HogaHolic LOGO
topNEWSREVIEWVOICETHEATERFEATURE
filmfestival
TOP > INTERVIEW:田口トモロヲインタビュー
田口トモロヲインタビュー

日本映画祭ジャパンカッツでの『色即ぜねれいしょん』上映に伴って、ニューヨークに滞在した田口トモロヲ監督と、主演の渡辺大知さん。低予算の自主映画から大作まで幅広く出演する人気俳優でありながら、監督、ミュージシャンとしても活動する多才な田口監督と、同じくミュージシャンであり、映画初出演ながら本作で俳優として高い評価を得た渡辺さんは、映画制作専攻の大学生でもある。ニューヨーク初訪問という2人に現地記者が話を聞いた。

取材・文/植山英美 撮影/高橋康進(映画監督)

line
欧米では『色即ぜねれいしょん』はコメディ?

今回、ドイツの映画祭(ニッポン・コネクション)に続いて、2度目の海外上映という事だそうですが、ニューヨークの観客の反応はいかがでしたか。

田口:すごくよかったので、すごく驚いたのと同時に、すごく嬉しかったです。

ドイツとの違いはありましたか。

 
『色即ぜねれいしょん』
©迯屋09「色即ぜねれいしょんズ」
田口:ドイツでも大ウケしていて、反応がよかったです。上映に立ち会うつもりはなかったのですが、あまりにも観客のみなさんがゲラッゲラ笑うものですから、嬉しくなって、全部観ちゃいました。そんなに笑える映画だったのかなと。公開も終りましたし、DVDも発売されていますので、自分の中では一通り終ったと思っていたのですが、今回のように映画祭に呼ばれるというようなサプライズプレゼントがあるなんて、思ってもいなかったです。渡辺君は2度目の海外旅行だという事ですし、若い人にとって、こういう機会があって、映画が世界の共通言語であるという事を、見たり聞いたりして確認できたのは、やっぱりいいことですよね。

渡辺:1度目はシンガポールに修学旅行で行ったんです。

自分の話した言葉や演技でお客さんが沸くのを見られて、どう感じたのでしょうか。

渡辺:僕のしゃべってるセリフで、とはあまり考えないのですが、お客さんが笑っているのを聞いて、自分でも可笑しくなって笑ってしまいました。普段自分で観てて笑わないところで笑ってしまったり・・・

笑いのツボが違ったりしました?

 
田口:こちらの人は笑いのツボが多いですね(笑)。日本の方は静かに、様子見をする場合が多いのですが、海外のお客さんは『鉄男 TETSUO』でも爆笑しますから。どんだけ笑いのツボがあるんだって(笑)。参加型なんでしょうね、笑っている事が意思表示だっていう。それが日本人にはない感性かな。ニューヨークでも反応が全く違うので、初めて観る作品のような気分になりますし、お客さんの笑いによって作品が作られていく、そんな気がして、楽しかったですね。

渡辺:日本では最初に誰かが笑ったりすると、その日の雰囲気が決まってしまうというか。僕は普通にお客さんとして、劇場で観た事があったのですが、1回も誰も笑わなかったんです。

あの作品を観て笑わないで済ませる事は、非常に難しいと思いますけど(笑)。特にコメディとして作ったわけではないのでしょうか。

田口:コメディと言う意識は実はなくて、ただユーモラスなエピソードは沢山ありますから、そこはお客さんが自由に観て下さっていいと思います。大笑いする人も、心の中でそっと笑う人も、微笑む人もいていいと。爆笑映画のつもりはなかったのですが、海外のお客さんは爆笑してくれるので、違う映画のような気がしてしまいました(笑)。

切ない場面では、米国人もキュンとなっていると思いますよ。

田口:でもキュンとなっているのは、声に出ないものですから。笑いや涙は目に見えるものなので、分かり易いですね。


line
現状の日本映画界で映画を監督するということは…

 
『色即ぜねれいしょん』
©迯屋09「色即ぜねれいしょんズ」
田口監督は、俳優として、塚本晋也監督作品を初めとするインディペンデント映画から大作、テレビドラマまで出演されていまして、しかも20年以上のキャリアがあるので、ご自身の目で何が起こったのか、また何が起こっているのかをご覧になっていると思うのですが、映画業界はどのような方向に向かっているのでしょうか。

田口:テレビというのが、日本のエンタテインメント業界の中では大きくて、強いですよね。1800円の入場料を払ってまで、映画を観に行きたいと思う人は年々減っているように思います。業界も試行錯誤して、シネコンが生まれて、お客さんが戻ってきた。ところがシネコンが出来た影響で、地方にあるミニシアターが閉館したりもしているので、決して楽観的な状況ではないです。日本の映画界は今2極化してて、パーソナルで自由に制作するミニシアター系の低予算映画か、テレビ局主導のシネコン系の映画に分かれてしまっていますが、僕の作品はそのちょうど真ん中に位置していると考えていただいていいです。

その部分を分厚くできる作品がどんどん出てこないと、つまらない気がします。製作費集めはどのように行ったのでしょう。

 
田口:前作『アイデン&ティティ』(2003)は、自分で撮りたくて、企画書を作って持って回り、結局6年間くらいかかりましたが、ラッキーな事にものすごくやる気があって男気のある、いいプロデューサーに出会う事ができたんです。めちゃめちゃ資金があるわけじゃなかったですけれど、好きなようにやらせてもらえました。今回の『色即ぜねれいしょん』に関しては、プロデューサーがこういう映画を撮って欲しいと言ってきて。1974年という物語設定でしたが、70年代当時の風景を探したりなど、製作費がかかる点でも納得していただけたので、お受けする事になりました。今回は6年間もかかったりとかはなかったです(笑)。

峯田和伸さんは素晴らしいですよね。もちろん渡辺さんの自然な演技、素敵でした。

田口:ジャンル外の人を主役にするというアイデアは2度目だったんで、また峯田君以上に人間力のある人物が見つかるなんて思っていなかったんですが…。

見つけてしまいましたね。

田口:「よくこんな逸材を見つけたね」といろんな人に言われました。

2000人の中から選ばれたそうですが。

渡辺:僕は直接会ってないので、実感がわかないです。

田口:書類選考で300人まで絞って、実際会ったのはそれくらいです。渡辺君が「黒猫チェルシー」というバンドをやっている時の映像を見て、普段のもじもじした彼と、ステージに上がると豹変するところが、主人公がラストシーンで突き抜けるというシーンにぴったりだと思ったんです。

田口監督自身もミュージシャンでもあり、人気俳優で、映画出演数が180本と数えられるほど、たくさんの作品に出られていますね。

田口:テレビとか、ナレーションの仕事もやっていますが、やはり映画を一番に優先してしまうと、たくさん出演しなくてはいけなくなるんですよ。僕の場合はインディペンデントの映画にはメインで出て、大作には小さい役で出る。それで経済的にバランスを取るという、ハリウッドで言えばハーヴェイ・カイテルがやっているような作戦ですよね(笑)。日本ではテレビとコマーシャルがかなり大きいです。ハリウッドの話を聞くと、映画の人はほとんどテレビやCMに出ない。

諸外国と比べても、監督を含めて製作側の待遇が低いですよね。

渡辺:僕は大学で映画制作を学んでいるのですが、自主映画の監督の先輩も、ずっと警備員のバイトをやっています。

あえて田口さんが監督をやってみたいという強い気持ちはどこから生まれたのでしょうか。

 
『色即ぜねれいしょん』
©迯屋09「色即ぜねれいしょんズ」
田口:俳優って全体の中の一部なので、どこかで全体を把握してみたい、という思いがあって、カメラの後ろに立ってみたかったんです。僕が親しくさせてもらっている監督達が、どれだけ情熱をかけて、どれだけ映画を苦しみながら作っているかを見てきただけに、俳優をやっていたからといって、おいそれと監督をするのはなかなか踏み切れない部分があったんです。そんな中でみうらじゅんさんの原作『アイデン&ティティ』が映画になるという知らせを聞いたのですが、その後その話が流れたと聞いた時、これは自分でやってみたいと。いろいろな事情が合致して、やっと立ち上がれた感じです。作りたいというモチベーションを維持するのがたいへんですよね。やっぱりくじけちゃう事も多いと思います。

実際、監督になってみていかがでしたか。

田口:常に葛藤があります。僕は2作目なので、自分の作風がまだ決まってないと思うんですが、キャスティングと脚本にはこだわりがあって、譲りたくない部分がありました。自分の中でどう転がっていくのか、また監督をやる事があったら、どう変化して行くのか、考えていると楽しいですね。

次回作はいつですか?

田口:そうですね。次のワールドカップが始まる前には(笑)。いいプロデューサーに出会えるかにもかかっていますし(笑)。インディペンデント映画で、自分で製作費を集めるという選択もありますが、それだけの情熱を持ち続けるにはガッツが必要でしょうし。

オリジナル脚本の作品を撮られるという事はあるのでしょうか。

 
田口:僕一人で書くということはないでしょうが、アイデアはいくつかありまして、自分の過ごしたパンクムーヴメントは撮ってみたい。自分が70年代の社会性と商業性が合致した、そんな楽しい映画を観て育ったので、それらにオマージュを捧げる作品を撮ってみたいというのはあります。サム・ペキンパーや、シドニー・ルメットなどの作品が好きなんですけど、作家性も強くありながら、娯楽色も強い、奇跡のようなバランスがある、そういうのにチャレンジしてみたいです。夢は広がりますよね。妄想というか(笑)、頭の中では自由に映画を撮れますから。


 
  Profile: 田口トモロヲ(たぐち・ともろを)

1957年、東京都出身。
82年に『俗物図鑑』(内藤誠監督)で映画デビュー。その後、塚本晋也監督の『鉄男TETSUO』(89)の主演で脚光を浴び、今や映画俳優として180本もの作品に出演する。一方、演劇活動を78年に「発見の会」の公演を皮切りにスタート、80年代にはパンクバンド“ばちかぶり”を結成し音楽活動も開始。そのほか、94年末に結成したみうらじゅんとのユニット“ブロンソンズ”等での執筆活動、00年からはナレーションも担当するなどその活躍の幅は多岐に渡る。03年に『アイデン&ティティ』で念願の監督デビューを飾り、監督第2作となる『色即ぜねれいしょん』(09)が、ニッポン・コネクション(ドイツ)に続き、NYの日本映画祭ジャパンカッツにて海外上映された。

『色即ぜねれいしょん』公式サイト
http://shikisoku.jp

   

  Profile: 渡辺大知(わたなべ・だいち)

1990年、兵庫県出身。
高校1年生の3月に友人たちとバンド“黒猫チェルシー”を結成、ボーカルを担当。地元・神戸を中心にライブ活動を開始する。2009年に活動の拠点を東京に移し、1st、2ndアルバムをリリース。2010年にメジャーデビューを果たす。『色即ぜねれいしょん』への出演は、2000人を超える候補者の中からオーディションで選出され主役の座を射止めた。
   

ページトップへarrow    



©2008 HogaHolic TRYWORKS LOGO