HogaHolic LOGO
topNEWSREVIEWVOICETHEATERFEATURE
スペーサーfilmfestival
TOP > セカイノ映画祭カラコンニチワ
タイトル
毎日、世界のどこかで行われている映画祭。日本で広く報道されるのはカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの世界三大映画祭ぐらいだが、邦画は昨今のジャパニーズ・ポップカルチャー・ブームの影響もあり、世界の意外な場所で熱狂的な歓迎をもって受け入れられているのだ。そんな現地の様子を、参加者自らレポートしてもらおう。
spacer
取材・文/中山治美
spacer
case1
spacer
  http://festival.sundance.org/2010/
spacer
 米俳優&監督のロバート・レッドフォードが創設し、1985年からスキーリゾート地であるユタ州パークシティで開催しているインディペンデント映画の祭典。若手作家の育成・発掘を目的としており、ここから『セックスと嘘とビデオテープ』(89)のスティーブン・ソダーバーグ、『ポイズン』(91)のトッド・ソロンズ、『エル・マリアッチ』(92)のロバート・ロドリゲスらが巣立っている。昨今では3万ドルで製作された低予算映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99)の評判がココから発信され、世界的なブームになった事は記憶に新しい。一時期は出品作の多くが、すでに配給先の決定しているような“青田買い”が続いていたが、昨今の米国映画の低迷や不況のあおりもあって、その熱は少し収まっている。それでもハリウッドの質が低下している今、昨年は『フローズン・リバー』、今年は『プレシャス』をアカデミー賞に送り込むなど気を吐いている。
 またNHKは、非営利団体「サンダンス・インスティテュート」と共同で96年から、映画化を目指す優れた脚本を選出する「サンダンス・NHK国際映像作家賞」を設けており、その授賞式が毎年、映画祭期間中に行われている。
ph02


〈山岡大祐監督が語るサンダンス映画祭〉
「この映画祭はハリウッドと地続きなんだと実感しました」

03 今年で第26回目(1月21日〜31日開催)を迎えたサンダンス映画祭。ワールドシネマ・ドキュメンタリー部門で、「山形国際ドキュメンタリー映画祭」ディレクターの藤岡朝子さんが審査員を務めたが、残念ながら日本からの参加作品はナシ。しかし山岡大祐監督が「サンダンス・NHK国際映像作家賞」日本部門で受賞し、授賞式出席のために映画祭に参加した。「主宰者のレッドフォードにも、どうやら現地入りしていたらしいキアヌ・リーブスやイライジャ・ウッドにも会えませんでしたが(苦笑)、この映画祭がハリウッドと地続きなんだということを実感しました」と山岡監督は言う。

 同賞は、アメリカ、ラテン・アメリカ、ヨーロッパ、そして日本の4地域から各1名ずつが受賞し、賞金1万米ドルと、映画完成の際にはNHKが日本国内の放送権を保証するという映像作家の発掘と支援を目的としている。過去に受賞作にはウォルター・サレス監督『セントラル・ステーション』(98)、ロドリゴ・ガルシア監督『彼女を見ればわかること』(99)、富永まい監督『ウール100%』(05)中嶋莞爾監督『クローンは故郷をめざす』(08)などがある。山岡監督は江藤有吾と共同脚本で川沿いに住む迷える人たちの人間模様を描いた『朝日ヶ丘の素晴らしき人々』を応募した。動機について山岡監督は「受賞作の森淳一監督『Laundryランドリー』(01)や呉美保監督『酒井家のしあわせ』(06)を見て、“この賞を受賞すれば商業映画を作れる”と意識していました。だけど昨年の応募締め切りに気づいたのは1ヶ月前。とても一人じゃ脚本は間に合わないと思ったんです。でもTAMA短篇映画祭などで作品を拝見し、作品の構成力に着目していた江藤さんなら1ヶ月で何とか出来るのではないかと。それで江藤さんに声を掛け、二人で脚本のアイデアを練り上げていきました」という。

04 09年度の応募者数は110人。その中から第1次の脚本審査、第2次審査の面接、そして『ヘザース/ベロニカの熱い日』のマイケル・レーマン監督と『ケープ・フィアー』の脚本家ウェズリー・ストリックが審査するファイナルへと勝ち進んで行った。意外と応募総数が少ないのは、本賞が脚本のみを審査するのではなく、映画化を実現させるまでの能力と気迫も判断材料としているからだ。そのために第1次審査では脚本のみならず過去に自身が手掛けた映像作品も提出することが条件となっている。山岡監督は渡辺真起子&山本浩司主演『ロストガール』(07)を添付。また2次審査ではやる気を証明するために、自腹で脚本のワンシーンを撮影した2分17秒の映像を用意。ファイナルの3人に残ってからも、選考委員の一人である原田眞人監督のアドバイスを得て練り直した脚本を米国で行われるファイナル審査に提出した。山岡監督は「何が何でもグランプリを獲らなきゃ意味がないと必至でした」と振り返る。

 そして日本部門のグランプリに選ばれて赴いた米国の授賞式は、渡航費と6日間の宿泊代が招待。現地では、ヨーロッパ部門で受賞したロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督と同じ別荘に宿泊した。あの映画『父、帰る』(01)でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞と新人賞をW受賞した期待の新鋭監督だ。「思わずアンドレイにサインを貰ってしまいました(苦笑)。三船敏郎のモノマネをする気さくな人でした」と山岡監督は、すっかり一映画ファンになっていたようだ。

05 しかし6日間の滞在中は、米国の配給会社などとのビジネス・ミーティングでスケジュールがギッシリ。山岡監督はパンフレットと名刺を作成し、現地に乗り込んだ。「パンフレットを作成したのは、現地でどんな人と出逢いチャンスが巡ってくるか分かりませんから、その時にすぐに渡せるようにと。でも、米国の会社が日本語による日本映画に出資するというのは難しいようですね」と厳しい現実も突きつけられた。

 帰国してからは早速、日本での製作実現に向けて奔走中だという。山岡監督は「これからが勝負」と賞に浮かれることなく、気持ちを引き締めていた。


  002

※写真は『ロストガール』
(公式サイト http://lost.girly.jp/

サンダンス・NHK国際映像作家賞
http://www.nhk.or.jp/sun-asia/

(C)2009 MOUNTAIN-CROSS All Rights Reserved.
【映画『朝日ヶ丘の素晴らしき人々』】

山岡大祐監督と江藤有吾氏との共同脚本作。川沿いの街・朝日ヶ丘で起こる迷える人々の物語を、5つの章で構成。自殺を試みるえみり、彼氏の心変わりに怯える麻里花、タクシー運転手の小谷ら、団地で暮らす人々の人間模様が描かれる。
なお、サンダンス・NHK国際映像作家賞2010の第1次審査では、山岡監督の劇場デビュー作『ロストガール』(写真右)を提出。倦怠感を抱え、すれ違いを繰り返す30代の夫婦の日々をリアルに描いた本作は、2006年のドイツ・ドレスデン国際映画祭に公式招待された。


〈サンダンス・NHK国際映像作家賞2010受賞者〉
spacer
【ヨーロッパ部門】
『イエリャ−ナ』 アンドレイ・ズビャギンツェフ(ロシア)
spacer
【ラテン・アメリカ部門】
『エリ』 アマット・エスカランテ(メキシコ)
spacer
【アメリカ部門】
『南の果ての野獣ども』 ベン・ザイトリン 共同脚本:ルーシー・アリバー
spacer
【日本部門】
『朝日ヶ丘の素晴らしき人々』 山岡大祐 共同脚本:江藤有吾


《次回予告》
Case.3
レインダンス映画祭(イギリス・ロンドン)
Raindance Film Festival
 


ページトップへarrow    


©2008 HogaHolic TRYWORKS LOGO