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セカイノ映画祭カラコンニチワ
毎日、世界のどこかで行われている映画祭。日本で広く報道されるのはカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの世界三大映画祭ぐらいだが、邦画は昨今のジャパニーズ・ポップカルチャー・ブームの影響もあり、世界の意外な場所で熱狂的な歓迎をもって受け入れられているのだ。そんな現地の様子を、参加者自らレポートしてもらおう。
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取材・文/中山治美
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 http://www.pardo.ch/jahia/Jahia/home/lang/en
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 イタリアとスイスに跨るマッジョーレ湖畔の高級リゾート地で1946年にスタート。今年で第68回を迎えたヴェネチア、同64回大会のカンヌに匹敵する歴史ある映画祭だ。目玉はピアッツァ・グランデに8000席が用意される野外劇場で、夕涼みを楽しみながら映画を観賞する贅沢な時間そのものが、スイスの夏の風物詩となっている。しかしピックアップする作品は大スクリーンよりアート系劇場での上映が似合うような、アーティスティックな作品が中心。’70年には実相寺昭雄の初長編作『無常』、‘88年には韓国映画『達磨はなぜ東へ行ったのか』(ペ・ヨンギュン監督)が最高賞の金豹賞を受賞している。最近では、07年に小林政広監督『愛の予感』が金豹賞、国際芸術映画評論連盟賞、ヤング審査員賞、ダニエル・シュミット賞の4冠を受賞して話題となった。また2009年には「マンガ・インパクト」と題して国際映画祭では異例の日本のマンガにスポットを当てた大回顧展を開催し、多くの観客を集めた。


〈山内崇寛監督が語るロカルノ国際映画祭〉
「外国語がほとんど出来ないため、突っ込んだ会話が出来なかった事が悔しかった」

 
ロカルノの中央広場「ピアッツァ・グランデ」にて山内崇寛監督
 山内崇寛監督は今年、「ぴあフィルムフェスティバル」のコンペティション部門「PFFアワード2010」に『21世紀』がノミネートされた。PFFでは賞を逃したが、直後にスイスで行われたロカルノ国際映画祭の、新鋭監督を発掘する「フィルムメーカーズ・オブ・ザ・プレゼント・コンペティション部門」にも選出されるという栄誉を得た。スタッフ・出演者はノー・ギャラの製作費弱冠40万円の作品で、いきなりの国際映画祭デビューだ。


夜の「ピアッツァ・グランデ」
 

「ロカルノの選考スタッフがPFFと交流があるらしく、今年の入選作を観賞し、そして幸運にも『21世紀』が選ばれたようです。出品にあたっては、上映テープを日本のNTSC方式からPAL方式に変換したり、英語字幕を付けなければならないなど、国際舞台に不慣れな自主映画製作者には関門が多々ありましたが、PFFと(公益財団法人)ユニジャパンの協力で、何とかロカルノまで辿り着くことが出来ました」


 同映画祭は新鋭監督の発掘にも力を入れているとはいえ、行われている場所は「これぞ、ヨーロッパ!」と思わせる絵に描いたような避暑地。ゆえに出品することさえ萎縮してしまう人も多いだろう。しかし、参加者の多くが口にするのは確かに物価は他の欧州に比べてやや高めだが、映画祭にやってくるのはバカンス中のファミリーが中心で穏やかムード。同じリゾート地で開催しているカンヌやヴェネチアとは違って忙しく駆け回るバイヤーやプレスもおらず、純粋に映画祭を楽しめると言われている。

 
『21世紀』の上映会場となった「ラ・サラ」と「アルトラ・サラ」にて

「金豹賞の名前にもなっている通り、映画祭全体が豹柄に彩られて見た目はかなりアバンギャルドな雰囲気なのですが、スタッフや町並みから歴史ある映画祭らしい威厳さを感じました。スタッフによると、ロカルノは他の映画祭と異なりレッドカーペットやパーティーに比重を置くのではなく、映画そのものを発見することに焦点を当てているそうで、街で遭遇する監督や俳優たちも皆、気さくで気取らない方たちばかり。特に夜のピアッツァ・グランデの上映は深夜まで良い雰囲気で、映画の余韻に浸ることが出来ましたね」

 もちろん『21世紀』の上映は野外劇場ではなく、やや小さめのラ・サラ(960席)、アルトラ・サラ(500席)、シネマ・リアルト2(104席)での3回の上映。無名の新人の作品ながら、毎回、劇場の7〜8割が観客で埋まったという。


『21世紀』の上映会場
 

「国際映画祭参加者のウワサ通り、途中退席など当たり前で冷や冷やしっぱなしでしたが、日本ではウケなかった場所で笑いが起こったのは嬉しかったですね。今回の映画は幽霊に関する話なのに前半は全くそれらしきシーンがなく、ただ壁だけが写し出されている・・・という感じで、登場人物自身がそれを指摘する場面があるのですが、その時に観客の皆さんから同意の突っ込みと歓声が沸き起こって、有り難くて痛み入りました。また今回の映画はジャン=リュック・ゴダール監督やジム・ジャームッシュ監督への単純な憧れや欲望から真似をしている部分が多々あるのですが、それを否定するのではなく肯定的に受け取ってくれたんです。理由を探せば、恐らく僕が両監督を物凄く好きな事が作品を通して伝わったからではないか?と思います」

 
映画祭バッグとカタログ

 しかし反省すべき点もあるという。上映後に観客とのQ&Aが用意されていたのだが、山内監督は語学が堪能ではないために通訳を介したやり取りに。そのため、どうしても自分の気持ちがダイレクトに伝わらない歯がゆさや、さらに突っ込んだ会話が出来なかったと振り返る。

「でも通訳さんを通して、映画祭ディレクターであるオリヴィエ・ペールさんから『君の作品は今年もっとも挑戦的な作品だ。困難な道のりだろうが、これからも刺激的な作品を作り続けて欲しい』との言葉を頂きました。お世辞だろうが何だろうが、物凄い励みになりましたね。また今回の映画祭ではストローブ=ユイレ特集を行っていたのですが、短篇『おお至高の光』(原題『O somma luce』)が次回作に繋がる戦闘意欲の源となりました」

 山内監督は現在、故郷・金沢を拠点にアルバイトやフリーの映像制作の仕事をしつつ作品を作り続けている。彼の活躍は、同じように地方で活動を続けている作家たちへの大きな励みとなりそうだ。



『21世紀』

 
幼い時に不幸な事故で父親と兄を亡くした少女が、以来、幻影に取り憑かれていく様を詩的に描いた60分の作品。主人公のバックボーンを断片的に、ヒントのように作品に散りばめるという映画的文法を破壊した実験映画の要素がかなり強く、ぴあフィルムフェスティバルでも観客に混乱と戸惑いを与えて論議を醸し出した。言い換えれば観る人の感性次第で全く印象が異なるという、人間の創造力を刺激する一作。


〈第63回ロカルノ国際映画祭出品作〉
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2010年8月4日〜14日開催

●特別賞
『プラットホーム』(香港・中国・日本・フランス合作) ジャ・ジャンクー監督

●スペシャル・メンション受賞
『Aadrdvark(土豚)』(米国・アルゼンチン合作) Kitao sakurai監督 

【フィルムメーカーズ・オブ・ザ・プレゼント・コンペティション部門】
『21世紀』 山内崇寛監督

〈第64回ロカルノ国際映画祭開催予定〉
2011年8月3日〜13日
オンラインでの出品申請は2011年より開始予定

《次回予告》
Case.10
インパンダ・ショートフィルム・フェスティバル(香港)
 


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