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My Generation

ドキュメンタリー監督・松江哲明、1977年生まれ。カメラを通じて、目の前の現実と向き合ってきた松江哲明監督が、「同世代」の才能について大いに語る! 彼にとって、同じ時代の匂いを感じるクリエイターとは、その才能とは、いったい何を指すのだろうか?
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『モテキ』
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久保ミツロウ(1975年生まれ)の漫画「モテキ」
「モテキ」1〜4(完)/講談社/¥630(1巻は¥610)
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※7月16日(金)よりテレビ東京系列にて実写ドラマがOAスタート
http://www.tv-tokyo.co.jp/moteki/
「ズバッ!」と決まったラストに少々、不満なのはなぜだろう。
「まんまと」なハッピーエンドがしっくりこないからか。タイプではないけど、どこかほっとけない中柴いつかが最終巻では1コマしか登場しないなんて有り様のせいか。小宮山夏樹との対面がクライマックスとなっていたが「その先を」とまだまだ期待してしまっていたからか。そんなことを考えつつ、何度目かの最終巻、最終ページをめくり終えた時、「あ、ごちゃごちゃ考えてしまうのは『モテキ』が好きだからか」と実感した。
突然、訪れた人生のモテ期に翻弄される主人公、藤本幸世は女性たちと向き合い、逃げ、あがくことで僕らを笑わせ、時には「あいたたた」とイタイ所を突いてくれた。物語の冒頭、ロックフェスで勝手に失恋し、泥水にまみれ『格好悪いふられ方』を歌い、「あ、この歌って結局は結婚する男のことじゃん」と気づき、さらに落ち込む彼を一気に好きになってしまったのは、僕だけではないだろう。
『モテキ』の女性たちはそんな藤本に翻弄される。あまりのヘタレっぷりに「なに、あの男!」と怒りを露にしながらも、彼をほっとけない。なんて優しい子たちだろうか。巻数を進める内に、僕は藤本よりも周囲の女性に対し「こんなダメ男でごめんなさい」と勝手に反省し、ちょびっと惚れ、「どうか幸せになって」と願っていた。
だが、藤本がなぜここまでヘタレなのかは、僕にはよく分かる。今は体験よりも知識の方が先に得られ、過剰な情報が比較を生み、行動よりも結果が見えてしまう時代だと思う。「あれこれ言う前に、どうにかしろ」なんて通用しない。「だって、こうなるじゃないですか」と返答されて、おしまいなのだ。僕がかつて「童貞」を主人公に撮影した時、そんな不毛な会話を何度もした。それでもキャメラと映画を意識することで、アクションを起こし、演出し、共犯関係となることで、「結果」以上の経験を映すことが出来た。膨大な知識で己の鎧を頑丈にするよりも、壊される快感の方がはるかに大きいのだ。物語にしたら些細な出来事でも、その経験値は本人の中で絶対なものになる。
『モテキ』のクライマックスは藤本が、土井亜紀と向き合う瞬間で終わる。が、結果は描かれない。しかも舞台は物語の冒頭と同じ場所。この円陣に気付いた時、この漫画は限りなく現実に近い恋愛が「きちんと」描かれていたのだな、と思った。なぜなら僕自身、恋愛はいつも同じような経験ばかりで、未だにそこから逃げられないから。
数年後に読む『モテキ』の印象は、きっと違うものになるんだと思う。

Profile: 松江哲明(まつえ・てつあき)

1977年東京都出身。
99年、日本映画学校の卒業制作として監督した『あんにょんキムチ』が、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、NETPAC特別賞、平成 12年度文化庁優秀映画賞などを受賞。以降、OV『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズ、『カレーライスの女たち』『セキ★ララ』『童貞。をプロデュース』など刺激的な作品を次々と発表。09年公開された『あんにょん由美香』が、第64回毎日映画コンクール(1月19日発表)にてドキュメンタリー映画賞、映画芸術ベスト4位に選出。東京国際映画祭2009にて「日本映画・ある視点部門」作品賞を受賞した『ライブテープ』が、ドイツ・フランクフルトの映画祭「Nippon Connection Filmfestival」(4月14日〜18日)に続き、第9回ニューヨークアジア映画祭(6月25日〜7月8日)での上映が正式決定。

公式Blog
http://d.hatena.ne.jp/matsue/
 




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