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SABUインタビュー

ベルリン国際映画祭に代表される国際映画祭で幾度の受賞を果たし、国際的に評判が高いSABU 監督の大規模な特集上映がニューヨーク、ジャパン・ソサエティにて行われた。今回の上映の話題が【ニューヨーク・タイムズ】で、アカデミー賞ノミネートの記事と並んで大きく取り扱われ、【ウォール・ストリート・ジャーナル】にも記事が掲載されるなど、全国紙をはじめ、各マスコミに注目された。「ニューヨークは初めて」というSABU 監督に、HogaHolic が単独で話を聞いた。

取材・文/植山英美

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「『弾丸ランナー』を撮った時のように
低予算の中で何ができるかが大事なんじゃないか」


――ニューヨークは初めてという事ですが、「監督の作品を全部観た」というアメリカ人のファンもおられましたね。見知らぬ土地にも大ファンがいるというのはどのようなお気持ちですか?

 
SUBU監督特集が紹介されていた
JAPAN SOCIETYのサイト
SABU:嬉しいです。アメリカには全く縁がないと思っていたので、(ファンの存在は)意外でした。今まではヨーロッパばかりだったのですが、やはり子供の頃から観ていたのはアメリカ映画で、影響を受けています。シカゴには2回行っていますが、ニューヨークは初めてですので、機会を与えてもらい、とても喜んでいます。

――ベルリンに留学経験もあり、監督にはヨーロッパのイメージがありますね。

SABU:留学はドイツの文化庁みたいなところが招待してくれたんです。アンドレイ・タルコフスキーとか、ジム・ジャームッシュとか、他にも小説家や絵描きなど、古い制度なので、過去にはいろんな人が利用しています。映画監督は半年の期限だったので、その間に撮影をしようとしたんですが、どうもヨーロッパは物事が進むのが遅くて。海外でやるなら、アメリカの方がシステム化されているので、仕事はしやすそうですね。

――ヨーロッパも、アメリカも、組合組織が強いので、日本と違う意味での手間が掛かってしまいますね。労働時間が厳格に決められていたり。

SABU:時間的な縛りは気になりません。無理して良い流れにしようとすると、あまり上手く行かないものです。翌朝撮影をやり直してみたら、欲しかった空の色が撮れたりって事も多くありますし。今までもわりとそうで、上手く行くと信じると実際そうなりますし。流れに乗るのは大切ですね。

――そもそもSABU監督は、どのような経緯で映画監督になられたのでしょうか?

 
SABU:地元でパンクのバンドをやっていたのが始まりでして。当時は大阪のデザイン専門学校に行っていて、ファッション・デザインなどを勉強していました。その2年間の在学中の間にデビュー出来る計画だったんですが、結局思ったような条件の話が来なくて(笑)。で、卒業後、バンドの連中は東京に進出してまでとは考えていなくて、一人上京する事態になったんですね。そこでデモテープを持って事務所を回って、たまたま採用が決まったところが役者の事務所だったんです。「背も高いし役者を目指せ」と言われて。高校時代に観た映画が『E.T.』と『爆裂都市』だけだったんで、あまり知識もなかったんですが、それでもオーディションを受けていくと、受かるところも出てきまして(笑)。役柄もチンピラから、アニキ分に順調に昇格して行ったんです(笑)。

――役者になりたくてもチャンスがない人には、怒られちゃうような順調さですね。

SABU:オーディションを受ける時は、それなりに真剣にやっているんですよ(笑)。その頃は時もバブル、Vシネマの全盛で、乱作になっていた時期でして、自分の意にそぐわない役が増えてきていたんですね。それで、「いっそのこと自分で書いてみればいいのでは」と思いついて、書けたのが『弾丸ランナー』だったんです(笑)。それで脚本を知り合いのプロデューサーに見せたところ、監督もやってみれば、と言われて。

――それが、ベルリン国際映画祭に出品されましたが、凄い事ですよね。

 
SABU:びっくりしましたね。噂になったようで初日の会場前に人が並びましたし。こんなはずじゃなくて(笑)、脚本を書いた時点では、3番手くらいの役で出て、俳優として評価されて、そのうち主役なんかをやって…という戦略だったんですけどね。もっとちゃんと勉強しないと監督なんか出来ないと思っていたんですけど、結局デザイン学校で勉強した事とか、ファッションだったりとか、音楽とかが全部役にたちました。

――俳優だったという経歴も影響していますか?

SABU:そうですね。やはり10年間、プロとしてカメラの反対側に居たので、現場で何が起こっているのかというのは、理解出来ていました。それはありましたね。あと役者さん側の心理がわかる部分もあるのでは。

――『ポストマン・ブルース』などは、アップなど撮影がとても個性的で印象に残りましたが、誰に教わったわけでもないんですね。

 
SABU:そうですね。僕は絵コンテをきっちりと描くので、その通りにほとんど撮ってもらっているんですけど、当時は映画の常識的な物事を知らなかったので、自由な発想が生かせたんですね。今は中途半端に知識ができてしまったので、小さくまとまってしまったような気がしています。子供の発想が豊かなのと同じで、いかに非常識に着想できるかは大事です。

――絵コンテは、やはりデザイナー学校での経験を生かしたんでしょうか。

SABU:ビルや建物もわりと精巧に描きますよ。時々絵コンテを描いてみて、脚本を書き直したりなんて事も出てきます。ですが役者さんはそれを無視して、勝手に動いたりするんですけどね(笑)。勝手に座ったり反転したり、それがすごく自然な動きにつながる事も多いので、最終的には生かします。役者さんたちからは「自由な現場」と言って頂いています(笑)。

――2005年くらいを境に、今までのオリジナル脚本ではなく、原作ものが中心ですが、どのような心境の変化があったんですか?

 
SABU:原作は時間をかけて作られたものですし、自分にはない新鮮味のある発想だったりするので、もちろん楽しい部分も多いです。やはり時代の流れで、原作物を作って欲しいという依頼が多くなってきていますね。最近、大手製作会社の若手のプロデューサーで「昔からのファンです」と言ってくれた方がいまして、「今度良い原作持っていきます」って(笑)。僕の作品のファンという事は、オリジナル脚本のストーリーも含めた部分を好きなはずなんですけど。本当に今は原作ありきで。実は今年中に自分でオリジナル脚本を書いて、それを膨らませて小説を書いてみようという作戦を考えているんです。

――自分で原作を書いてみようと。

SABU:めんどくさいでしょうし、時間も掛かるでしょうが、その分深く理解できるはずですし。そちらの方が製作しやすいのなら、と。

――次回作も漫画原作で、松山ケンイチさん主演の『うさぎドロップ』ですね。

SABU:はい。試写を観た方々から、松山さんの作品の中で一番だというお声を多く頂き、すごく嬉しかったです。松山さんは素晴らしい俳優であると同時に人格者で。子役の芦田愛菜ちゃんの相手をずーとしているんです。待ち時間に絵本を読んであげたり。愛菜ちゃんもすごくなついていて、頭が下がりましたね。普通じゃ出来ないです。

――監督のファンの方達は、堤真一さんや、田口トモロヲさんらの昔からの常連が出ている作品も観てみたいと思っているんじゃないんでしょうか。

SABU:それはよく言われます。大丈夫です、考えていますよ。ニューヨークで撮る、なんてのもいいですね。

――映画監督の方たちがニューヨークに来るとインスパイアされると聞きます。その魅力はなんでしょう。

 
SABU:入りやすさじゃないでしょうか。ヨーロッパとかは圧倒される建造物があって、歴史的な人物の住居だった場所が多いですし。素晴らしいのですが、想像が沸きにくいというか、生活が見えないです。ニューヨークは、全てを受け入れてくれるような感覚がありまして、キタキタって感じでした。今回の特集上映がきっかけで、低予算で『弾丸ランナー』を撮ったような、予算が少なくてもそれなりの物を作っていくほうが面白い、そんな心境になりました。少ない予算の中で何ができるか、その方が大事なんじゃないかなと。今度来る時はロケハンで来ます!


  Profile: SABU

1964年、和歌山県出身。
1986年に俳優として『そろばんずく』(森田芳光監督)でデビュー。大友克洋監督の実写作品『ワールド・アパートメント・ホラー』(91)で初主演を務め、第13回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。その後、自身の企画で脚本を書き始め、『弾丸ランナー』(96)で自らのオリジナル脚本で監督デビュー、ベルリン国際映画祭に出品され国内外で高い注目を集める(2001年には『Non-Stop』〈英題〉として全米公開も果たす)。その後も『ポストマン・ブルース』(97)『アンラッキー・モンキー』(98)を監督し、数々の国際映画祭に招待。監督4作目の『MONDAY』(00)は、3度目の出品となったベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を獲得した。以降も、『DRIVE』(01)がカナダ・ファンタジア国際映画祭で審査員部門・最優秀アジア映画作品賞、『幸福の鐘』(02)がベルリン国際映画祭NETPAC賞(最優秀アジア映画賞)を受賞。そのほか、原作ものに挑んだ『疾走』(06)『蟹工船』(09)では、パノラマ部門、フォーラム部門とそれぞれベルリン国際映画祭に正式出品されている。最新作は、初のテレビドラマとして監督・脚本・演出を担当した「トラブルマン」(2010年4〜7月OA)のほか、松山ケンイチ主演の『うさぎドロップ』(2011年夏公開)が待機中。
 

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