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塩田時敏インタビュー

2007年、630億円の負債を抱えた夕張市の財政破綻で、中止の危機を迎えそうになったゆうばり国際ファンタスティック映画祭が、2007年の東京事務局主導で行われた応援映画祭を経て2008年に市民の手で復活してから、早くも4年目を迎えた。ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門のプログラミングディレクターの塩田時敏氏に、2011年のゆうばりファンタの内幕や来年の課題について伺った。

取材・文/デューイ松田

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総括!今年の“ゆうばりファンタ”

――復活映画祭から4年目を迎えて、インパクトのある話題が落ち着いて、言わば普通の状態に戻ったと言えると思います。その中での戦略といいますか、オフシアター・コンペティション部門の方向性はどのように考えられたんでしょうか。

  ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
塩田:オフシアターのコンペティション部門の作品も、かつてのオフシアターの作品のように、分かる人だけが分かるものだけでなく、インディーズ映画の色は残しつつ、『ピンクスバル』や『花子の日記〜ビーフのキョーフ物語』といった作品のように普通の人も楽しめる作品を増やしています。2006年まではヤングコンペ部門とオフシアターコンペ部門という2本の柱があったから、オフシアターは割合マニアックな作品に絞ることができたんです。映画祭が復活した2008年からはコンペが1つになったということで、間口を広げるようになりました。

――ゆうばりチョイスや招待作品では、『ビー・デビル』『恥ずかしくて』『いま、殺しにいきます』『トラブルシューター』『悪魔を見た』と韓国映画が充実していましたね。

塩田:ゆうばりって名前が韓国でもネームバリューがあるみたいで、どうしても上映して欲しいってオファーが来るんですよ。『いま、殺しにいきます』なんか、誤解があって、「韓国の公開ポスターにゆうばり出品作品って入れちゃったからなんとかしてくれ」みたいなことがあったり(笑)。あとはプチョンファンタで評判が良かったものを招待したり。『ビー・デビル』なんかそうですよね。

――今年の目玉と言えば、スシタイフーンのイベントと上映もありましたね。昔からゆうばりで活躍してらっしゃる西村喜廣監督、井口昇監督、山口雄大監督といった方々がどんどん大きくなってまた戻ってきて、と非常にいい流れのように思います。

  ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
塩田:あいつらが勝手にやってることがどんどんエスカレートして(笑)、日活まで巻き込んだって形ですけど、それはそれで面白いですね。流れと言えば、今回は特に本田隆一監督の『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』をクロージングに出来たのは大きいと思います。彼は大阪芸術大学や日本大学大学院芸術学研究科に通いながら、昔ゆうばりファンタで夏にやっていた「シネマワークショップ」でも学んでるんですよ。オフシアターコンペでグランプリ獲って、いよいよメインのクロージング作品をやるようになったんで、これで一丁上がりかなって(笑)。お客さんはオープニングよりたくさん入りましたね。後はゆうばりで本田隆一レトロスペクティブをやるくらいの巨匠になってもらわないとね。

――本田監督の作品は昔と比べていかがでしたか。

塩田:元々は彼がやる企画じゃなかったらしいんですよ。いつもの本田とはちがうけど、手堅く楽しめる作品になってたから、力をつけてきたと思う。元々の本田のテイストだったらクロージングにはできないけどね(笑)。一般作としての普遍性のようなものは備わっていたね。

――さらに流れつながりと言えば、昔ヤングコンペで賞を獲られた野火明監督が、『蟻が空を飛ぶ日』で15年ぶりに復活されましたね。

塩田:野火明監督らしい作品で良かったと思います。野火のようにプロでデビューした監督も、作品を作りづらい状況であるんで。映画界が、製作委員会方式でどばっと資金を集めてそれぞれのスポンサーの言うことを聞ける監督で撮る映画と、本当に自分たちの資金だけで作るインディーズしかなくて、結局その中間にあるべき普通の映画がどんどん制作されづらい状況になっています。今年は、大森一樹監督や金子修介監督といった名を成した監督たちもゲリラ的なやり方で作品を作っているから、いい状況なのか悪い状況なのかは分からないけど、面白い状況ではあると思います。


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賞だけが全てではない

――オフシアター・コンペティション部門の作品選ぶときのポイントは何でしょうか。

塩田:短編と長編では審査員もどう見たらいいのかは難しいところですけど。人に見せる価値があるかどうかで、才能の片鱗を感じさせるもの。長編は長編としての、短編は短編としての完成度がポイントです。

――今年コンペでグランプリを獲った『エイリアンビキニの侵略』のオ・ヨンドゥ監督は、前作の『隣のゾンビ』で初めてゆうばりにいらっしゃいましたね。

  ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
塩田:『隣のゾンビ』自体はオムニバスで何人かの監督がいるし、出来そのものはそんなにいいとは思わないけど、監督たちの中でもオ・ヨンドゥ監督が抜きん出てたと感じましたね。『エイリアンビキニの侵略』は、オ・ヨンドゥ監督が仲間とバカ話をしている間にアイディアが生まれてきて、自宅にみんなが集まって作ってるんだけど、そうは思わせないこれだけのクオリティがあるのは凄いところだろうね。単なる仲間内の自主映画に留まらない腕を持っている。『エイリアンビキニの侵略』は、韓国で問題があってポスプロの段階で制作が止まってたんですよ。出演者の一人がクスリで捕まって。そうなると韓国では公開できないし、公開できない映画にスポンサーがつく訳がない。でも「来年もゆうばりに必ず作品を持ってくる」という僕との約束もあったんで、お金をかき集めて完成させたらしいんです。でも、グランプリになったことでその後またちょっと風向きが変わって、公開の可能性も出てきたみたいですね。

――『エイリアンビキニの侵略』は、他の8本と比べて抜きん出ていたんでしょうか。

塩田:100%完成された作品はないし、そんな作品は普通の映画だって1年に1本あるかないかですよね。いいところも悪いところもあるんだけど、単純に自分の好き嫌いで言うと一番好きな作品。でもコンペの作品は、僕の好きな作品のベスト9ではないんですよ。単純に塩田のベスト10を選ぶ時なら入らない作品も入っている。観る人それぞれの視点を考えて、バラエティに富んだ選択をしている訳です。審査員によって当然こういう作品を押す人もいるだろうっていう読みもある。緒方貴臣監督の『体温』は、ティム・リーグが気に入ってテキサスで上映されることになったし。次回作でキム・コッピに出演を取り付けた監督もいる。賞は獲らなくても、ゆうばりに来たことで、みんなそれぞれお土産を持って帰ることができる。賞だけが全てじゃないですからね。


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ゆうばりファンタ2012への課題とは?

――コンペ以外で塩田さんの心に残った作品はありますか。

塩田:『ビー・デビル』がおそらく洋画のベスト・ワンになるでしょうね。『悪魔を見た』も面白いし。外側に開かれていく作品、その押しの強さに惹かれます。最近は韓国映画でも内側に向いている作品が多くなったけど。『恥ずかしくて』なんかもそうだね。ここまでやるかっていうのが韓国映画のパワー。泣かせる作品だってここまで泣かせるかって。いずれの分野においても方向性においても極端までいってしまうのが韓国映画で。辛いものはとにかく辛いし、コーヒーは無茶苦茶甘い。そんな極端さが映画の独特な面白さにも繋がってると思いますね。もしくは何でもごちゃ混ぜにしてしまうピビンパのような、なんでもありみたいな(笑)。

――プログラムを見て面白いと思ったのが、『いま、殺しにいきます』といった邦題ですが、全て塩田さんが付けてらっしゃるんですか。

  ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
塩田:全部でもないけど決めることもありますね。『いま、殺しにいきます』は洒落が通じ易いと思ったんで。『エイリアンビキニの侵略』は、オ・ヨンドゥ監督の家でみんなで話していて、『ビキニエイリアンの侵略』じゃダメだって言ったんです。あまりにも面白くないし、安っぽい。“エイリアンビキニ”という響きがいいんですよ。イブ・モンマユー監督の『Johnnie Got His Gun!』は、元々原題がドルトン・ドランボ監督の『ジョニーは戦場へ行った』の原題『Johnny Got His Gun』にひっかけたものなんで、最初は『ジョニーは銃をトーた』としようと思ったんですよ(笑)。でもちょっと遊び過ぎだから、この後で上映される大阪アジアン映画祭のプログラミングディレクターの暉峻創三さんとも相談して。昔邦題を付けたヘラルドに敬意を表して『ジョニー・トーは戦場へ行った』にしました。

――来年の課題は何か見えましたか。

塩田:作品数が多くなり過ぎたのもあるかもしれないけど、集客がふるわなかったですね。全体的に客の入りが増えてないんで、ばらけたのかもしれないですけど。その辺が課題です。去年の小栗旬監督の『シュアリー・サムデイ』みたいに、普段ファンタに来ない観客も引っ張ることができる作品も入れなきゃダメだよね。コンペに関しては、集まってみないと分からないんだけど、ただ漠然と応募を待っていたって運任せになってしまうんで。『エイリアンビキニの侵略』のように、こちらから応募を薦めることもやりますね。

――それでは最後に塩田さんから来年のゆうばりファンタ2012のPRをお願いします。

  塩田時敏
塩田:今年はプログラムには載ってないんですけど、ラジニカーント主演の『ロボット』の上映が急遽実現しました。ソル・ギョング主演の『トラブルシューター』なんかもそうだったんですけど、元々予定してない作品が突発的に決まることもあります。今年は情報を出すのが遅かったんですけど、来れば必ず何か面白いことに出会えます。来年は情報がなくてもぜひ来てください!(笑)



 
  Profile: 塩田時敏(しおた・ときとし)

1956年、札幌出身。
白夜書房の雑誌編集者を経て、自主映画、ホラーやカルト映画など埋もれたジャンルから新しい才能を発掘していく独自の評論を展開。役者として、三池崇史監督の『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(99)、『妖怪大戦争』(05)やギャスパー・ノエ監督の『エンター・ザ・ボイド』(09)などにも出演している。また、創立時より「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」プログラミングディレクターとして各国映画祭を回る一方で、ニューシネマワークショップ講師等を通じて新人映画人育成を実践中。近著に、「こんなに楽しく面白い世界のファンタスティック映画祭」(近代映画社 SCREEN新書)がある。


【第21回 ゆうばり国際ファンタスティック映画祭】
http://yubarifanta.com/

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