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セカイノ映画祭カラコンニチワ
毎日、世界のどこかで行われている映画祭。日本で広く報道されるのはカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの世界三大映画祭ぐらいだが、邦画は昨今のジャパニーズ・ポップカルチャー・ブームの影響もあり、世界の意外な場所で熱狂的な歓迎をもって受け入れられているのだ。そんな現地の様子を、参加者自らレポートしてもらおう。
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取材・文/中山治美
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 http://tiff.net/
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 1976年に世界中の優れた映画を紹介するイベント“Festival of Festivals”の名称でスタート。1995年に現在のトロント国際映画祭となり、今や北米最大の映画祭として会期中50万人の人々が集まる。コンペティションは、カナダの初監督作を集めた「カナダ・ファースト」のみで、いち早く観客の反応を知るためのショーケースやビジネスの場としての役割を担っている。特に日本映画にとっては、北米マーケットに売り込む、重要な拠点となっている。また、昨今話題になっているのがピープルズ・チョイス・アワード(観客賞)の行方。2008年の『スラムドッグ$ミリオネア』、2009年の『プレシャス』、2010年の『英国王のスピーチ』といずれも、その年の米国アカデミー賞を賑わす作品が選ばれている。2003年には北野武監督『座頭市』が受賞している。


〈サウンドデザイナー森永泰弘が語るトロント国際映画祭〉
「映画祭は出会いの場。映画人同士、共有出来るものがある」

 
昨年完成した映画祭の新しい会場Bell Lightbox
 森永泰弘は現在、30才。すでに映画の音響監督を務めるだけでなく、文化庁からの委託事業の一環として世界各国の著名な研究者やアーティストを招聘した国際会議やコンサートの開催、世界最大級の家具見本市「イタリア国際見本市MILANO SALONE2010」ではSONY社の新製品展示のサウンドデザインも手掛け、その活動は単に映画のみに止まらず、世界でも堂々と活躍している。



森永泰弘


クリス・チョン・チャン・フィ監督
 
 今回のトロント国際映画祭との関わり合いも特別だ。“Cinema meets the visual”をテーマに美術館やギャラリーなど市内各所でビジュアルアートのイベントを行うFuture Project部門での参加で、タイのクリス・チョン・チャン・フィ監督と共に『HEAVENHELL』と題したインスタレーションを行った。これは、黒澤明監督『天国と地獄』からインスピレーションを得たもので、クリス・チョン監督が作品の舞台となった’60年代の横浜・黄金町を再現したモノクロ映像を制作。そこに森永が、『天国と地獄』に使用された音源などを活用し、映像から聞こえてくるであろう街のざわめきやノイズを重ね合わせて、あたかも当時の黄金町にタイムスリップしたかのように体感する映像に挑んだユニークな試みだ。

 ヨコハマ国際映像祭2009でも発表しており、この時は黄金町にある元飲食店を利用したスタジオが会場だった。トロントでは美術館の広い空間を活用し、6面のスクリーンに音響もバージョンアップしている。

 
『HEAVENHELL』
「トロント国際映画祭には、同じくクリス・チョン監督の短篇『Block B』が08年に出品した時(映画はベスト・カナディアン・ショート・フィルム・アワードを受賞)、今回、僕らを招待してくれたプログラマーのアンドレア・ピカートさんと出逢い、彼女の家に宿泊もさせて頂いたんです。その彼女に、翌年の09年、トロントの音楽フェスティバルに招待されて渡加した時に再会したんです。そこで『HEAVENHELL』の話をしたら、“ぜひ映画祭でもやりましょう”と提案してくれて今回のインスタレーションへと繋がりました。開催3日前に現地に飛んで準備し、わずか4日間の滞在だったのですが、サウンドが全面に出るインスタレーションだから会場によって随分印象が変わるなと思いましたね。また監督でなくとも、こうした映像を使ったアートやインスタレーションで映画祭に係わることができる。映画祭の新しい変化を感じました。ただ、滞在中は39度の高熱を出していて、正直辛かったのも事実ですが」


ゲストの憩いの場


マーケットではユニジャパンとKOFIC(韓国映画振興委員会)が共同でAFINデスクを出展
 
 映画祭と言えば監督や俳優たちの晴れ舞台と言ったイメージが強く、森永のような技術者は参加する資格すらないのでは?と思われがちだ。だが映画祭は、映画人に広く門戸を開けている。森永は積極的にその門を叩き、己の道を切り開いてきた。

 最初に参加したのは2008年の釜山国際映画祭と東西大学が主催する若手映像作家育成プロジェクト「アジアン・フィルム・アカデミー」(AFA)。これは毎年、世界の名だたる著名監督が講師を務め、彼らの指導のもとワークショップや短篇映画製作に挑む17日間のプログラムだ。森永はここでクリス・チョン監督と出会う。森永はクリス・チョン監督の『Block B』に続き、長編『KARAOKE』(09)のサウンドデザインを担当。そして『KARAOKE』は2009年のカンヌ国際映画祭監督週間部門に出品され、森永は頑張った“ご褒美”としてクリス・チョン監督のご厚意でカンヌに招待してもらった。そこでまた、一つの出逢いがあった。同じく監督週間に参加していたシンガポールのホー・ツーニェン監督に声を掛けられたのだ。そしてホー監督の43分の無声映画『EARTH』に森永がライブで音を付けるパフォーマンスが2009年のヴェネチア国際映画祭で行われたのだ。AFAの目的の一つに映画人同士のネットワーク作りがあるが、まさにそこから始まった人と人の輪が森永をカンヌへ、ヴェネチアへと運んで行った。

 
若手映像作家育成プロジェクト「アジアン・フィルム・アカデミー」(AFA)にて
「映画祭は出逢いの場だと思いましたね。カンヌで知り合ったツーニェン監督とは『どんな音楽が好き?』みたいな会話から始まって、好きなミュージシャンの話題で意気投合したことが一緒に仕事をするきっかけです。それに同じ映画人同士、自分たちを取り巻く環境について共通の問題意識を持っているから、そこから『じゃ、今度こんな事をやってみよう』と話が広がっていくんですよね」



『EARTH』
 
 アジアの監督たちとの仕事で触発された森永は、現在、アジア諸国での芸術・学術の研究を行う人材をサポートする「日本財団アジア・フェローシップ(APIフェローシップ)」を利用してマレーシアに滞在し、フィールドレコーディングをテーマにさらなる音響表現の研究に励んでいる。

「映画って広く万人に向けられた映像表現だと思うんです。だからその映画を使って、『HEAVENHELL』のようにまた新しい“遊び”が出来たらいいなと思ってます」


 
(C)2011『恋の罪』製作委員会
『恋の罪』

森永泰弘が音楽監督を務めた、園子温監督の最新作。21世紀直前に東京・渋谷の円山町で起こった事件をモチーフに、刑事役の水野美紀、大学助教授役の冨樫真、主婦役の神楽坂恵という3人の愛と狂気、そして性を生々しく描き出す。2011年公開。

『恋の罪』公式サイト
http://www.koi-tumi.com/



〈第35回トロント国際映画祭〉
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 2010年9月10日〜9月19日

【Real to Reel】
『ANPO』リンダ・ホーグランド監督
『玄牝』河瀬直美監督

【Special Presentation】
『ノルウェイの森』トラン・アン・ユン監督

【Wavelenghs】
『Tokyo−Ebisu』西川智也監督
『ランドスケープ、セミサラウンド』園田枝里子監督

【Vanguard】
『冷たい熱帯魚』園子温監督
『告白』中島哲也監督
〈Masters〉
『十三人の刺客』三池崇史監督

【Future Project】
「HEAVENHELL」クリス・チョン・チャン・フイ監督+森永泰弘

※第36回トロント国際映画祭は2011年9月8日〜18日開催


《次回予告》
Case.13
ローマ国際映画祭(イタリア)
 


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