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セカイノ映画祭カラコンニチワ
毎日、世界のどこかで行われている映画祭。日本で広く報道されるのはカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの世界三大映画祭ぐらいだが、邦画は昨今のジャパニーズ・ポップカルチャー・ブームの影響もあり、世界の意外な場所で熱狂的な歓迎をもって受け入れられているのだ。そんな現地の様子を、参加者自らレポートしてもらおう。
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取材・文/中山治美
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 http://www.ukzn.ac.za/cca/Durban_International_Film_Festival.htm
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 南アフリカ共和国の高級リゾート地で開催される、アフリカ最古の映画祭。サッカーW杯開催に、映画『弟9地区』の世界的ヒットで活気づくアフリカ諸国の若手の育成とインディペンデント映画を応援しており、2008年からはベルリン国際映画祭と提携しながら、5日間のワークショップを行う「タレント・キャンパス」や、ロッテルダム国際映画祭と提携をして企画・脚本を支援する「フィルマート」を実施。また、プロデューサー・フォーラムなどアフリカ諸国と諸外国の映画人の交流も積極的に行っている。今年は、イングマール・ベルイマン監督を中心としたスウェーデン映画特集も行われた。同時期にはサーフィン映画を集めた映画祭「wavescapes」もビーチに大スクリーンを設置した特設会場で開催と、オリジナリティを出している。


〈映画祭コーディネーター・相原裕美が語るダーバン国際映画祭〉
「サッカーW杯効果で日本に対する親近感も沸いたので、
 新たなマーケット開拓の余地もあるのでは」

 
ダーバンの繁華街
 相原裕美さんは、1977年に創設された若手映画監督の登竜門「ぴあフィルムフェスティバル」運営に係わって以来、インディペンデント映画の世界に身を置いて約25年になる。塚本晋也監督『鉄男II/The Body Hammer』(92)や浅野忠信主演のタイ・日本・フランス・オランダ・シンガポール合作の映画『地球で最後のふたり』(03)のプロデューサーとして活躍する一方で、一般社団法人ジャパン・イメージ・カウンシル(JAPIC)に所属する現在は、ロッテルダム、トロント、ドバイなどの各映画祭でのコーディネーターとして、優れた日本映画、そして映画人を広く海外に知らしめるべく手腕を発揮している。今回、ダーバン映画祭に参加したのは、コンペティション部門の審査員として、ドイツのプロデューサー、クリストフ・トケ(ダルデンヌ兄弟『ロルナの祈り』など)、南アの脚本家であり大学教授であるベッキー・ぺイーターソンと共に大役を任された。相原さんが国際映画祭で審査員を務めるのは、2009年の韓国・釜山国際映画祭のNetpack賞に続き、2度目だ。


授賞式の様子
 
「ロッテルダム国際映画祭の元ディレクターのサイモン・フィールドに、ドバイ国際映画祭のアジア&アフリカ・セクションのプログラミングを担当しているナシェン・ムードリーを紹介されたのがきっかけです。その繋がりでドバイで日本作品のコーディネーターを任されることになったのですが、そのナションが実はダーバン国際映画祭のマネージャーも務めているので、その縁で審査員を引き受けました。当初は、イラン政府に拘束された、ジェファール・パナヒ監督も参加する予定だったようです」

 
上映会場内
 映画祭を回っていると、同じ顔ぶれに度々遭遇する。彼らの人脈の輪がいかに国際映画祭を機能させているかが分かるエピソードだが、作り手にとっても参加する意義は大きい。今回、コンペティション部門には佐向大監督『ランニング・オブ・エンプティ』が選出さ
れたのだが、それはダーバン国際映画祭のプログラマーが08年のドバイ国際映画祭で佐向監督が脚本を務めた『休暇』(門井肇監督)を見たのがきっかけだという。『休暇』を高評価したプログラマーは佐向監督の新作に着目。とりわけ、同作品における人物描写の描き方と、他の日本映画ではなかなか見られない工業地帯を舞台にした風景が気に入り、コンペに推薦したという。


独・南ア合作『LIFE、ABOVE ALL』の舞台挨拶。写真中央の女性が、最優秀女優賞を受賞したKhomotso Manyaka.
 

「ダーバン国際映画祭31回の歴史において、佐向監督が初の日本人ゲストだったそうです(笑)。これまでも日本作品を上映したことはあったのですが(2005年に『千と千尋の神隠し』が最優秀作品賞を受賞)、距離的な問題もあってアジアの参加者はいなかったとか。治安の問題もあるでしょうね。サッカーW杯期間中はどの道にも警察官が立っていたそうだけど、夜は人気もなく危ない雰囲気。映画祭側からも『1人で歩かないこと』、

『街中ではカメラを出さないこと』などの注意がありました。でも映画祭自体はボランティアスタッフのホスピタリティーが非常に良く、プレスカードをぶら下げるネックホルダーも、受賞者に贈られるタスキも、ビーズを用いた手作りなんですよ。映画祭会場となるシネコンでは、毎夜パーティーも行われていましたね」

 
現地のトヨタ自動車駐在員が紹介してくれた、相原裕美さん絶賛のエチオピア料理

 さて、コンペティション部門の作品は20本。その中には、本年度カンヌ国際映画祭コンペ部門に選ばれたチャド出身のマハマット=サレ・ハルーン監督『A Screaming Man』や、相原さんが審査員を務めた釜山国際映画祭でNetpack賞を受賞している韓国のパク・チャンオク監督『Paju』などすでに他の映画祭で話題になった作品も多数含まれている。「でも、メジャー作品ではない、個性的でバラエティに富んだ作品ばかりでした」

 そんな中、相原さんたちが全員一致でBest 1st film(新人監督賞)に選んだのが、インドのAnusha Rizvi監督『PEEPLI LIVE』だ。


映画祭バッグ&カタログ
プレスパスのストラップは手作りビーズ
 

「今年のサンダンス映画祭やベルリン国際映画祭でも話題になった作品です。政府からの見舞金目当てに自殺宣言をした貧しい一家の話という、政治的な内容も含まれた題材をブラックコメディに仕上げた、監督の手腕を評価しました。また観客賞に輝き、最優秀女優賞を受賞したオリバー・シュミッツ監督『LIFE、ABOVE ALL』(独・南ア合作)は南ア版”おしん”といった感じで、これでもか!これでもか!と襲う試練に、果敢に1人立ち向かうヒロインのKhomotso Manyakaちゃんの達者な演技に小林綾子の姿が重なりました。ほかにも、今年の釜山国際映画祭に出品される『A Smal1 Town Called Descent』は南アの強面俳優が競演するギャングと無頼派な警官たちのアクション。腐敗した南アの警察をユーモアを効かせて皮肉っていて面白かったですね」

 そんな世界の映画に精通している相原さんから見て、審査対象となった『ランニング・オブ・エンプティ』を含めて、現在の日本映画はどう見えるのかを尋ねて見た。

 
ボランティアスタッフと一緒に

「他国の作品と比べるとビジュアル的なインパクトはありますが、映画そのものが持つパワーが足りないですね。他国の作品は社会と個人の関係性を描いている事が多いんですけど、日本は生活環境が豊かな事もあり、社会に対する強烈なメッセージがない。それがパワーを感じない理由であり、また作品が幼く見えてしまうんですね。今の日本社会が成熟していないから、そうした現実の厳しさが感じられない作品が生み出されてしまうのかもしれませんが」

 相原さんは今回の南アフリカで得た人脈と体験を生かすべく、次なるプランを考えているという。

「現地にはトヨタ自動車の駐在員も多数いますし、サッカーW杯効果で日本に対する親近感も沸いたと思います。なので日本映画にとって、現地のマーケットを開拓していく余地はかなりあると思いました。今回、『カムイ外伝』を上映したのですが、やはり現地の方々はアクション映画が大好きなので、とてもウケていたようです。逆に日本に優れたアフリカ作品を紹介し、日・南アの交流に広がればいいですね。実はすでに欧州のプロデューサーたちはアフリカに目を向けています。

 今年のロッテルダム国際映画祭では世界の新鋭監督がアフリカで撮影した作品を集めたアフリカ特集が組まれましたが、現在はアフリカの映画作家たちにアジア中に放ち、映画製作を行うプロジェクトが進んでいます。これからも中東も含め、アフリカ諸国の映画人との交流を深めて行きたいと思ってます」


〈第31回ダーバン国際映画祭出品作〉
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2010年7月22日〜8月1日開催

【長編コンペティション部門】
『ランニング・オン・エンプティ』佐向大監督

【パノラマ・フューチャー部門】
『カムイ外伝』 崔洋一監督

〈第32回ダーバン国際映画祭開催予定〉
2011年7月21日〜31日


《次回予告》
Case.9
ロカルノ国際映画祭(スイス)
 


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