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松江哲明「俺たちの世代」


HogaHolicにアップされた『トーキョードリフター』トークショーの記事を見て、批判という意味について考えた。
批判という単語にはどこかネガティブな意見というイメージがあるが、僕はこの記事で挙げられている「批判」をそうとは受け止めなかった。どんな意見でも僕は読みたいし、聞きたい。一方的な的外れな非難は困るが、批判は受け止める覚悟がある。ただ作り手としては「撮る意味があるのか」「二番煎じ」「これは映画なのか」のもう一歩踏み込んだ意見を提示して欲しい。僕にとっては批判からさらに踏み込んだものが「批評」だ。昨年頃から映画における批評の不在、効果と問う声がちらほらと聞こえて来る。僕もそのことをよく考える。答えは出ない。自分で批評を書きながら、ちょっとずるいなとも思う。ただし僕は映画を「書く」と同時に「作る」こともしている。ある作品を見て「批評」することとは、良いことも悪いことも自作へ反響する。「僕はこの映画についてこう思った」と記すことが、どこか自分の映画作りや映画観を示しているようにも思う。
そういえば最近「批評をされたな」と思う出来事があった。12月14日のことだ。

9月末にあらかじめ決められた恋人たちへの池永正二さんから「松江君の『ライブテープ』と対バンしたいんだけど」と連絡を受けた。「2月にやったイベントみたいに映画と演奏を一緒にやりたい」と。僕は『DV』の発売イベントとしてライブハウスでの爆音上映と共に、ゲストによる生ライブの対バンを行った。その中にあら恋に出演してもらったのだが、今度は逆に池永さんの方からお誘いを受けた。場所は渋谷www。元シネマライズ。かつて何度も通った映画館。僕はすぐに「いいですよ」と答えた。
それから数週間後、新宿の喫茶店、西武で打ち合わせをした。ライブよりも先にまず『ライブテープ』を上映するということ。お客さんは立ち見で。あら恋のライブは映画の上映時間と合わせて74分とすること。それぞれの上映、ライブ前に映画館で流れるブザーを使うこと。そんなあれこれを決めた。
僕はすでに完成されている映画よりも、お客さんを前に生で演奏するライブの方が圧倒的に優位であることは分かっていた。お客さんは対バンである以上「どっちがいいか」を決めるかもしれないが、僕は「どっちか」以上に、どちらもあるからこそ成立する「何か」を期待した。ならば僕も準備を万全にしたかった。『ライブテープ』録音担当の山本タカアキさんに声を掛け、このライブの為に身体を空けてもらうことにした。彼がいれば『ライブテープ』は「最強」になれる。
そしてあら恋にお願いしたのは、「ぜひ『ライブテープ』の映像をライブ中に使って欲しい」ということ。あら恋のライブは普段から映画の映像を使い、上映と演奏が同等にミックスされる。僕は数ヶ月前に行われたwwwでのライブを見て、そこで流れた『天使のはらわた 赤い眩暈』『トカレフ』を自宅で見返した。映画に対する敬意と、サウンドトラックである覚悟があら恋のライブには詰まっている。僕はそう受け止めている。

ライブ当日、僕はタカアキさんと共に上映チェックを始める。ラストの「天気予報」を数回流し、ボリュームと音質を決める。お客さんが入ることを想定し、「どかん」と感じる大きさを決める。だがタカアキさんが「何か楽しくなって来ちゃったから上映中、直接いじっていいですか」と言い出し、僕はもちろん了解する。この日の『ライブテープ』は会場の雰囲気によって作られることになりそうだ。そんな頃、PAさんから「さっきあら恋のライブ中に流れる『ライブテープ』をチェックしたんですけど、もしかしたらスタッフの人は怒るかも」と伝えられた。僕は「そんなことないでしょう」と言い返す。あら恋が『ライブテープ』をダサく使うはずがない。そんな不安があったとしたら僕は、この企画自体を断っている。

『ライブテープ』が上映された。観客のほとんどが最初は立っていたが、次第に座り始める。そりゃそうだ。スクリーンに映る前野健太はどこから見ても「動かない」。ならば観客がそれぞれのベストポジションを決められたら、あとは映画と対峙してくれればいい。何人かがロビーに出るのが見えた。僕は「退屈したのかな」と思う。するとビールを持ってまた戻ってきた。で、座る。観客それぞれが自由な見方をするのがなんか「普通の」ライブっぽくていいな、と思った。映画館では成立しない見方だ。そして映画のクライマックス『天気予報』。今まで聞いた『ライブテープ』で最も凶暴で繊細な音だった。比喩ではなく足下が揺れた。

休憩後、ブザーが鳴り、あら恋のライブが始まった。いきなりあの揺れが再現され、驚いた。で、曲が進むにつれ、さらに強く、激しくなり、観客の歓声も加わる。映画では拍手があったが、歓声はない。「さすがだわ」と圧倒され、僕は自作の上映のことは置いておいて、一観客となってライブを楽しんだ。そして約一時間が過ぎた頃、『ライブテープ』のエンディングが流れた。「あ、さっきの映画だ」と僕自身が客観的に思い出す。しかしその動きはどこかぎこちない。じっくりスクリーンを見続けるとスローモーションで、さらに逆回転になっていることが分かる。僕は「これは『Back』が来るな」と思った。2011年最もYouTubeで見返した柴田剛監督によるPV。鳥肌と涙腺が刺激される映像と音楽の力がぎゅーっと詰まった約5分間。しかし、この日の映像はいつもと違う。
スクリーンでは前野健太が発光していた。sad songでは時間が止まっていた。長澤つぐみはゆっくり何かを願い、『Back』を完結させた。あら恋はこう宣言しているかのようだった。「俺たちは『ライブテープ』を見、こう解釈した」と。
ここで流れる『ライブテープは、ただ『Back』の為の素材だった。それが嬉しかった。会場が熱気に包まれ、「あー、この時間は74分の上映がないと成立しないものだったんだな」と気付き、僕はその瞬間を留めようと写真を撮った。でも身体で感じた興奮の1/100さえも残せなかった。やはり僕はこの体験をいつか映画で返答したい。そう思った時、これは「批評」だなと思った。僕にとって批評とは文章に限らない。あら恋が『ライブテープ』という映画に対して音楽で返答したことで、また新しい価値観が僕の中で生まれた。とても凄いことだと思うし、健全だと思う。ここからまた何かが生まれることは間違いないから。
ライブ後、池永さんに「松江君、ありがとう」と言われた。僕は「こちらこそ、ありがとう」と返し、力いっぱい握手を返した。感謝。







Profile: 松江哲明(まつえ・てつあき)

1977年東京都出身。
99年、日本映画学校の卒業制作として監督した『あんにょんキムチ』が、山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波特別賞、NETPAC特別 賞、平成 12年度文化庁優秀映画賞などを受賞。以降、OV『ほんとにあった! 呪いのビデオ』シリーズ『セキ★ララ』『童貞。をプロデュース』『あんにょん由美香』など刺激的な作品を次々と発表し、『ライブテープ』は東京国際映画祭2009「日本映画・ある視点部門」作品賞、Nippon Connection2010「ニッポン・デジタル・アワード」受賞。
批評や執筆活動も展開しており、近著に、前野健太のライブドキュメンタリーDVD『DV』の制作過程から流通までを綴った「映像作家サバイバル入門」(フィルムアート社刊)がある。

東京国際映画祭2011「日本映画・ある視点部門」に出品された最新作『トーキョードリフター』が、12月10日(土)よりユーロスペース他にて公開。2012年には3Dで挑んだ新作ドキュメンタリーが劇場公開予定。

公式Blog
http://d.hatena.ne.jp/matsue/
 

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