった。彼らの中から選んだとすれば(クエンティン)タランティーノと一緒にやればよかったかなとは思いましたね。彼は「監督の権利が守られるように、チームを組むから」とまで言ってくれました。その当時は僕自身まだアイデアが固まっておらず、タイミングが合わなかったのです。『鉄男THE BULLET MAN』は、初めて海外を意識して制作した作品です。毎回作品を作るたびに外国を意識しているのかと聞かれるのですが、今までは自分の好きなものばかりやっていて、それを評価していただいた。だが今回は違います。

−ナイン・インチ・ネイルズがエンディング曲を書き下ろしました。

T:『鉄男』のファンでプロモーション・ビデオを作って欲しいと、手紙をいただいてから20年。やっとコラボレーションがかなって、とてもうれしい。連絡の行き違いで、ビデオ制作が実現する事はありませんでしたが、その時は『両性具有者が自分で自分を犯して、そして月が蒼い』というイメージで話が進んでいたんです。でもトレント・レズナーさんから返事が来て「是非それでやってもらいたいですけど、MTVでは流せません」と(笑)。もしまた新曲でPVを作る機会があるなら、身体がぼうぼう燃えながら歌ったりとか、『ゴッド・ファーザー』のイメージで弾丸を撃たれ続けながら歌うとか、シンプルなアイデアですが、きっと面白いものが撮れると思います。エンディングテーマの話はこちらがオファーした後、即諾していただいたのですが、曲が届くまでが長くて。活動休止という噂も聞こえてきたので、キャンセルになるかなとも思っていたので、実現してよかったですね。


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CGを凌駕するリアリティの追求

−タイトルバックでエリック・ボシックさんが踊るシーンがすごくかっこよかった。

T:初代『鉄男』の田口さんは、アングラや、パンク・ロックとお芝居のミックス感がよかった。エリックも暗黒舞踏をずっとやっていたのと、大学で正統派な演劇を学んだ経験が活かされているのではないでしょうか。生き生きとしていましたね。

  『鉄男 THE BULLET MAN』
『鉄男 THE BULLET MAN』
© TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009
エリック・ボシック(以下、E):アンソニー役を演じるにあたって、相当前から準備しました。アンコクブトー(暗黒舞踏)のおさらいをして、使っていなかった筋肉を呼び覚ましたり、毎日ジムに行き、ボクシングや筋トレ、ランニングをして、身体をつくりました。またスピリチュアルな『チカラ』をつけるために、登山をしたり、お寺に行ったりもしました。外見と中身両方を鍛えたかったのです。また役柄に合わせる為に、ダイエットもやりました。この役は僕にとって本当に大事だったので、身体のピークを撮影時に合わせる為にスケジュールを組みました。9ヶ月間の撮影時間は長く、アンソニーの人生を自分に取り込むことによって、感情的に追い詰められてしまった事もありました。息子が殺された時の感情や、誰かを殺してしまいたいと思う感情などを自ら深く感じ取ると、その日撮影が終わったからといって、すぐ自分自身に戻るのは難しかったです。身体的にも痛い思いをしました。鉄のマスクを身に付けているのは、実際痛かったですし(笑)。一度素肌に黒いオイルを塗らなくてはいけないシーンがあって、アレルギー体質という事で、メイクさんが食用のものを用意してくれたのですが、後で黒唐辛子のエッセンスだとわかったんです(笑)。身体中の皮膚が燃えるように痛くなり、ちょっと大変でした。

−作品中、「煙」が印象的に描かれていましたが、何かのメタファーなのでしょうか。

T:煙は鉄が生まれるときに出るものだと。アンソニーが怒りと苦しみで身体が鉄に変身していく時に、煙が出てくるので、言うなれば怒りの象徴ですね。声は鉄を叩いたり、引っ掻いたりした音を被せた。変身するごとに、だんだん鉄の音の部分が多くなってきます。映像の部分ではCGを使っていないので、中にいるエリックは変身するたびに、重い、苦しいとリアルに感じていたはずです。その表情はブルーバックでは決して出せない。その点は本当によかったな、と思いますね。俳優というのはちょっとしたことで演技が左右されてしまうものなので。

E:塚本監督は俳優でもあり、演者の気持ちが良くわかっているので、とても演じやすかった。例えれば楽器を演奏できる作曲家と演奏できない作曲家との違いといえばわかりやすいでしょうか。僕自身も映像作家なので、監督が言葉で説明しづらい部分を理解する事ができた。画にした時にどのように自分自身が見えているのかイメージができたので、役に集中する事ができました。

T:エリックのように 監督が何をやっているのかわかっている俳優は助かります。自主制作なので、手が足りないところも有りましたが、彼はとても細かいことまで気を配ってくれました。日本人より神経質で細かい。


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実は僕、黒人になりたかったんです(笑)

−監督が『鉄男』シリーズで演じられている【ヤツ】は、必ず短パンで出てきますよね。

T:そこを説明させてもらいますと、実は僕、黒人になりたかったんです(笑)。【ヤツ】は黒人のイメージで、黒く塗ったり、日焼けをしたり、身体を鍛えてあるんです。陸上競技で、黒人が活躍しているのにあこがれて、肉体の躍動感とかですね。ただ黒人に憧れているだけで、あんまり論理がないんです(笑)。【ヤツ】役はもう肉体の限界、今度俳優として演じるなら【ヤサシイおじさん】役がいいですね(笑)。

−従来の『鉄男』シリーズに比べ、エロチックさが少なくなっているような気がするのですが。

  『鉄男 THE BULLET MAN』
『鉄男 THE BULLET MAN』
© TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009

T:僕は作品中でエロチックな表現を意識的に強調しているのです。本来あまりエッチな人間ではないので、その反動です。映画を作り始めた頃は、本当はエロ映画を作るつもりだったのですが、エロ映画よりホラー映画の方が人気がありそうだったので、ホラーを混ぜてエロホラーにしてみたというわけです。ホラーとエロは近いところにあると思うので。ただ20年前の『鉄男』は、「破壊だ、壊せばいい」という感じでした。破壊する時の衝動はエロに通じていているじゃないですか。今回は「壊していいのか、壊してはだめなのか」と悩む男になっている。エロというよりは葛藤する男です。ですが、破壊する寸前で止めようとする感覚はかえってエロですかね。銃というのは“それ”のメタファーなので、もっと使えばよかったかなと思いますね(笑)。

E:自分の身体が武器になってしまう中で、アンソニーは撃った後オーガズムを感じているのです。一瞬でわかりにくいですがよく観るとそういう顔をしている。殺す為に生まれてきたけど、その事実と戦おうとする。殺そうとしながら、途中で止めようとしている。だから敵の足や手を撃つが、顔や頭は撃たない。撃ちながら、撃ってはいけない、と気持ちのはざまで揺れ苦しんでいるのです。

−性的快感を抑圧する、禁欲的なキリスト教の影響なのでしょうか。

E:そこは違います。彼の身体は兵器としてプログラムされているから、攻撃すると快感を覚えるように出来ている。生きるのは苦しみから始まっているという仏教の考えの方が近い。ヒショウニン(非聖人)の教えです。(日本語で)「正しい道あらば、悟りを開く」。悪と人間の尊厳との戦いといったらよいのか。心の中でいかに相手を許せるか、怒りをコントロールできるか、がテーマなのではないでしょうか。

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ニューヨークに触発された【鉄男】

−ロバート・デ・ニーロさんと面会されましたが、印象はいかがでしたか。

E:エキサィテングだったというよりも、何かこう懐かしいような気持ちがしました。僕はペンシルベニア州出身で、ニューヨークと近隣という事もあり、2つの州はとても似ています。僕は世界中で移住を繰りかえし、米国に実際に住んだ年数は5年と少ないですが、父親はペンシルベニア州に住み続けていたので、すごくアメリカ人っぽいです。デ・ニーロさんは生粋のニューヨーカーなので、訛りや動きなど、なんとなく父を連想させました。

T:気難しい方だと聞いていたのですが、とても活発に話してくださった。『次回作に出てください』と言ったら、『今時間があるから脚本を持って来い』と切り替えされた。世界で一番素晴らしい俳優だと思っているので、彼の映画祭に出品でき、お会いできて光栄です。

−塚本監督のこれまでの作品について、リメイクの話があれば教えて下さい。

T:『悪夢探偵』のリメイクのオファーをハリウッドからいただいています。ハリウッドは動くお金が大きいですし、法的な手続だけでも膨大なようなので、企画がなかなか進んでいません。以前はリメイクをなるべくやりたくないと思っていた。自分のアイデアなのに、他人の手柄のようにされてもね、と。でも今は“来るなら来い”の心境です。

−『鉄男4』も観てみたいです。

  『鉄男 THE BULLET MAN』

T:やはりこの街はイメージが触発されますね。もう『鉄男』はやらない、と周りに言っていたのですが、ビルの谷間を散歩していたら、いろんなアイデアが浮かんできて止まりませんでした。ニューヨークは土地がシュールなのです。東京もシュールで、バーチャルリアリティの舞台によくなっていますが、テクノロジーやビジネスの面でもニューヨークが一番のシンボルではないですか。ニューヨークが舞台の『鉄男』の事を考えてしまいました。ビルは破壊しませんがね(笑)。

(植山英美)


 
スペーサー   Profile: 塚本晋也(つかもと・しんや)
スペーサー
1960年1月1日、東京都渋谷生まれ。14歳で初めて8ミリカメラを手にする。高校時代から本格的に絵画を学び、意欲的に8ミリ映画製作を続けると同時に、演劇にも魅了される。日本大学芸術学部美術学科在学中は、自ら劇団を主宰。同校卒業後、CF制作会社に入社し、ディレクターとして4年間つとめ、退社後、85年「海獣シアター」を結成。86年『普通サイズの怪人』で映画製作を再開、87年『電柱小僧の冒険』でPFFグランプリを受賞。89年『鉄男』で衝撃的デビューを果たす。以降もコンスタントに作品を作り続け、監督7作目にあたる『六月の蛇』では02年ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞。
スペーサー
『鉄男 THE BULLET MAN』公式サイト
http://tetsuo-project.jp/

5月22日よりシネマライズ他全国ロードショー
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(C)TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009
   

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