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My Generation

ドキュメンタリー監督・松江哲明、1977年生まれ。カメラを通じて、目の前の現実と向き合ってきた松江哲明監督が、「同世代」の才能について大いに語る! 彼にとって、同じ時代の匂いを感じるクリエイターとは、その才能とは、いったい何を指すのだろうか?
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#11神聖かまってちゃん
神聖かまってちゃん

神聖かまってちゃん(の子、mono、ちばぎん、みさこの4人で2008年頃より活動開始)。そのライブハウス【WWW】のこけら落とし公演とそ の過程を追うドキュメンタリー「極私的神聖かまってちゃん」
http://www.spaceshowertv.com/
※SSTVにて1/26(水)、29(土)、2/4(金)、10(木)放送
リア充って言葉が嫌いだった。
彼女、彼氏がいる、友達が多い、いつでもセックスが出来る、そんなことがリアルで充実してる証拠になるはずがない。いる人間に分かることで目を反らしているだけなんじゃないか、そう思っていた。しかし『極私的神聖かまってちゃん』を企画し、日本中から送られてきたかまってちゃんのファンによる映像を見て、彼らが「リア充」と言う時、僕の方こそが勝手な思い込みでしかないことを実感させられた。
本作は昨年行われた神聖かまってちゃんのライブと、その一週間前から記録されたファンたちの映像で構成されている。僕はTwitterを使う友人に企画意図を話し、かまってちゃんのファンを探してもらった。そこからメールや電話で連絡をし、企画に賛同してもらえるかを尋ね、撮影して欲しい事柄、撮り方の注意、構図、イメージする作品を携帯ごしから伝えた。例えが古くてアレだが、「『電波少年』のなすびの懸賞生活みたいな映像で」と言うと「分かりました」と理解してもらえるのには驚いた。とはいえ会ったこともない人に撮影を任せてしまうのは怖い。でも「ちゃんと撮れているのかしら」なんていう技術的な不安よりも、彼らの方が僕に「どう使われてしまうのか」と心配していたことだろう。それでも彼らは了解してくれた。それは僕に、ではなく「神聖かまってちゃんについてのドキュメンタリー」を面白がり、理解してくれたからだと思う。
「かまってちゃんの『死ね』という言葉を聞くと、子供の頃、母親につい乱暴な言葉を言ってしまった時のことを思い出す」「僕は学校に通って友達と遊んだりしてて、客観的に見たらリア充なんだろうけど、かまってちゃんを聞く時はわざと充実していない自分を見せようとしてしまうんです」「かまってちゃんを聞いてから行動的になれた。大人になるって素晴らしいと思う。そういう気持ちにさせてくれる音楽。そう思えるだけで今、リア充なんだろうな」
僕は彼らが時には涙を流しながら話してくれた台詞に、いっぱい発見させられた。今、思わず台詞という単語を使ってしまったが、それは撮影前に「自分を撮ったことがないから上手く出来るか分からない」と何人も言われた時に「自分で自分を演じるようなつもりで話して下さい。本名の自分を演じるような感じで」と伝えたことを思い出したからだ。一週間ずっとキャメラに向かってかまってちゃんへの想いを伝えているうちに、次第に意識することが自然になり、決してシナリオでは書けない、まとまりのない、滑舌の悪い「台詞」になったのだ。
想いが詰まった映像は技術を凌駕してしまう。YouTubeには素人が記録したライブ映像が溢れているが、ハッキリ言ってありふれた中継よりも遥かにカッコいいし、実際、再生回数がPVを上回ってしまうことも多い。「神聖かまってちゃん」のPVを見た時、僕は映像の強度に驚いた。撮影は素人っぽいが、それを有り余るほどの編集力、極個人的な主観を客観的な視点で切り刻み、音楽に合わせてしまう圧倒的なセンス。の子さん自身が作っている、と聞いたとき、僕は世代の超えられない差を感じた。
偶然が偶然のままでなく、必然に映らなければドキュメンタリーで撮る意味がない、と僕は思っている。そして、そこに気づけるのは技術なんじゃないかと、思う。
約二ヶ月間、編集スタッフと共に、偶然が必然に見える瞬間とドラマを探し、『極私的神聖かまってちゃん』が完成した。
神聖かまってちゃんがこんなにも支持される理由と、なぜ僕が惹かれたのかがファンたちの台詞と、かまってちゃんの演奏によって気づかされた。


Profile: 松江哲明(まつえ・てつあき)

1977年東京都出身。
99年、日本映画学校の卒業制作として監督した『あんにょんキムチ』が、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、NETPAC特別 賞、平成 12年度文化庁優秀映画賞などを受賞。以降、OV『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズ、『カレーライスの女たち』『セキ★ララ』『童貞。をプロ デュース』『あんにょん由美香』など刺激的な作品を次々と発表。東京国際映画祭2009にて「日本映画・ある視点部門」作品賞を受賞後、ドイツ、 NY、トロント、パリ、ロンドンなどの海外や国内の映画祭を巡回中。自身の10年間のドキュメンタリーについてまとめた著作「セルフ・ドキュメン タリー」(河出書房新社)、講座に参加した4人のゲストとの対談集「ブレインズ叢書4 質疑応答のプロになる!映画に参加するために」(メディア総合研究所)が発売中。最新作は、『極私的神聖かまってちゃん』(SSTVにて1/26(水)、29(土)、2/4(金)、10(木)放送)、2 /6(日)より先行発売(13日〜全国発売)される前野健太のライブドキュメンタリー『DV』。

公式Blog
http://d.hatena.ne.jp/matsue/
 

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