HogaHolic LOGO
topNEWSREVIEWVOICETHEATERFEATURE
filmfestival
TOP > INTERVIEW:豊島圭介インタビュー
 豊島圭介インタビュー

自分の企画を映像化したい!そういう思いを抱えている脚本家や監督にとって、1つのチャンスが世界の映画祭における企画マーケット。企画マーケットとは、映画製作者と投資家を結ぶプレゼンテ―ションとミーティングの場で、人材発掘とビジネスパートナー探しを目的とする。7月15日〜25日まで韓国で開催されたアジア最大級のジャンル映画の祭典・第14回プチョン国際ファンタスティック映画祭。ここで同時開催されるのが、2008年から始まったNAFF(Network of Asian Fantastic Films)の企画マーケット『It Project』だ。昨年『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』(参加時の仮題:『椿姫』)で参加した入江悠監督に続いて、今年は『怪談新耳袋』シリーズや『コワイ女』『古代少女ドグちゃん』などで知られる豊島圭介監督が堂々参戦!今年の6月には青春映画『ソフトボーイ』が公開され、秋にはバナナマンの設楽統を主演に迎えた『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』の公開を控えた豊島監督。『ケータイ刑事』シリーズや『紺野さんと遊ぼう』、『東京少女 真野絵里菜』、AKB48の『マジすか学園』といったアイドル系のドラマを次々と撮る一方で、『幽霊VS宇宙人』や『怪奇大家族』といったこだわりの企画を順調に映像化している印象がある豊島監督が、企画マーケットに参加して実現させたかった企画とは..?

取材・文/デューイ松田

line
遠く感じるものが目の前にある気がした

 
――NAFFの企画マーケット『It Project 2010』に応募したきっかけを教えてください。元々NAFFについてご存知でしたか

豊島:まず、やりたい企画があったんですよ。『ソフトボーイ』のプロデューサーであるアミューズの遠藤日登思さんに相談したら、韓国に持って行く方法があるかもねって。それがプチョン国際ファンタスティック映画祭で開催しているNAFFの『It Project』で。プチョンファンタでは僕も遠藤さんも何度か作品を上映してもらった事があるし、映画祭のプログラマーであるクォン・ヨンミンさんを通してなら出せるかもしれないって話になったんですよ。だからNAFFの存在を知ったのは今年になってからですね。

――具体的にどんな企画を出されたんですか

豊島:とあるマンガ短編集を原作にしたエロチックな犯罪劇です。『ブルーベルベット』やデニス・ポッパーの『ホット・スポット』、『ツインピークス』など、日本映画ではないフィルム・ノワールの雰囲気の作品にしたかったんです。

――参加にあたって審査はありましたか

 
豊島:最初は「セレクションなんてないんじゃないの」って言ってたんですよ。でも、普通は映画祭の企画マーケットって、客寄せ企画っていうのがあるんです。ビッグネームの監督に撮らなくてもいいからという事で企画を出してもらって、「あそこのマーケットは有名人が来る」という評判を立てて客を集める。でも、実現可能なものをセレクションしているのがこのNAFFの『It Project』だと聞きました。そう言った話を聞くにつけ、ちゃんとセレクションがあったんだろうなと思います。

――海外向けのプレゼンという事で、意識した点は

豊島:単純に英語が難しくて(笑)。出来る人に直してもらいました。海外のマーケットだからというよりも、あまり得意ではないんですが、僕らの仕事の1つとして“自分の企画を面白く語る”というピッチが大事ですよね。そういうピッチを試される場なので、始まる前に胃が痛くなるような思いをたくさんしましたね。

――収穫はありましたか

豊島:基本的にこの場だけでディールが決まる事はないらしいんです。でも、審査員との出会いも大きいと思います。監督としての自分のプロモーションの場でもあるんですね。『シルミド』のプロデューサーのジョナサン・キムが、こういう企画をやりたいと思っている僕の存在を知った訳ですね。日本とのパイプがある、そういう人と知り合えた。また、ティム・クォークっていう中国系のアメリカ在住のプロデューサーで、岩井俊二さんのマネージメントをしている人とも知り合えた。ティムの企画が人を介して僕のところに来ていたって事が分かったり。ネットワーキングとしては非常にいい場所ですよね。なんとなく遠く感じるものが、そこにある。凄くいい事だと思いました。これが次に繋がるかどうかは分からないけど、繋げたいなと。少なくとも、名刺を配りまくって僕の存在を知ってもらえたという意味ではよかったと思います。

――何人くらいのバイヤーと話できるものなんですか

豊島:3日間で8人くらいかな。CGを得意とするポスプロの会社とかありましたね。やるんだったらうちで、という。あとはソウルのフィルムコミッションも来たし、ちっちゃなファンドを持ってるアメリカの会社が来たり。様々ですね。僕らが一番会わなきゃならないのは韓国の製作会社だと思うんですけど。うまく行ったら韓国で撮れないかなと考えているので。日本で撮る可能性も高いですが。配給会社は結構来ましたね。出来たら見せてねって人が多い。

――それはお金を出してくれるのではなく、配給権を買うという事?

 
豊島:最初から一緒にやるってパターンもあるみたいですけど。ここで出会ってすぐに何とかなるというよりは、これから作品が出来た時はどうなるかって人も多い。ただシナリオがきちんと出来ているので…。山下敦弘監督の相棒の向井康介が書いていてかなり面白いです。

――バイヤーはその場でシナリオを読むんですか

豊島:渡しましたね。僕はシノプシスまで書いています。読んでくださる中には反応があるかも。僕の人柄も含めて可能性を見てくれていると思います。

――参加して認識が変わった点や、逆に間違ってなかったと思った点は

豊島:『It Project』の良い所は、ジャンルムービーのマーケットでアート系のものがほとんどない所。その中で僕がやりたいジャンル映画...という訳でもないですけど、そういうものを欲している人々の前でちゃんと見せるというのが、いいなと思ったので。認識はあまり変わってないかな。僕は始めての参加だったのでマーケットの想像がつかなかったんですよ。もっとラフな感じと言われていたし、実際そうだったんだけど。緊張しましたね。初日は1人くらいしか来なかったので「このまま僕のマーケットは終っていくのかと(笑)

――周りのテーブルは賑やかだったり

豊島:そうそう。最初ヤバイなーと思いました。2日目の朝に審査員向けのピッチがありまして、英語の通訳の方も横にいてくださったんですけど、本人がきちんと英語でしゃべった方がいいだろうって事で。早起きして練習しましたよ!それが一番のビッグイベントでしたね(笑)

――思い通りできましたか。ここでの審査員の役割を教えてください。

 
豊島:多分。実際に取引をするのは現場の人たちなんですけど、『It Project』としてもここで生まれた企画だというのを見せたい訳ですよ。成立した暁にはね。そこで企画賞、ポストプロダクション賞、お金や技術の支援をするって賞がいくつかあって審査員がセレクトする。NAFF印をつけていくって事ですよね。全部で15の企画が出されてるんですど、僕らはまだ資金集めも始まってないですし、実現の可能性でいくとまだ遠い。可能性が近いものの方が選ばれやすいんじゃないでしょうか。他の方の企画を聞いていると自分の企画が一番面白いんですけどね(笑)。

――今回プレゼンした豊島監督の企画について詳しく教えてください

豊島:AVの監督が撮影で人妻を撮るために田舎に行く。そこで待っていたのは自分の大学時代の初恋の人。つきあっていた訳ではないんですけど。彼女は違うって否定する訳です。ところが撮影を進めていくうちに、レストランのど真ん中で彼女が突然消えてしまう。ヒッチコックの『バルカン超特急』みたいに、いきなり消えちゃった。周りは「あなた誰ともいませんでしたよ」って。ジョディ・フォスターの『フライトプラン』でもそうでしたね。そんなはずはないって色々探っていくと、彼女はその小さな町の町長の妾になっていて、東京から来た男から引き離されたんですね。彼女の本当の目的はAVに出る事ではなく、男に町長の元から助け出して欲しいと思っていた。というところから始まって、彼女に惚れている男はどんどん犯罪に加担して行く。こういう映画大好きなんですよ。ただ撮った事がないんですよね。

――豊島監督の作品といえばホラー『怪談新耳袋』シリーズや、『怪奇大家族』『古代少女ドグちゃん』といったやコメディ寄りの作品のイメージが強いので意外な気がしました。ただ恋愛に関しては、今までもこだわって演出されている印象が強いです。『幽霊VS宇宙人』でエイリアンとの壮絶な恋愛を描いた『略奪愛』のような…

豊島:あの映画と同じ構造ですね。会っちゃいけない、凄いいい女と会って....僕のファンタジーなんですけど(笑)。凄いいい女なんだけど凄い悪い女で。この人と付き合ったり、一緒にいたりするともしかすると死んじゃうかも、地獄に堕ちるかもと思ってるんだけど、止められず、っていうのを今度はSF仕立てを止めて犯罪物の形でやりたいんです。

――出て欲しい俳優はいますか?『古代少女ドグちゃん』第7話の「妖怪 ピーオン」で念願が叶った安達祐実さん以外で(笑)

豊島:映画祭のオープニングにゲストだったけど、『クライング・フィスト』のリュ・スンボムなんかいいですね。

――それはぜひ観てみたいですね!

豊島:面白そうでしょ?リュ・スンボムだと、とんでもなくお金がかかっちゃうだろうけど(笑)彼かどうかはともかく、いつかは作品として成立させたいですね。


line
豊島圭介についたファンタ系の色を変えて行きたい

――6月からロードショー公開された『ソフトボーイ』は、男子ソフトボール部が1校もない佐賀県で、部を立ち上げて全国大会に行こうとした高校生の実話を元にした青春映画で、ジャンル的に意外な感じがしましたが、どういう経緯で引き受けられたんですか

豊島:それこそ、さっき話に出た遠藤プロデューサーとその若い相棒である筒井プロデューサーの二人が、なんとなく僕の事を気にしてくださっていて。『略奪愛』を観てくださったんですね。僕にはホラーをやる奴って色、ファンタ系の色がついていますよね。それは構わないんですが...構わないと言いつつ構うんですけど。狭まるんですよね。

――企画はファンタ系のものばかり来ますか

 
豊島:元々そういうジャンルがやりたくて映画を始めた訳ではないんです。監督デビューするのが難しい時に、同僚の清水崇が『新耳袋』をやるって事で混ぜてくれたというめぐり合わせですね。それが上手くいって『新耳袋』をたくさんやるようになると、怪奇モノを撮るイメージが付いて来た。パブリックイメージって変わらないから、実は“変えていかないと”って思っていて、色々な努力を水面下でしてるんです。例えば『紺野さんと遊ぼう』や『週刊真木よう子』で「景色のキレイなトコに行こう」を撮ったり。色々やってるんですけど、なかなかお客さんに届かないというか。

――ファンタ系の作品の量が圧倒的に多いし、印象が強いですもんね

豊島:そうなんですよ。そんな中で遠藤さんたちが『略奪愛』を観て、普通のドラマをやりたいんだろうなって見抜いてくださったっていう。

――それは嬉しい事ですね

 
『ソフトボーイ』
©迯屋10「ソフトボーイ」製作委員会
豊島:凄く嬉しいですね! そういう前提があって『ソフトボーイ』に呼んでもらったんですけど、それにしてもスポーツか!と(笑)。ソフトボールも野球も分かんないし、困ったなぁと思いました。でも、その時点で第二稿まで出来ていた脚本を読んだら凄く面白くて。しかも試合のシーンはラストだけ。あとは青春モノのコメディだから、これをやらないと損する、やりたい!と思ったんです。凄く大変でしたね。人の企画で、プロフェッショナルな監督として呼ばれた訳だし。この素晴らしく良く出来た脚本を、僕が読んで笑ったり感動したように、それ以上にして届けなければと思ったのでプレッシャーはありました。興行はあまり振るわなかったみたいですが、観て頂いた方の反応は良かったので安心しました。

――ラストは爆泣きでした

豊島:本当ですか?ありがとうございます。「1、2!1、2!」とかいいですよね。

――人生は苦いなというところが良くて

豊島:え?そこで泣いたんですか。本当のラストじゃないですか。みんな試合のシーンで泣くんですけど(笑)。

――試合のシーンももちろん良かったんですが、ただのよくある感動の物語で終ってないところが凄く良かったです

豊島:嬉しいな。びっくりする人も多いんですよね。

――普通じゃないラストだから、豊島監督が監督をされたのかなと

豊島:プロデューサーが僕に振ってくださった意味としては、その辺もあったんじゃないかな。あの部分は実話ではなく脚本家のアイディアですね。あのラストにあたっては「ダメな奴はダメなの?」って意見のスタッフもいて。論議はありましたが、あそこは絶対に変えるつもりはなかったですね。

――プチョンファンタではアニメや短編も含めて28本の日本映画が上映され、豊島監督は『ソフトボーイ』で舞台挨拶に立たれましたが、いかがでしたか

豊島:ご存知だと思いますか、プチョンファンタのお客さんって本当に楽しみに来てくれるじゃないですか。怖い映画では叫び、コメディでは笑い。反応はいいに違いない!と思ってはいたんですが、一応SOLD OUTになりました。ただ、関係者が押さえて来ない事もあるので、満席じゃなかったですけど、ウケたウケた!って感じでしたね。韓国のお客さんは、作り手をハッピーにさせますよ。今回で3回目なんですけど、『幽霊VS宇宙人』を観たお客さんが来てくださって、「気付かなかった。あんただったの?」って(笑)。それが面白かったですね。

――どんな質問が出ましたか

 
豊島:どこまで実話なのかとか、なんでジャンルがこんなに違うんだとか、ノグチはどこまでリアルなんだとか(笑)。僕は元々実話かどうかには興味がなくて、脚本を見て始まっているので。どこまで実話かはよく分からない(笑)。プロジェクトの立ち上げから係わっていたら、こういう実話があってこれをどう脚本にしていこうかって考えるんですけど、立ち会っていないので知らないんですよね。初めて言いますけど(笑)。

――最後に、今回のNAFFやプチョンファンタ参加の感想をお願いします

豊島:今回は疲れましたね。仕事ですから。今まではゲストで遊びに来て、美味しいものを食べて「わーい」なんてノリで映画も観られましたが。今回は日本での仕事も持ってきたし…夜は飲んでますけど(笑)。疲れましたね。でも、ここでの出会いが大きな種になるといいと思ってます!



 
  Profile: 豊島圭介(とよしま・けいすけ)

1971年、静岡県出身。大学在学時から映画製作を開始、『かなしいだけ』がPFF94に入選する。大学卒業後、アメリカン・フィルム・インスティテュート監督コースに入学。帰国後、中原俊監督や篠崎哲雄監督作品の脚本を手がける。オムニバスの怪奇ドラマ『怪談新耳袋』で監督デビュー。その後、TVドラマ「怪奇大家族」(04)や映画『会談新耳袋 ノブヒロさん』(06)『コワイ女』(06)『幽霊VS宇宙人 略奪愛』(08)などで着実にキャリアを重ねる。今後は『裁判長!ここは懲役4年でどうですか』(10)が待機中

『ソフトボーイ』公式サイト
http://www.softboy.jp/

©2010「ソフトボーイ」製作委員会
   

ページトップへarrow    



©2008 HogaHolic TRYWORKS LOGO