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セカイノ映画祭カラコンニチワ
毎日、世界のどこかで行われている映画祭。日本で広く報道されるのはカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの世界三大映画祭ぐらいだが、邦画は昨今のジャパニーズ・ポップカルチャー・ブームの影響もあり、世界の意外な場所で熱狂的な歓迎をもって受け入れられているのだ。そんな現地の様子を、参加者自らレポートしてもらおう。
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取材・文/中山治美
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 http://www.indpanda.com/
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 2005年7月から始まった、香港初の短篇映画に絞った国際映画祭。映画祭の名前は、インディペンデント+パンダの造語で、自主製作の非常にレアな作品を紹介するという意味が込められている。創設は、映画批評家のジョナサン・ハンと新聞編集者のヘンリー・チャンという映画を愛するたった2人の情熱によるもの。一つの会場で、スケジュールもかなり変則的だが、気骨ある2人が選んだプログラムはなかなかの充実ぶり。その年の米アカデミー賞短篇部門ノミネート作から、カンヌ、ベルリン、ロッテルダム、サンダンスなど主要映画祭で上映された作品、子ども向けと子ども向けじゃないアニメ、特集上映(今年はマレーシア出身監督と、シンガポールのロイストン・タン監督をフィーチャー)など、上映作品は130本以上。昨今の短篇界を賑わしている話題作と注目の新鋭監督がコンパクトにまとめられている。今年6月からは、長編の自主作品を集めた映画祭「インディベア国際映画祭」もスタートさせた。


〈エドモンド・楊監督が語るインディパンダ国際短篇映画祭〉
「2人の情熱ある男たちによって運営されている映画祭。
 もっと多くの人に知ってもらいたい」

 
シンガポールの監督たちと一緒に。中央がマイケル・ツァイ監督、右端がウェスリー・レオン・アルーズー監督
 カンヌで、ヴェネチアで、東京国際映画祭で! 世界の主要な映画祭をチェックすると、彼の名前がそこにある。'84年にシンガポールで生まれたマレーシア人、エドモンド・楊監督。今秋まで早稲田大学大学院国際情報通信研究科の安藤紘平研究室に所属していた留学生だ。卒業後も日本に残り、映像作家として短篇やプロデュース作など作品を製作しては映画祭に出品し、世界中を飛び回っている。

 その彼が今夏、短篇『白い花』('10)を引っさげて向かったのは、今年で第6回とまだ歴史の浅い香港・インディパンダ国際短篇映画祭。今年4月15日〜24日に母国で行われた第23回シンガポール国際映画祭国際短篇部門に『金魚』('09)で参加した際、インディパンダ国際短篇映画祭のディレクターに会ったのが参加するきっかけになったという。


短編『金魚』で参加した2009年ヴェネチア国際映画祭で板垣麻衣子プロデューサーと
 
 「コンペティションもないシンプルな映画祭で、映画祭側が招待してくれたのも3日間の宿泊代のみです。それでもセレクションは素晴らしいし、主催者のジョナサンとヘンリーは毎日、私や他の監督たちをランチか夕食に誘ってくれ、こぢんまりしているけど非常に温かい映画祭でした。もっと多くの人に、この映画祭の存在を知ってもらいたい。貴重な経験が出来ますよ」

 楊監督は商業デビューこそ果たしていないものの、すでに目覚ましい実績と経験を持つ。地元の高校卒業後にオーストリア・パースにあるマードック大学に留学。同大ではマーケティングを専攻していたが、かねてから興味のあった映画の道に進むことを決意。日本の文部科学省奨学金留学生制度を利用して、08年9月から早稲田大学大学院に留学した。

 
2010年カンヌ国際映画祭で、『タイガー・ファクトリー』のウー・ミンジン監督と

 「父親が音楽プロデューサーで母が元歌手(威舜琴。現在は出版社社長)とクリエイティブな環境で育った影響で、昔から日本文化に触れていました。文学なら川端康成に谷崎潤一郎、芥川龍之介。映画なら岩井俊二監督に宮崎駿監督、是枝裕和監督たちの作品が好きですね。もっともそのほとんどは海賊版で観たのですが(苦笑)。何より、日本映画には歴史があります。それで日本を留学先に選びました。東京藝術大学大学院映像研究科も考えたのですが、日本語必須が条件だったので、英語でもOKだった早稲田大学に決めました」


釜山映画祭パビリオン
 

 本格的に映画製作を始めたのは、留学する数ヶ月前の'08年から。初の短篇『CHICKEN RICE MYSTERY』('08)がいきなりドバイ国際映画祭短篇コンペティション部門に選出され、2作目の『イメージのはかなさ』('09)は第6回CON-CANムービーフェスティバルでグランプリを受賞。初の日本語作品で、川端康成の小説「雪国」と「金糸雀(カナリヤ)」にインスパイアされて製作した『金魚』がヴェネチア国際映画祭短篇コンペティション部門選出などなど、映画祭参加歴&受賞歴を挙げたらキリがない。その一方で07年には、マレーシアのウー・ミンジン監督が経営する「グリーンライト・ピクチャーズ」に入社し、プロデュース業にも着手。本年度のカンヌ国際映画祭監督週間部門と東京国際映画祭アジアの風で上映されたウー監督『タイガー・ファクトリー』('10)は、楊監督のプロデュース作品。東京国際では、その『タイガー〜』の後日談を描いた楊監督の短篇『inhalation』も同時上映された。ちなみに『inhalation』も今年の釜山国際映画祭(10月7日〜15日)でベストアジア短篇映画賞を受賞した。

 「釜山国際映画祭には昨年も参加したのですが、その時はパーティー三昧で疲れてしまって、映画を一本しか観られなかったんです(苦笑)。でも今年は自分の体調や観たい作品のスケジュールを考え、時間をコントロール出来るようになりました」

 
釜山国際映画祭で鳩山幸夫人と

 全部の映画祭に参加したワケではないが、出品するだけでも資金は必要だ。参加するとなれば、ほとんどの映画祭は宿泊費のみ招待で、渡航費は自腹となる。そんな彼の生活を支えているのは両親のサポートが大きい。もともと日本以外のアジアの映画監督は、高等教育を受けられるような裕福な家庭で育った人たちが多い。楊監督はその典型と言えるだろう。また留学時代は政府から支給される月15万円の奨学金を生活資金にし、映画製作は大学などの補助を受けるなど、公的&民間の支援を巧みに活用している。'09年にはベルリン国際映画祭が行っている若手映像作家向けの国際サミット「タレントキャンパス」に参加。これも宿泊費と渡航費の一部を主催者側が負担してくれるプロジェクトだ。「もし製作資金がなければ、マレーシアに帰って撮影すれば、短篇なら6万円以下で作れますから」と、逞しい。


短編『金魚』では、2010年スキップシティ 国際D−シネマ映画祭にも参加
 

 そして楊監督は現在、初の長編作品の脚本執筆に取りかかっているという。

 「マレーシアと日本を舞台にした作品を考えています」

 早速、イタリア・トリノ映画祭(11月26日〜12月4日)で同時開催された脚本のワークショップ「トリノ・ラボ」に参加し、筆に磨きをかけてきたようだ。この行動力、恐るべし。






 
『INHALATION』は2010年釜山映画祭でベストアジア短編賞を受賞!
『exhalation』

エドモンド楊監督の最新短篇。同級生が交通事故で死亡したことをきっかけに、地元で久々に再会した女友達2人(篠原ともえ、杉野希紀)。一夜を語り明かすうちに、2人にまつわるある因縁が明らかになる――。モノクロとカラーを駆使した映像が美しい21分の作品。第7回ドバイ国際映画祭アジア・アフリア短篇部門(12月12日〜19日)、第40回ロッテルダム国際映画祭正式出品作品。


〈第6回インディパンダ国際短篇映画祭〉
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 2010年8月20日〜9月9日

●特別賞
『プラットホーム』(香港・中国・日本・フランス合作) ジャ・ジャンクー監督

●スペシャル・メンション受賞
『Aadrdvark(土豚)』(米国・アルゼンチン合作) Kitao sakurai監督 

【フィルムメーカーズ・オブ・ザ・プレゼント・コンペティション部門】
『21世紀』 山内崇寛監督

〈第7回インディパンダ国際短篇映画祭開催予定〉
※未定(公式HP http://www.indpanda.com/ などで確認を)

《次回予告》
Case.11
釜山国際映画祭(韓国)
 


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