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スペーサーfilmfestival
TOP > セカイノ映画祭カラコンニチワ
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毎日、世界のどこかで行われている映画祭。日本で広く報道されるのはカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの世界三大映画祭ぐらいだが、邦画は昨今のジャパニーズ・ポップカルチャー・ブームの影響もあり、世界の意外な場所で熱狂的な歓迎をもって受け入れられているのだ。そんな現地の様子を、参加者自らレポートしてもらおう。
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取材・文/中山治美
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 http://www.mumbaifilmfest.com/
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 インドの観客たちに世界中の良質な映画を見せることを目的に、映画業界団体「ムンバイアカデミー」が1997年にスタートさせた国際映画祭。ムンバイは“ボリウッド”の中心地として知られる一方、最近では『スラムドッグ$ミリオネア』(08)のロケ地としてクローズアップ。さすが、米国に負けず劣らずの映画大国とあって、本映画祭の長編コンペティション部門は初監督を対象としていながら、本年度の、最優秀作品の賞金は10万米ドル(約946万円)と景気がいい。日本作品関連では、2000年の第3回大会で「現代の日本映画」特集、01年の第4回で阪本順治特集、02年の第5回大会ではフォーカス・オン・ジャパンと題した特集を組んでおり、熱い視線を送っている。だが日本からのエントリーはまだまだ少ない。狙い目だ。 ph02


〈川口浩史監督が語るムンバイ映画祭〉
「憧れのP・シュレイダー監督に自分の映画を観てもらえる。それだけで感激」

 川口浩史監督のムンバイ映画祭への道は、ホウ・シャオシェン監督とコンビを組む台湾の名カメラマン、リー・ピンビンの出会いから始まる。

 川口監督は、篠田正浩、奥田瑛二ら作品に携わった助監督出身。リーとは、彼が撮影監督を務めた行定勲監督『春の雪』(05)で出会った。当時、芥川龍之介原作の「トロッコ」をモチーフにした企画を考えていた川口監督は、作中で印象的な、緑の中をトロッコ列車が駆けていく風景を探していた。しかし、日本では理想的な場所は見つからない。そこでリーに相談すると、台湾では日本統治下時代のトロッコ列車が現役として活躍中だという。さらにもし台湾で撮影を行うなら、協力することも申し出てくれた。その約束が、3年後の08年夏に実現する。リーはホウ組のスタッフを引き連れ、監督デビューを果たす川口を全面的にサポートした。

 完成した映画『トロッコ』は、09年11月に開催された台湾金馬奨で、リー・ビンピン特集の一本として、『春の雪』や『空気人形』(09)らと共に上映された。その時、映画祭側から紹介されたのが、ムンバイ映画祭のプログラマーだった。川口監督は「その映画祭の存在を、その時初めて知りました(苦笑)。ムンバイ側が日本映画を探していたようで、それで僕の作品を紹介してくれたようです。ノミネートされた時点では迷っていたのですが、映画祭に行ったことがあるという篠田監督に相談したところ『良い映画祭だから行って来なさい』と背中を押されました」

 同行した片原朋子プロデューサー共々、初のインド。宗教による戒律がある国だけに、どんな服装を用意すればいいのか? などマナーについて在日インド領事館に問い合わせてから渡航した。イメージしていたのは『スラムドッグ$ミリオネア』の世界。しかし到着すると、街では建築ラッシュで、エネルギーに満ちあふれていた。「ただ2008年にムンバイ同時多発テロが起こった影響か、ホテルやショッピングモールなど大勢の人が集まる場所でのボディチェックは厳しかったですね。でも、治安は思っていた程良かったです」。

 上映会場はシネコン。客層は映画関係者などほぼインド人で、そこに白人がチラホラ。ボリウッド映画人が、異文化に触れる場という雰囲気だという。エリート層が多いのか、字幕も英語だけ。上映中は感情を露わに出す人が多く、上映が終わるとサリーを来たおばさんに囲まれる程の好感触だったという。

「中でも30歳代のインド人女性の言葉が印象的でした。『トロッコ』は日本統治時代を経験したお爺さんの日本に対する複雑な心情も描いているのですが、自分も英国の植民地時代の事を思い出したと。インド人にも英国に対するノスタルジーがあると言うんですね。さらに『英国に統治されていたことには様々な思いがあるけど、英国がインド産業の基盤を作ってくれたから発展したのも事実。なので映画をみながら共感する部分が多かった』と。インド人にもそんな思いがあるのかと意外な驚きでした」。

 賞は逃したが、もう一つ嬉しい出来事があった。審査員の一人に、映画『アメリカン・ジゴロ』(80)などで知られる米のポール・シュレイダー監督がいたのだ。『タクシードライバー』(76)や『レイジング・ブル』(80)の脚本も手掛けているシュレイダー監督は、川口監督が目標とする人物。「憧れの人に自分の映画を観てもらえる」。それだけで心が躍ったという。

「話す機会があったので感想を尋ねたところ『う〜ん・・・、コレエダに似てるな』と言われてガクッ!っと。それは誉め言葉として受け取りました(苦笑)。ほかに、シュレイダー監督と言えば緒形拳さんで『Mishima:A Life in Four Chapters』(85)を撮った人なので、僕は緒形さんの『長い散歩』(06)の助監督を務めたことを説明し、サインを頂いた変わりにDVDを送りました」。

 
川口浩史監督の『トロッコ』はモントリオール映画祭に出品されることが決定した

 滞在は5日間で、エコノミーの飛行機代と4ツ星クラスの宿泊費を招待してくれた。食事は「全食ほぼカレー(笑)」だそうだが、満足いく味だったという。そんなインド文化にどっぷり浸りながら、川口監督は「この街で映画を撮れないか」とロケハンすることも忘れなかった。川口監督は、監督作第2弾の『チョルラの詩』(6月12日公開)を全編韓国ロケ&韓国俳優・スタッフで行うなど海外と縁がある。

「その街に興味を持てるかどうかがポイントです。日本とムンバイがどう結びつくのか?まだアイデアは浮かんで来ないけど、ここを拠点に映画を作りたいなという気持ちにはなりました。日本は、この成長著しいインドから学ぶ事も多いと思うんです」。

 その夢が、いつか実現することを期待したい。


  『トロッコ』

シネスイッチ銀座にて公開中(順次全国公開)
http://www.torocco-movie.com/

©2009 TOROCCO LLP
川口浩史監督『トロッコ』

芥川龍之介の短篇小説『トロッコ』にインスピレーションを受けて川口監督とホアン・シ―ミンが共同で脚本を執筆。舞台を現代の台湾に置き換え、台湾人の夫を亡くした夕美子(尾野真千子)と2人の息子が、夫の遺骨を届けるために台湾の実家へ。国境や歴史を超えて、日台の家族が一つの絆で結ばれるまでを繊細に描く。日本統治下時代の名残が残る町並み見事に捕らえたリー・ピンビンの瑞々しい映像に、ヴァイオリニスト川井郁子が手掛けた音楽が見事にマッチし、観客の郷愁を誘う。



〈第11回ムンバイ映画祭出品作品〉
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2009年10月29日〜11月5日

【インターナショナル・コンペティション部門】
『トロッコ』 川口浩史監督

【ワールド・シネマ部門】
『火天の城』 田中光敏監督


〈第12回ムンバイ映画祭開催予定〉
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2010年10月21日〜10月28日
応募締め切り:2010年8月10日
詳細は下記サイトにて

http://www.mumbaifilmfest.com/


《次回予告》
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トリノ国際映画祭(イタリア)
 



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