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My Generation

ドキュメンタリー監督・松江哲明、1977年生まれ。カメラを通じて、目の前の現実と向き合ってきた松江哲明監督が、「同世代」の才能について大いに語る! 彼にとって、同じ時代の匂いを感じるクリエイターとは、その才能とは、いったい何を指すのだろうか?
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#05入江悠
SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム
(C)2010「SR2」CREW
入江悠監督(1979年生まれ)の新作映画
『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』
6月26日(土)より新宿バルト9ほかにて公開
『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』をドイツで観た。
ド根性の映画だな、と思った。ラストの意地としか表現しようのないラップバトルに感動した。「もういいじゃん、よく頑張ってるよ」と僕が胸をプルプル震わせながらスクリーンに向かってメッセージを送っても、彼女らは声を張る。叫びが止まらないから。大人たちの冷たい視線にも、隣県サイタマからやってきたデブラッパーの挑発にも、群馬の女子ラッパーたちは折れなかった。
僕はこの戦いっぷりを見、今のインディペンデント映画のあり方を思った。映画に集中しなきゃ、と思いつつ、それでもそんなことを意識してしまったのは、本作の在り方自体が映画で描かれる状況とあまりにシンクロしているから。
自主映画は基本的に誰からも望まれていない。制作費は言い出しっぺである監督、もしくはプロデューサーが負担。スタッフキャストに満足なギャラが支払われる訳でもない。つまり監督だけの「作りたい」という思い入れだけが作品の原動力になる。僕は自主映画のほとんどが、そう作られていると思っている。
入江監督が最期でもいい、と覚悟して作ったという『SR サイタマノラッパー』は伝説になることを拒否し、何度もリバイバルを繰り返し、観客に届け、育てて来た。そして早くも続編まで作ってしまった。スタート時は誰にも望まれていなかったのに。
今の日本映画のほとんどは、誰かの為に作られている。ヒットを望むプロデューサーの為に、テレビでの放送を待つ視聴者の為に、原作といかに似てるかを確認するオリジナルのファンの為に。
その結果、かつての映画とは全く違う、衝撃も驚きもない、ただのヌルい映像ばかりになってしまったのは周知の通り。僕自身、そんな状況の中でインディペンデントにこだわり、作り、上映し、届けてきたが、勝てたという実感はない。敵わないモノはあった、と今は戦い方を軌道修正しなければ、と思っている。
しかし、『SR』シリーズと入江監督が実行しつつあり、きっと目指しているであろう位置は誰もなし得ていない制作であり、興行なんだと思う。日本映画のあり方も変える為に、今行動し、踏ん張らないといけない。でないとこの国から「映画」がなくなってしまう。
『SR サイタマノラッパー2』には、そんな覚悟が映っていた。デジタルビデオで撮られたほんの小さな映画は、多くのファンを巻き込み、「待たれる」シリーズになりつつある。これは本当に凄いことだと思うし、多くの映画人は刺激を受けるべき事件だと思う。

Profile: 松江哲明(まつえ・てつあき)

1977年東京都出身。
99年、日本映画学校の卒業制作として監督した『あんにょんキムチ』が、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、NETPAC特別賞、平成 12年度文化庁優秀映画賞などを受賞。以降、OV『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズ、『カレーライスの女たち』『セキ★ララ』『童貞。をプロデュース』など刺激的な作品を次々と発表。09年公開された『あんにょん由美香』が、第64回毎日映画コンクール(1月19日発表)にてドキュメンタリー映画賞、映画芸術ベスト4位に選出。東京国際映画祭2009にて「日本映画・ある視点部門」作品賞を受賞した『ライブテープ』が、ドイツ・フランクフルトの映画祭「Nippon Connection Filmfestival」(4月14日〜18日)に続き、第9回ニューヨークアジア映画祭(6月25日〜7月8日)での上映が正式決定。

公式Blog
http://d.hatena.ne.jp/matsue/
 

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