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セカイノ映画祭カラコンニチワ
毎日、世界のどこかで行われている映画祭。日本で広く報道されるのはカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの世界三大映画祭ぐらいだが、邦画は昨今のジャパニーズ・ポップカルチャー・ブームの影響もあり、世界の意外な場所で熱狂的な歓迎をもって受け入れられているのだ。そんな現地の様子を、参加者自らレポートしてもらおう。
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取材・文/中山治美
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 http://www.torinofilmfest.org/
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 イタリアの映画産業発祥の地と言われ、国立映画博物館を要するトリノ。同じイタリアで開催されるヴェネチア国際映画祭がメジャー監督の祭典であるのに対し、トリノは若手監督の発掘に精力を注いでいる。日本作品では、'04年に井口奈己監督『犬猫』(04)が審査員特別賞、国際批評家連盟賞、最優秀脚本賞特別賞の三冠を、05年には坪川拓史監督『美式天然』(05)がグランプリと観客賞をW授賞した。08年まではイタリア映画『息子の部屋』(01)のナンニ・モレッティ監督が映画祭ディレクターを務めていたが、09年からは同『いつか来た道』(98)の大御所ジャンニ・アメリオ監督にバトンタッチ。ちょうど映画祭開催時期に、国立映画博物館とスイス・ロカルノ国際映画祭の共同プロジェクトである日本アニメの大回顧展「マンガ・インパクト」を開催していたが、映画祭でも大島渚監督の大特集を行い、専門家を招いてのシンポジウムを行うなど映画研究にも熱心で、映画産業発祥の地のプライドが感じられる。


〈女優・渡辺真起子が語るトリノ映画祭〉
「映画祭は、自分が参加した作品の行き先を見届けられるから面白い」

 監督作3本目までを対象としたインターナショナル・コンペティション部門に、映画『誰も知らない』(04)などのカメラマンとして知られる山崎裕氏の初監督作『トルソ』が選出された。09年春に行われた第33回香港国際映画祭に参加したのがきっかけで、トリノのプログラマーから出品依頼が来たという。


 しかし山崎監督は多忙のため、主演女優の渡辺真起子が代理出席の大役を任された。9月14日〜22日の滞在中、舞台挨拶に取材、映画祭ディレクターとのオフィシャルディナーにと任務をこなし、そして、映画を観まくった。「同じく『トルソ』で参加した香港国際映画祭は、商業映画しか公開されない香港において、インディペンデント映画を上映し、映画人と観客を育てていこうという狙いがあるようです。トリノもインディペンデント作品が中心だけど、より作家性が強く、芸術性の高い作品を選んでいるように感じました。新しい才能の発見だけでなく、大島渚特集のように、同世代の人たちも見逃していたような貴重な作品を上映するなど、非常に文学的な薫りがする。観客も若い方だけではなく、年配の方も多かったですね」

 渡辺ほど、海外映画祭への経験が豊富な女優もいないだろう。上記以外にも、諏訪敦彦監督『M/OTHER』(99、国際批評家連盟賞)と河瀬直美監督『殯の森』(07、審査員特別大賞)でカンヌ国際映画祭、『TAMPEN』(01)で釜山国際映画祭、『愛の予感』でスイス・ロカルノ国際映画祭(金豹賞、国際芸術映画評論連盟賞、ヤング審査員賞、ダニエル・シュミット賞)に参加している。

「でも私の場合、諏訪監督、河瀬監督、小林監督、そして山崎監督が『一緒行こう』と誘って下さったから参加出来たんですけどね」

 そう渡辺は謙遜するが、彼女の挑戦的かつ繊細な仕事ぶりが作品に力を与え、作品を映画祭へ、そして授賞へと導いていることは間違いない。


取材中の渡辺真起子
 
「映画祭に向かって作品を作っているワケじゃないけど、それでお客さんに広く観て貰えるチャンスは増えると思うんです。ロカルノの時は授賞式まで参加したんですけど、4冠は驚きました。監督たちが、遠い国の方々に受け入れられた時の感動を見届けられるのはやはり嬉しいですね。『殯の森』の時は、一足先にカンヌから帰国しなければならなく、授賞結果を聞いたのはトランジットで立ち寄ったオランダ・アムステルダム空港。同じフライトだったFILMeX映画祭のディレクター林加奈子さんと、プログラムディレクターの市山尚三さんも皆、一緒に祝福して下さった。授賞式に参加出来ない寂しさはあったけど、映画はこうして悦びを共有出来るんだなと思いました」

 
(左)映画祭カタログ&バッグ
(右)映画祭オリジナルラベルワイン
 映画祭にハマったきっかけがある。それは、プライベートで訪れた1995年の第22回オランダ・ロッテルダム国際映画祭だった。「こうやって自分たちの映画が、言葉や生活様式も違う人たちに届けられるんだと実感しました。またその年は、日本のピンク映画特集もあって廣木隆一監督や、『愛の新世界』の高橋伴明監督、映画評論家の塩田時敏さんや大久保賢一さんもいらしてた。日頃の撮影ではなかなか出会わない人たちと話をしたのが新鮮だった」


映画祭オフィシャルカー
 
 この時の出会いが09年、塩田氏がプログラミング・ディレクターを務める「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」のコンペティション部門で審査員へと繋がっている。あの入江悠監督『SR サイタマノラッパー』にグランプリを与え、快進撃を生んだ立役者の一人だ。今回のトリノでも出会いがあった。この1年間に製作された刺激的な作品を世界中から集めた「A MOVEABLE FEAST」部門に『LINE(ライン)』で参加していた小谷忠典監督だ。大島渚監督のシンポジウムを聴講していたところ、小谷監督に声掛けられたという。

「登壇者用の日本語通訳をちゃっかり聴こうと身を乗り出しながら最前列に座っていたので、さすがに私の存在に気づいたようです(苦笑)。それから小谷監督の作品を送ってもらうなど連絡を取り合ううちに、小谷監督が現在製作している『100万回生きたねこ』の著者・佐野洋子さんを軸にしたドキュメンタリー映画に参加することに。また『LINE(ライン)』公開中は、トークショーのゲストとして呼んで頂きました」

 
「マンガ・インパクト」も開催
 こうして国内外の映画祭に参加して刺激と数々の出会いを経験することで、次の仕事に向かうモチベーションにしてきたという。「映画祭は監督のもの」とよく言われるが、渡辺は俳優たちも機会があれば、積極的に参加することを勧める。

「映画祭側は、自分たちが見出した監督や俳優をずっと追いかけていたりして、久々に再会したスタッフに『君の作品は全部観ているよ』と声を掛けられて、どれだけ嬉しいか。それに、映画祭には映画産業に係わるあらゆる人たちが参加しているので、作品が上映されるために、いかに多くの人々に支えられているかが実感出来ると思います」


 

7月10日よりユーロスペースにてレイトショー公開(順次全国公開)
http://www.torso-movie.com
©2009 Torso Film Partners
『トルソ』

質素な生活を送る独身OLヒロコ(渡辺)には、密かな楽しみがあった。顔も手足もない男性型の人形“トルソ”をまるで恋人のように慈しむ時間。だがそこに、父親の違う妹ミナ(安藤サクラ)が、同棲していた恋人の暴力に耐えかねて転がり込んで来た。過去に確執のあったミナの出現はヒロコの心をかき乱し、やがて現実逃避していたヒロコの心の闇が見えてくる―。



〈第27回トリノ映画祭出品作〉
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2009年9月12日〜21日開催

【THE CULT AWARD賞受賞(最優秀ドキュメンタリー賞)】賞金2万ユーロ
『LINE(ライン)』小谷忠典監督 

【インターナショナル・コンペティション部門】
『トルソ』 山崎裕監督

【FESTA MOBILE部門】
『PINK SUBARU(ピンクスバル)』小川和也監督(イタリア・日本合作)
『祖母』河村勇樹監督(日本・フランス合作)

【WAVE部門】
『七夜待 ななよまち』河堕照監督
『画ニメ:鳥の歌』天野喜孝監督
『画ニメ:Hightway Jenny』福士昌明監督
『H.P. ラヴクラフトのダニッチ・ホラー その他の物語』 品川亮監督
『赤色エレジー』林静一監督

【大島渚特集】
●長編映画
『愛と希望の街』('59)、『愛と希望の街』('59)、『青春残酷物語』('60)、『太陽の墓場』('60)、『日本の夜と霧』('60)、『飼育』('61)、『天草四郎時貞』('62)、『悦楽』('65)、『白昼の通り魔』('66)、『忍者武芸帳』('67)、『日本春歌考』('67)、『無理心中 日本の夏』('67)『絞死刑』('68)、『帰って来たヨッパライ』('68)、『新宿泥棒日記』('69)、『少年』('69)、『東京戦争戦後秘話』('70)、『儀式』('71)、『夏の妹』('72)、『愛のコリーダ』('76)、『愛の亡霊』('78)、『戦場のメリークリスマス』('83)、『マックス、モン・アムール』('87)、『御法度』('99)

●ドキュメンタリー
「ノンフィクション劇場 氷の中の青春」('62、TV)、「ノンフィクション劇場 忘れられた皇軍」('63、TV)、「ノンフィクション劇場 青春の碑」('64、TV)、「ノンフィクション劇場 ある国鉄乗務員 四・一七スト中止前後」('64、TV)、「ノンフィクション劇場 反骨の砦 蜂の巣城の記録」('64)、「ヨンボギの日記」('65、TV)、「すばらしい世界旅行 南アフリカの旅 黒人国家誕生」('66、TV)、「20世紀アワー 大東亜戦争」('68、TV)、すばらしい世界旅行 ジョイ!バングラ!」('72、TV)、「生きている人間旅行 ごぜ・盲目の女旅芸人」('72、TV)、「火曜スペシャル 巨人軍」('72、TV)、「生きている人間旅行 ベンガルの父・ラーマン」('73、TV)、「知られざる世界 生きている日本海海戦」('75、TV)、「知られざる世界 生きている海の墓標 トラックの海底をゆく」('76、TV)、「知られざる世界 生きている玉砕の島 サイパンの海底をゆく」('76、TV)、「スペシャル番組 伝記・毛沢東」('76、TV)、「KYOTO、MY MOTHER'S PLACE」('91、BBC制作)

●企業広告映画
『明日の太陽』('59)、『小さな冒険旅行』('63)

●大島渚について
「二人の世界 大島渚と朝倉摂」('84、TV)、『わが映画人生 黒澤明監督』('93)、「映画誕生100年特別記念 日本映画の百年」('94、英国制作)、「RUSHES FROM A DIALOGUE BETWEEN NAGISA OSHIMA AND ALEKSANDR SOKUROV」('96、ロシア制作)、「私の第一作 大島渚」('97、TV)、「大島渚 映画と生きる」('99、TV)


〈第28回トリノ映画祭開催予定〉
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2010年11月26日〜12月4日
コンペティション部門エントリー締め切り:2010年9月1日
詳細は、http://www.torinofilmfest.org/


《次回予告》
Case.7
メキシコ国際映画祭(メキシコ)
 

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