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山田孝之インタビュー

ニューヨークアジア映画祭では、スター・アジア・スター・ライジング賞を日本人として初めて受賞。「ザ・ハリウッド・レポーター」誌の「世界の注目俳優10人」に唯一の日本人として選ばれるなど、海外でもっとも注目されている山田孝之氏。同映画祭オープニング作品となった『ミロクローゼ』では異星人、浪人、愛の伝道師の3役、先ごろ全米公開になった『十三人の刺客』では、華麗な刀さばきの侍を。『乱暴と待機』ではだらしない夫、『シーサイドモーテル』では逃亡中のギャンブラー。『GANTZ』(I・II)では影のある謎の男と、ニューヨークアジア、ジャパンカッツ両映画祭で上映された全6作品、まったく違う印象で、俳優魂をニューヨーカーにみせつけた。「映画には映画のよさがあり、ドラマはドラマのよさがある」という、山田孝之氏にHogaHolicが単独インタビューを行った。

取材・文/植山英美

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完全オリジナルでこんなに面白い作品を、
一から作る石橋監督のすごさ


――スター・ライジング賞の受賞おめでとうございます。《これからインターナショナルな活躍を期待する若い俳優に贈られる賞》だという事ですが。

 
山田:そうなんですか。それならば人選ミスですね(笑)

――国際的な活躍を望んでおられない?

山田:もちろん機会があればというのはありますけど、「俺はハリウッドに進出してスターになりたい」という気持ちは全くないです。

――韓国や中国の映画はどうですか?

山田:インドだろうが、タイだろうが話があれば。例えばアメリカの映画に出ればアメリカの人が、インドならインドの人がと、その国の映画に出ればその国の人が観てくれますよね。日本の人も映画を観てくれるでしょうし、間口が広がるのはすごくいい事だと思います。ただ芝居が好きなだけですので、大きな映画に出て注目されたい、という気持ちではないんです。日本で出来ないものがハリウッドだったら出来るものもあるので、それはもちろん興味はありますけど、渡辺謙さんにみたいになりたい、とかっていう気持ちはないです(笑)。

――どの国の映画ででも、フィットしそうなお顔立ちですね。

山田:トルコ人と日本人のハーフとか言っても通じそうです(笑)。

――世界的に人気のある三池崇史監督の作品に出られて国際的な認知度が高まったのでは。今映画祭でも「『十三人の刺客』と『クローズZERO』シリーズのタカユキ・ヤマダ」と紹介されました。

山田:『クローズZERO』がこちらでやっていたとは知らなかったです。『十三人の刺客』は時代劇ですし、ある程度人気が出るのはわかるのですが。

――今年3月に行われた三池監督特集での上映もありましたし、DVDにもなっています。『十三人の刺客』も2ヵ月前に劇場公開され、今も上映されています。『十三人の刺客』はリメイクでしたが、原作作品が多いですね。原作作品に関してはどのようにお考えなのでしょう。

 
山田:世界的な傾向として、原作ものの映画化が多いですが、日本では特に漫画原作が多く、漫画に頼りきっていますね。過去にヒットして、現代では違和感のある作品でも、題材だけ借りて現代的にアレンジしたりとか。なんの為なのか、と思う事もあります。

――どうして漫画原作が多くなってしまったのでしょう。

山田:ネタ切れってみんなよく言ってます(笑)、その一言で済ますべきではないですが。直近に仕事をした監督が「ひと昔前は映画業界には華があって、憧れて目指すところだったけど、それが時代とともに序々に変わってきて、映画監督になるべき能力を持っていた人材が漫画に流れて行っている。コミュニケーション能力の低下という側面もあって、自らの世界観を誰にもじゃまされずに形にするっていうのが増えてるんだと思う」とおっしゃって。確かに僕も共感します。今、絵がへたでも、ストーリーが面白い漫画がいっぱい出ていますし。

――お金を掛けずに世界観を表現出来るというのも。

山田:そう、自分だけでできるから。確かにそれはあるなと。今までなら脚本に来ていた人材が、どんどん漫画に流れて行っているというのなら、漫画原作からの映画化が主流になるのもわからなくはないですね。そして何よりも日本人というのは、漫画の文化が根付いているし、好きですから。問題なのは、漫画には熱狂的なファンが存在して、素直に応援してくれない場合なんですね。「俺達の漫画を好き勝手にしやがって」と言われたり。映画は映画で楽しめばいいのに、と思うんです。

――「イメージが違うんですけど」的な声があったり。

山田:だって【映画化】じゃないですか。【映像化】ではないから。敵が多い時は「何故?」という気持ちになる事もあります。

――『ミロクローゼ』は山田さんにとって、初めてのオリジナル作品という事になります。

 
『ミロクローゼ』
(C)2011 MILOCRORZE Film Partners
山田:『ミロクローゼ』は完全オリジナルで、こんな面白いものを1から作った石橋監督はすごいと思います。

――作品選びは山田さんがご自身で?

山田:はい。4年前23歳になってからは全て自分で選べるようになりました。以前は「これをやりなさい」と言われたものをそのままやっていました。もちろんその中でも是非やりたいと思ったものもあったし、そうでないものもあった。今は全て自分で台本を読んで、誰になんと言われようが、自分でやりたいものをやっています。

――その辺り俄然、役柄のバラエティが増えたような印象がありました。

山田:自分で選ぶようになったからです。それ以前は「青春」「ラブストーリー」「感動」みたいな(笑)。それもいいのですが、そればっかりだとつまらないし、いろいろな事をしないとスキルも身に付かないですから。使う側にとっては「未経験の役をやらせて出来るのか」となるところですが、冒険心に飛んだ方が運良く居てくれたお陰で、いろいろな役を演じられ、さまざまなスキルが身に付いたという感じですね。

――役を選ぶ時は、脚本で選びますか?それとも監督で?

山田:基本は脚本ありきです。脚本が面白ければ。言ってしまえばストーリーがそこそこでも、役が面白ければやってしまうところもあります。ただ自分が楽しくてやってるので。出来上がりを観て、面白くないなと思った事もあったりとか(笑)。


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人格を6つ並行して生きた半年間、
酒に溺れましたね(笑)


――オフィシャルサイトに『ミロクローゼ』での撮影が、「体力面はもちろん、精神的にも限界を何度も感じました。芝居を始めて12年ほど経ちますが、間違いなく一番過酷な現場でした」とありました。どのような点、特に体力的に、精神的につらかったのでしょうか。

 
『ミロクローゼ』
(C)2011 MILOCRORZE Film Partners
山田:体力面で言えば、ダンスもありましたし、立ち回りもありましたし、スケジュールもタイトで、3キャラクターそれぞれ2週間、2週間、1ヵ月で撮って。熊谷ベッソン役の場合3つダンスもありましたし、ベッソンはいっぱいしゃべるでしょう(笑)。セリフを入れながら、ダンスの事も考えて、ダンスの練習して、いっぱいセリフをしゃべって、ダンスをやってと。精神的な面で言えば3つの人間をその期間中生きるという事は、精神が3つ、かつ僕自身でもうひとつ、ですがこの4つ目の自分をその期間中消すんですね、無いものとするんです。オブレネリ(・ブレネリギャー)とベッソンとタモンと。もちろん撮影のタイミングとしては、オブレネリをやって、終ったらベッソンをやって、という手順でしたけど、結局次をこう演ってとか、前はこう演ったから差はこうとか、違いを考えるわけですよ。となると常に3つの役を考えて、3つの精神で生きる。きつくないですか?

――それはかなりきついかと。山田さんは《憑依系》というか、オブレネリなら2週間、そのキャラクターになりきってしまうのでしょうか。

山田:撮影に入ったら自分を全て否定するんですよ。27年間生きてきて、親に育てられ、学校に通い、友達関係があり、その中でいろいろ人に会い、得てきた感覚とか、そういったものを固めて《僕》という人間があるんですが、それ《全てが間違い》で、要らない。オブネレリしか要らないんです。その時にオブレネリが取る行動全てが正解なんです。「この人はどうしてこういう事を言うんだろう」と思ってしまっても、「何故じゃないんだ、これが正解」。そうなると自分が無くなるんです。そういうやり方なので、何度もやっていると頭がおかしくなります。

――じゃあ食事をするときとかも、オブレネリが食べそうなものを食べたりとか?

山田:いやいやそれはないですよ(笑)。それって形からじゃないですか。こういうもの食べそうだから食べようとか、それは本人の感覚でしょう。自然とそうなっていたりするかもしれませんが、意識しないのでわからないですし。

――今回は3役だったので、役から役への移行期間がほとんどなかったと聞きました。やり辛い部分はあったのでしょうか。

山田:日本の俳優って忙しいんですよ。ハリウッドスターと違って規模も小さいですし、お金もないですから、すごくよく働くんです。僕も年間6本とかやっているので、撮影1ヵ月半終った次の日から、他の映画の撮影に2ヶ月とかありますよ。なので、切り替えはすぐにできます。何が一番不運というか(笑)、難しかったのは、春の4月頃にオブレネリを演って、その後ベッソンを続けて演って。タモンの撮影は準備期間が必要だというので、10月頃にやったんですよ。その間7月〜8月に『十三人の刺客』をやって、9月に『シーサイドモーテル』をやって、そしてタモンをやったんです。その後に『乱暴と待機』で、そして『GANTZ』です。

――うわ。それはたいへんでしたね。それらの6作品全て、今回のNYAFF−ジャパンカッツで上映されるというのも、すごいです。

 
山田:4月からの約半年間で、全ての作品を撮ったんですよ。『ミロクローゼ』に関して言えば、4月にオブレネリから始まって、もう10月に撮るタモンを頭に置いてやるんで。3つの役のバランスも考えて芝居をしていますし。『十三人〜』を撮影している時もタモンの撮影が来る事が常に頭にあるわけですよ。同じ侍の役でどう色を変えるかも考えるし、この半年間、人格が6つくらい並行して生きているんですよ、まあ酒に溺れましたね(笑)。眠れないし。眠れないから酒に溺れて、酒を飲むから眠れないしで。

――自分を“無”にしたいから飲むんですか?

山田:いいえ、つらいから。何がなんだかわからなくなって。芝居をしている時は自分が無いわけですから。そこへ来て、こう役が続くと。

――7つの役はそれぞれかなり違うキャラクターですね。100年前の新六郎さんから、オブレネリという外人?異星人ですか?のような。

山田:オブレネリは外人なんですか?何人とかもないんでしょうね。

――作品によって顔の筋肉の動かし方とか、発声方法もかなり変えておられますね。

山田:ビジュアルというのは、基本的に変わらないものです。衣装とかメイクとかビジュアルを変えるという事もありますが、何よりも生きてきた環境が違うと人格も違いますから、当然声のトーンとか、セリフとセリフの間とか、強弱とか絶対人によって違うものだと思うので、役もそうあるべきだと思って。その役に一番合っている声の太さ、強さ、大きさ、高さ、間の取り方を意識します。

――発声や話し方での役作りは、ご自身の中から湧き上がってくるものなのでしょうか。

山田:昔から役を作る上でやっています。ただベッソンは、監督からしゃべり方を強めにと言われましたので、そこで口を歪ませて・・・実は麻生太郎さんを少しイメージしたんです(笑)。

――ダンスはどれくらい練習をなさったんでしょうか。

 
山田:週3回を1ヵ月です。ベッソンのダンスの練習をやっている時は、『十三人〜』の乗馬と殺陣の練習もあったので、その1ヵ月は練習だけやっていました。僕、練習大嫌いなので、もうイライラしましたね。ダンスは3曲あって、曲によってちょっと似ているところもあるんで、ごちゃごちゃになったり。普通の格好で練習を始めたのですが、ベッソンはすごく高いブーツを履いているので、最後の方ではブーツを履いて練習して。

――滑るでしょう。

山田:滑るし、踏み込めないんですよね。廊下のシーンではジャンプをするんですが、その時にパンツのお尻を割ってしまった事もありました(笑)。

――『ミロクローゼ』の見所は。

山田:そうですね、ひとつの映画を観に来て、同じ料金で3倍楽しめるところでしょうか(笑)。

――メイクも凝っていて、3つのキャラクターの特徴がよく出ています。オブレネリは眉毛を太く作っていますが、少年に見せる為に?

 
山田:オブレネリはまんまですよ。これが基本でタモンの場合を細くしてるんです。結構濃いので、眉毛やひげは役作りに利用しています。女優さんがメイク変えるように、役によって長さも変えるんですよ。眉毛は目のすぐ上にあるので、毛の長さを短くして、色を薄くするとその分目が強調されるんです。目の力が必要な時はちょっと細くするとか、ですね。

――メイクアップもご自身で提案されたりとか、

山田:メイクアップまではさすがに(笑)。ひげも役によってどういう形がいいのか、ひげが無い方がいいとか、と毛は使いますね。脱ぐシーンとかがあると、僕はわりと胸毛が生えているので、タモンみたいに男らしい役の場合は見せた方がいいし、オブレネリの場合は無い方がいいので剃るとか。

――無いものを生やすよりは、あるものを消した方がたやすいですし、そのあたりは強みなんでしょうね。

山田:剃っても生えてくるものだし。この役には「胸毛は無い方がいいから剃りますか」というとスタッフが「大丈夫ですか」と。髪の毛だって、役によって長いほうがいい場合は伸ばすし、短いほうがいい場合は切るし。当たり前の事じゃないでしょうか。

――それを出来る俳優がなかなかいないのでしょう。

山田:意外とその当たり前の事をやっている人が少ないのかもしれません。


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映画とドラマそれぞれのよさ
活動の場は狭めずに


――映画俳優とは自称なさらない。

 
山田:ジャンルってくだらないな、と思ってますし、自分から活躍の場を狭めなくてもいいんじゃないか、と。映画には映画のよさがありますし、ドラマにはドラマのよさがあって、何十巻かの漫画原作を2時間で収めるのは無理がありますし、その場合は連ドラでやった方がいいでしょう。本来なら映画で10作とかが一番いいですが、そうなると何年間も同じ作品に関わる事になって、自分で飽きてしまうと思うんですよ。

――たえず役を念頭において何年間も過ごすとなると、山田さんのような役作りをされている方だと、辛いですよね。

山田:役そのままになってしまいますので。3ヶ月とかで終了する連ドラでちょうどいいのかもしれません。

――撮影期間の長いTVドラマと映画では、役作りの面において、違う方法を取られるという事はないですか?

山田:やっている事は同じです。作業としては芝居なので、自分を否定して役を正当化するていうのは、TVだろうが、映画だろうが、どんな作品でも、コメディでも、シリアスでも、同じで変わらないですね。ただ受け取り方に違いがあるだけで。映画はその日のためにスケジュールを1日空けて、かつ劇場まで来て、お金を払って観ますよね。TVの場合は食事をしながら、なんとなく観ている人も多いですし、「今この一瞬、目の角度が5度動いたのを、観て欲しかったのに」というのは伝わらないですよね、画面も小さいですし。映画を観に行く時って、映画のテンションに持っていきますし、その違いと、後もうひとつ、映画は世界中で観てもらえます。ドラマはなかなか難しいので、是非海外の人にドラマを観てもらいたいです。

――最後に。3・11以降のエンターテイメント界はどのようになるでしょうか。変わるでしょうか、または変わるべきでしょうか。

 
山田:例えば今、映画の中で水が押し寄せてくるという映像は絶対に使えない。それがあまりにシビアになり過ぎていますが、被災した方の要望ではないんですね。少しそういうシーンがあると「被災者の気持ちを考えろ」って言う人がいる。だからといって萎縮しなくてはいけないのはどうかと思います。だって映画ですし、フィクションですから。被災者の方々って、エンターテイメントをすごく求めていると思うんですよ。笑える作品は今一番大事だと思うのに、一部のストレス発散したい人たちの為に自粛しないといけないっていう今の状況には、とてもがっかりしています。国中で助け合わなくてはいけない時に、日本国内で潰しあっているような。非常に残念な気持ちです。

――これからはコメディや、『GANTZ』のようなSFとか、異次元の世界の話なんかが求められるのでしょうね。

山田:偶然なのですがこれからTVドラマでコメディ作品が2つ続くんです。こういうタイミングなのですごくよかったな、と。『ミロクローゼ』も海外で話題になって、逆輸入になったりして盛り上がって、多くの人に観てもらえると、とてもうれしく思います。


 
  Profile: 山田孝之(やまだたかゆき)

1983年10月20日生まれ。1999年日本テレビ「サイコメトラーEIJI2」でデビュー以降、多くのテレビドラマに出演し2004年エランドール賞新人賞を受賞。2005年映画「電車男」(村上正典監督)で主演を務める。2007年『クローズZERO』(三池崇史監督)でブルーリボン賞助演男優賞ノミネート。2010年『十三人の刺客』(三池崇史監督)ではヴェネツィア国際映画祭に参加。2010年「The Hollywood Reporter」において「世界の注目俳優10人」の1人に日本人として唯一選出される。2011年以降公開予定の作品は『ミロクローゼ』(石橋義正監督)、『指輪をはめたい』(岩田ユキ監督)、『荒川アンダー ザ ブリッジ』(飯塚健監督)、『のぼうの城』(犬童一心監督/樋口真嗣監督)。

映画『ミロクローゼ』(2011年公開予定)
(配給:ディーライツ)

(C)2011 MILOCRORZE Film Partners
   

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