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My Generation

ドキュメンタリー監督・松江哲明、1977年生まれ。カメラを通じて、目の前の現実と向き合ってきた松江哲明監督が、「同世代」の才能について大いに語る! 彼にとって、同じ時代の匂いを感じるクリエイターとは、その才能とは、いったい何を指すのだろうか?
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アイムボカン
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Chim↑Pom(2005 年にエリイ、卯城竜太、林靖高、岡田将孝、稲岡求、水野俊紀の6人で結成)の映像作品が上映されたガンダーラ映画祭
僕はChim↑Pomの作品が大好きだ。
けどChim↑Pom自身のことはよく知らない。作品展示会でエリイちゃんを見かけたことがあるけど、どう声をかけていいのか分からなかった。ギャルだから(偏見)。彼らを知ったのはガンダーラ映画祭で自作『セックスと嘘とビデオテープとウソ』と一緒に作品が上映されることになったからだった。で、『アイムボカン』と『こんにちはーChim↑Pom』を見たのだが、カンボジアの地雷で石膏像を爆破させた作品をオークションし(値段が下がる毎に買える義足の数が減ってしまう)、渋谷の路上を走り回る凶暴なネズミを捕まえ、ピカチュウそっくりの剥製を作り、ギャルは延々とピンク色のゲロを吐き続けていた。笑顔で。
涙が出た。お腹が痛くて仕方なかった。どっちも笑い過ぎのせいだった。ビビった。
そこらの映画、テレビ、ドキュメンタリーなんかよりもずっと批評性があって、とにかく笑えて、ぐさっと突かれた。行動力も凄いが、編集力にも驚かされた。ラフな映像を力のある作品に変える腕力を感じた。こういう技術をセンスと呼ぶんだな、と改めて思った。不意に『水曜どうでしょう』『JACKASS』を見た時の「びっくり」を思い出した。作品を教えてくれたシマダーマン(ガンダーラ映画祭の仕掛人)に聞くと彼らは現代アートの集団だと言う。会田誠さんとの関係や、経歴を聞いたが、同世代だったということに一番驚いた。だからこそChim↑Pomには安易に近づけなかった。作品の過激さと秀逸さに圧倒され過ぎてしまい、中途半端な形で知り合いたくなかったと言えば聞こえがいいが、正直な所、ビジュアルが体育会系っぽくて恐そうだったからだ。作品のビビりとは別の意味でビビっていた。で、山下敦弘君も同じことを言っていた。文化系の僕らは学生時代のコンプレックスが未だに拭えないのだ。
で、広島の「ピカッ」だ。経緯は今、この文章をネットで読んでいる人ならよく知ってると思うし、当時彼らが激しく批判されたこともご存知だろうから書かない。ただ僕は、匿名で正論を言うことのかっこ悪さを感じた。僕は「正しいこと」を大声で言う人が苦手だ。なぜならそれは誰もが納得せざるを得ないことだし、分かっていることだから。それにそういうことを言う人の顔はまず怖い。正論は小声でこっそりと遠慮がちに言うべきだと思う。実際、Chim↑Pomは広島で「不愉快だ」と彼らの行動に対し声を上げた人と対話を繰り返した。その内容は著書にもなったが、読後、いい関係性だな、と思った。真意は大声でしても伝わらない。聞こえる範囲で言葉をいかに丁寧に伝えるかが大切だ、と知った。そして表現することの責任と自由について考えた。
Chim↑Pomがこの作品を通していい出会いや経験があったことは展示会や映像を見れば分かる。相変わらず「面白い」からだ。先日行われた『Imagine』では僕の中で「楽しい」が加わった。盲目のハジくんとChim↑Pomが作る作品を体験して、僕はわくわくするような気持ちになれた。
一昨日、Chim↑Pomの林さんと水野さんとでトークを行う機会があった。緊張しながら水野さんに「はじめまして」と挨拶をしたら、「はじめましてじゃないですよ。あの時に…」と以前、長時間に渡って居酒屋で話をしていたことを指摘された。己の記憶力の酷さに呆れつつ、Chim↑Pomにはビビらされっぱなしだな、と思った。


Profile: 松江哲明(まつえ・てつあき)

1977年東京都出身。
99年、日本映画学校の卒業制作として監督した『あんにょんキムチ』が、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、NETPAC特別賞、平成 12年度文化庁優秀映画賞などを受賞。以降、OV『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズ、『カレーライスの女たち』『セキ★ララ』『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』など刺激的な作品を次々と発表。東京国際映画祭2009にて「日本映画・ある視点部門」作品賞を受賞した『ライブテープ』が、ドイツ、NY、トロント、パリなどの海外や国内の映画祭を巡回中。自身の10年間のドキュメンタリーについてまとめた著作「セルフ・ドキュメンタリー」(河出書房新社)が発売中。10月13日(水)には、森達也氏と、新宿ジュンク堂にて刊行記念「撮るドキュメンタリー/書くドキュメンタリー」と題したトークショーを実施。その他のイベントや詳細は下記ブログを参照。

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