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オ・ヨンドゥ×大畑創インタビュー

昨年のグランプリ覇者で新作『探偵探偵ヨンゴン 義手の銃を持つ男』のワールドプレミアを引っさげ、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」に戻って来たオ・ヨンドウ監督。かたや『大拳銃』でゆうばり国際ファンタスティック映画祭、ぴあフィルムフェスティバル双方の審査員特別賞を獲得し、今回は新作『へんげ』が招待上映され、ゆうばり入りした大畑創監督。日韓と国は違えど、自主映画育ちのお二人。撮影日数や、国のサポートの違いなど、笑いの絶えない和やかな雰囲気の中、対談が行われた。

取材・構成・文/植山英美

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韓国の自主映画監督は、
商業映画にステップアップするのか?


 
『へんげ』
(C)2012 OMNI PRODUCTION.
大畑 :今回の製作費は、『エイリアンビキニの侵略』に比べて大きいのですか?

: 700万円くらいですね。前回は35万円くらいなので、20倍ですか(笑)

大畑 :どうやって集めたのですか?

:ゆうばり映画祭スカパー支援金の200万円、それに加えて林海象監督が個人で出資して下さったり。これは2011年映画祭での飲み会の席で「君がグランプリを取って、探偵の映画を撮るならば、俺が50万円出す」と(笑)。本当に出して下さった。その時はまさかグランプリを取るなんて、思っていなかったんじゃないですか(笑)?

大畑:スタッフの人数は増えましたか?

:『エイリアンビキニ〜』のスタッフは4人だったので、今回はぐっと増えて10人です(笑)

大畑:あの作品を10人で撮ったのは驚きです。

:前作のカメラマンが今作で助監督をしてくれたり、とスタッフは基本的あまり代わり映えしていませんね。

大畑 :撮影の人が助監督ですか。日本ではそのフレキシビリティはありえませんね。

 
『探偵ヨンゴン 義手の銃を持つ男』
(C)kinomangosteen/KING RECORDS
:『探偵ヨンゴン(義手の銃を持つ男)』主演のホ・ヨングンは前々作『隣のゾンビ』で共同監督に名を連ねていますし。

大畑 :みなさん学校でお知り合いになられたのですが?

: 大学には行っていないんです。95年から商業映画の演出部の現場で働いていて、そこでいろいろな仲間と知り合ったわけなんです。

大畑:『エイリアンビキニ〜』のスタッフもみんな商業映画出身なんでしょうか?

: 4人しかいないんですけど(笑)、妻がメイクアップと衣装を、カメラマンは主演のホ・ヨングンの友人で、僕とヨングンは軍隊で知り合ったんですよ。助監督はもともと役者さんで、『隣のゾンビ』にも出ていた人で、「勉強したいから」と加わった。

大畑: 韓国の自主映画界は、日本の自主映画界とどのような違いがあると思われますか?

: 元々商業映画で仕事をしていたので、韓国の自主映画の人々は、同じ学校の出身者で製作したりしているので、実はあまりよく知らないのです。僕は自己流で始めたので、インディペンデント映画からも独立(インディペンデント)しているというか(笑)。

大畑: 韓国の自主映画監督は、商業映画にステップアップしたりする事が多いのでしょうか?

: 千差万別で、一口では言えないのですが、自主映画のスタイルが好きで自主映画をずっと撮っている監督もいます。本当に映画が好きで、撮っているうちに自主映画と呼ばれるようになった。かと思えば野心があって、商業映画に引きに抜かれて、そちらに行った監督もいますし。一方スタッフは商業をやらないと食べて行けないので、商業でも活躍している人がほとんどです。


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オ・ヨンドウ「スゴイ!その少なさに驚きです」
韓国と日本の自主映画では制作条件がどう違う?


 
『エイリアン・ビキニの侵略』
(C)Kinomangosteen
大畑: では劇場の環境はどうですか?  実は僕の映画『へんげ』は『エイリアンビキニ〜』と同じ劇場(シアターN渋谷)で公開されるんです。

:すばらしい劇場でした。場所もいいし、大きさもちょうど良かったですし。

大畑 :お客さんもいいし。

:ああいう劇場が韓国にはあまりないんですね。本当に気分のいい劇場で。ソウルで自主映画をかけてくれる劇場って、3つか4つしかないんですよ。『エイリアンビキ二〜』の時は商業映画用の大きなシネコンでかけてもらったんですが、あまりよくなかった。深夜の限られた時間だけの上映だったり、ハリウッド映画のように一日中上映出来ない状況で。ならばいっそ大学などで上映してみたい、と思いました。ただ映画は興行収入あってこそ成り立つものなので、仕方がないと思いますが。規模の小さい映画も大作と共存することが必要だと思います。

大畑 :日本も似たような状況です。

 
: 個人的な考えなのですが、シネコンの劇場はサウンドシステムとか、設備にお金がかかっていますよね。自主映画には自主映画の上映の仕方があっていいと思うのです。

大畑 :日本ではある種、自主映画が市民権を得ているように思うのですが、韓国はどうですか?

: 学生が作る映画も含めると韓国では年間100本ほどの自主映画が製作されていますが、公開されても、年間20本くらいです。中にはヒットする作品もあるのでしょうが、どうでしょうね。自主映画には自主映画の魅力があると思います。僕個人的には、もし将来的に商業映画を作る事になっても、自主映画の製作は続けたいと思っています。ところで日本では撮影日数が凄く少ないと聞いています、それは物価が高いからですか?

大畑: 端的にお金がないからです(笑)。『エイリアンビキニ〜』は何日で撮ったのですか?

: 20日間です。

大畑:すっごく贅沢ですね。ぼくらは8日間です。

:(日本語で)スゴイ!その少なさに驚きです。特殊撮影もあるのに! 僕は日本で映画は撮れませんよ! 今回の撮影日数は20日間でしたが、毎日たいへんでした。もっと時間があったらと思ったくらいですから。韓国の商業映画なら撮影期間はだいたい3ヶ月くらいです。

 
大畑: 日本でなら、その3分の1で撮れと言われてしまいます。

: 韓国で撮ったらどうですか? 韓国は国のサポートがあるんです。国や自治体などですね。例えばソウル市の見える映像が入ったシーンを撮影するならば、経費の20%がフィルムコミッションから返ってきます。インセンティブをくれるんです。制限も少なく、ビルを爆発したり、大通りを封鎖したりも簡単に許可が出ますよ。東京はとても美しい街なので、是非アクションを撮ってみたいと思うのですが、難しいのでしょうね。

大畑: 話を聞いていると、やはり韓国での撮影の方が恵まれているように思います。

:『へんげ』の撮影で苦労なさった点というのは、どういう面でしょう?

大畑:撮影で苦労したのは、特殊メイクを使用しているシーン全般です。とにかくメイクを施すのに時間がかかってしまうし、役者さんの体力ももろに奪ってしまうようなものでしたので、現場では撮影順の考慮や、役者さんへのケアが大変でした。自主映画の製作体制なので、なおさら難しかったです。

:VFXを使っているのですか?

大畑:『へんげ』で使っている技術は「VFX」ではなく「合成」です。「合成」はグリーンバックなどの前で撮影した素材を、実際の現場で撮影した画に嵌め込むというような作業です。昔ながらの特撮映画などで頻繁に使われていた撮影技術ですね。

:なるほど、すっごく興味深いです。ところで肉体が変化していくのが、とても面白かったのですが、ああいうアイデアはどこからきたのでしょう?

大畑: 肉体が変化していくようなアイデアは、昔ながらのアイデアだと思います。僕の中でとても大きな存在である『ザ・フライ』という映画もそうです。『へんげ』では、バケモノと化してしまった者が日本家庭のリビングに堂々と真っ昼間に居座っている、というようなアイデアがキモになったように思います。

 
『へんげ』
(C)2012 OMNI PRODUCTION.
:大畑監督の次回作の予定がありますか?

大畑: 次は漫画原作のホラー映画です。

:日本で羨ましいのは、漫画文化が発達している事と、ジャンル小説の多彩さです。僕は桐野夏生さんのファンで、原作ものを作りたいと思うのですが、簡単でない気がして。その辺りはどうですか?

大畑: そんなに難しくないんじゃないですか?

: じゃ紹介していただけますか?(笑)

大畑 :韓国はオリジナルが多いイメージがあるのですが、原作のあるものを映画化する事はあるのですか?

: 多いですよ。日本の漫画を原作とした物もありますし、『オールド・ボーイ』とか、『カンナさん大成功です!』とか。漫画にしてもSFやアクションもあったり、文化的な層が厚く、やってみたい原作がたくさんあります。日本の漫画や小説の版権を買って、映画化する事も韓国では実は多いです。大畑さんの次回作はいつ撮影に入るのですか?

 
大畑: 夏を予定しています。

:撮影期間はどれくらい?

大畑: 1週間くらいでしょうか。

: (日本語で)スゴイ!(笑)僕は絶対無理。

大畑: 1日 10数時間撮りますよ。OKカットを10分ぶん以上撮らないといけないので、それって結構きついです。

:すごくたいへんそうです。韓国で撮った方がいいですよ。大きな目で見れば僕らの作品はアジア映画です。アジアのどこで撮ってもいいわけで。これからはみんなで連携できればいいですね!

大畑: 是非!



 
  Profile: オ・ヨンドゥ(お・よんどぅ)

1975年、韓国出身。映像製作集団キノマンゴスチンを立ち上げて製作したオムニバス・ゾンビ・ホラー『隣のゾンビ』(09)が、プチョン国際ファンタス ティック映画祭で観客賞、審査員特別賞を受賞し、韓国インディーズ映画界で注目を集める。初の長編監督作品『エイリアン・ビキニの侵略』が、2011年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリを受賞し、同年秋、日本公開も実現。映画祭とスカパー!の支援で製作された新作『探偵探偵ヨンゴン 義手の銃を持つ男』が、2012年のゆうばりでワールドプレミア上映された。

『エイリアン・ビキニの侵略』オ・ヨンドゥ監督が語るプチョンファンタ企画マーケット(NAFF)とは?(2011/09/29UP)
韓国インディーズの雄、オ・ヨンドゥ監督インタビュー(2011/04/06UP)



  Profile: 大畑創(おおはた・はじめ)

1979年、大阪府出身。映画美学校終了制作として監督した『大拳銃』(2008年)が各地映画祭にて上映され、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭と、ぴあフィルムフェスティバルにて審査員特別賞をW受賞。都内映画館にて劇場公開を果たす。その後、『怪談新耳袋 百物語』(2010年DVD発売9の一篇『庭の木』を監督。

映画『へんげ』
(配給:キングレコード/2012年3月10日(土)よりシアターN渋谷ほか全国順次公開)
公式サイト:http://hen-ge.com/
   

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