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松江哲明「俺たちの世代」

ドキュメンタリー監督・松江哲明、1977年生まれ。カメラを通じて、目の前の現実と向き合ってきた松江哲明監督が、「同世代」の才能について大いに語る! 彼にとって、同じ時代の匂いを感じるクリエイターとは、その才能とは、いったい何を指すのだろうか?
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山本タカアキ

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山本タカアキ(1977年生まれ)がサウンドデザインを担当した作品を集めた特集「録音映画祭feat.山本タカアキ」

山本タカアキ氏 ブログ
http://yaplog.jp/stereographics/
『ライブテープ』は上映前、ほとんどの劇場で映写チェックをしている。
こう書くと多くの人が映像のチェックをしていると思うかもしれないが、僕らはまず映写技師さんに65分辺りにまで早送りをお願いし、前野さんと僕が歩きながら話す会話を眺め、前野さんが井の頭公園のステージに立ち、DAVID BOWIEたちに「じゃあ天気予報」と伝え、バンドと共に音を鳴らす、この箇所を聞く。スピーカーに神経を集中させて。
僕とタカアキさんはこの箇所を「どかんポイント」と呼んでいる。
『ライブテープ』のクライマックスはこの「どかん」だ。僕は現場でこの音を聞いた時、涙を流していた。そのことをタカアキさんが知っていたかは分からないが、彼はここを『ライブテープ』の心臓と決めてくれたんだと思う。劇場で聞いて、僕が「もうちょっとかな」なんて思っていると、だいたいタカアキさんも「ちょい上げれますよね」なんて言っていて、劇場内をぐるぐる回ってどこでどんな音がどう響くかを確認しつつ、映写技師さんに具体的な指示を出す。この箇所で「どかん」が伝われば、『ライブテープ』は大丈夫。そんな強気な気持ちになれるのは、この音を現場で録り、何ヶ月もかけて整音をしたタカアキさんが居てくれるからだろう。

僕はいろんな人と作品作りがしたいと思っているし、中でもプロデューサー、キャメラマンとは常に新鮮な気持ちでいたいから作品毎に違う。しかし、タカアキさんは違う。録音、整音をする度に「作品のベスト」を提示してしてくれる。しかし、それで終わりという感じがしない。「今度はどんな音が聞けるのか」と期待してしまう。『ライブテープ』はあの時の全力を出し切り、正直、撮影後数日間は「もうこれ以上のモノは作れなくてもいい」とさえ思っていたが、現在も新作が作れているのは、タカアキさんの仕事のお陰だと思う。『極私的神聖かまってちゃん』でも『DV』でも、それぞれ全く違う音作りが出来たし、現在準備している新作でもタカアキさんと続けてきたからこそ出来る「何か」を探っている。
作品としてのベストを提示されると、「次」を考えさせるし、アイデアも浮かんで来る。僕はタカアキさんから音を通して「挑発」されているんだろう。それは監督として大変幸せなことだと思っている。

昨年8月、池袋シネマ・ロサでタカアキさんが関わった作品を集めた『録音映画祭』が行われた。『ライブテープ』もそこに加えられ、タカアキさんとトークをすることになった。そこで若い観客から「どのようにしてあのゲリラ撮影を録音したのか」と質問が上がった。タカアキさんは7台のマイクをどのように配置し、録音したのかを具体的に説明する。質問をした彼の表情を見ていると、自分が学生時代のことを思い出した。しかし「その場合、マイクの位置はどこに向けるんですか」というさらに突っ込んだ質問に対し、タカアキさんは「それは自分で探して下さい」と返答した。僕はとても誠実だと思った。現場では状況一つで出来ること、出来ないことが生まれてしまう。つまり「やってみなきゃ分からない」のだ。しかしその為にあらゆる可能性を考え、準備することを怠ってはいけない。そういうことをタカアキさんは彼に伝えたかったんだと思う。
この答えを聞いた時、「同世代だな」と実感した。
僕らは映画を作りたいと思った時には作れる環境にあった。フィルムは当時も今も高価でバイト代でまかなうには大変だった。しかしビデオなら家にも学校にもあった。テープも電器屋さんで数百円。ノンリニア編集なんて便利なものはなかったけど、VHSビデオデッキを並べて、何度もダビングして、失敗したらお尻のカットが短くなってしまうので、常にドキドキしながら繋げ、「映画らしきもの」を目指した。
とりあえず作ってしまうことから始めた世代は、「フィルムでなきゃ映画じゃない」なんて批判されつつも、自分たちが面白いと思うものを続けて来た。そうやって映画を続けて10年が過ぎた。
僕が日本映画学校でドキュメンタリーにあたふたしていた頃、タカアキさんは日芸で冨永昌敬さんたちと映画作りをしていた。僕はその場面を見たことはないが、脳裏には風景が浮かんでしまう。そして頬が緩む。きっと同じような映画に刺激を受け、きっと都内のどこかの劇場ですれ違っていたはずだから。
あの頃、目指していた状況に近づいているのか遠ざかっているのかはまだ分からないけれど、僕らが信じる「どかん」を鳴らし続けられれば大丈夫、だと思う。


Profile: 松江哲明(まつえ・てつあき)

1977年東京都出身。
99年、日本映画学校の卒業制作として監督した『あんにょんキムチ』が、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、NETPAC特別 賞、平成 12年度文化庁優秀映画賞などを受賞。以降、OV『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズ、『カレーライスの女たち』『セキ★ララ』『童貞。をプロ デュース』『あんにょん由美香』など刺激的な作品を次々と発表。東京国際映画祭2009にて「日本映画・ある視点部門」作品賞を受賞後、ドイツ、 NY、トロント、パリ、ロンドンなどの海外や国内の映画祭を巡回中。自身の10年間のドキュメンタリーについてまとめた著作「セルフ・ドキュメン タリー」(河出書房新社)、講座に参加した4人のゲストとの対談集「ブレインズ叢書4 質疑応答のプロになる!映画に参加するために」(メディア総合研究 所)が発売中。
最新作となる前野健太のライブドキュメンタリーDVD『DV』が発売中で、その制作や販売の裏側を語り明かすトークイベント「DV明細」が4月以降に待機中。

公式Blog
http://d.hatena.ne.jp/matsue/
 

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