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セカイノ映画祭カラコンニチワ
毎日、世界のどこかで行われている映画祭。日本で広く報道されるのはカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの世界三大映画祭ぐらいだが、邦画は昨今のジャパニーズ・ポップカルチャー・ブームの影響もあり、世界の意外な場所で熱狂的な歓迎をもって受け入れられているのだ。そんな現地の様子を、参加者自らレポートしてもらおう。
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取材・文/中山治美
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 http://www.romacinemafest.it/ecm/web/fcr/online/home

映画『ローマの休日』でお馴染みのスペイン階段
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 ヴェネチア国際映画祭に対抗して2006年からスタートした国際映画祭。第1回はライバル心をむき出しにヴェネチアから1ヶ月後の10月中旬に開催し、マーティン・スコセッシ監督やレオナルド・ディカプリオなどを招待し、ヴェネチアにはないマーケットに重点を置いて派手にアピール。しかし、やはり実績あるヴェネチア直後では良質な作品が集まらないことから開催時期を10月末にずらしたり、ヴェネチアからスタッフを引っ張って来たりと試行錯誤している。そんな中、特色は、毎年一つの国に焦点を当てるフォーカス部門。第5回は日本をクローズアップし、黒澤明監督のスクリプターを務めた野上照代さんを招いての討論会や、写真家・蜷川実花の写真展、スタジオジブリのレトロスペクティブなどが行われた。しかし第5回大会の昨年は会期中、政府の芸術振興の予算削減に反対する映画関係者と、国家予算を浪費し過ぎると批判する一般市民の2団体から抗議デモを仕掛けられて波乱づくし。第6回大会は大幅な見直しが検討されている。

映画祭会場とローマ市内を循環するミニバス


〈ドキュメンタリー・セクションの審査員を務めた吉田佳代が語るローマ国際映画祭〉
「作品の質も含めて、まだまだスタッフは
 映画祭について勉強する必要があると思いました」

 
日本をフォーカスした第5回大会のレッドカーペットは、華道家・假屋崎省吾のフラワーアートが彩った
 吉田佳代は現在、アスミック・エースの企画・製作事業本部に所属している。その経歴は華々しい。旧ヘラルド・エース時代には、あのイタリア映画の名作『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)を買い付けした人物として知られ、2003〜04年には東京国際映画祭コンペティション部門のプログラミング・ディレクターも務めている。その間に培った人脈は幅広く、ローマ国際映画祭アーティスティック・ディレクションを務めていたテレサ・カヴィーナ(現在・アブダブ国際映画祭プログラム・ディレクター)と知り合いだった事から、第1回大会に招待された。


映画祭会場内のカフェテリアには、寿司に味噌汁、和菓子などの日本の食材も販売
 
「ローマ中心地のスペイン広場にあるホテルでイベントを行ったり、現在のメーン会場であるオードトリム・パルコ・デッラ・ムジカ近くに仮テントを設置して『ギャング・オブ・ニューヨーク』のソワレを行ったりと、ベルルスコーニ政権が打倒ヴェネチアを掲げて立ち上げた映画祭だけに派手に開催していました。私は(マーケットの)ビジネス・ストリートで招待されたのですが、渡航は往復ビジネス、宿泊は5ツ星ホテルの高待遇でした」

 
吉田佳代
 この参加を機会に、吉田はローマ国際映画祭とのコネクションを深めていく。中でも、日本作品のセレクションを担当していたマリオ・セスティとは、吉田が『ニュー・シネマ〜』をはじめとするジュゼッペ・トルナトーレ作品を長年買い付けてイタリア映画に造詣深いことから意気投合。そんな中、今回のエクストラ部門ドキュメンタリー・セクション審査員の依頼が来た。


映画祭会場周辺にはBarやレストラン、書店などが並ぶ


審査員メンバーとエクストラ部門のキュレーター マリオ・セスティ(写真左から3番目)を囲んで記念写真


シネマ・ヴィレッジでは観光庁が日本観光をPRするブース「Japan. EndlessDiscovery」を出展。
 
「審査員の苦労は、自分が東京国際映画祭に係わっていただけに想像出来たけど、単純に久々にローマに行きたいと思ったんですね。と同時にもちろん、アスミックの社員なので、良い作品に出会えればビジネスに繋げようかと(苦笑)。それでも会社には5泊7日の有給休暇を頂いて、参加しました」

 日本の映画人にとってローマ国際映画祭は、毎年、東京国際映画祭(2010年10月23日〜31日)と会期が重なっているために参加調整が困難だ。吉田も、東京国際映画祭が一区切りしてからローマに飛んだため10月28日のオープニングには間に合わず、同30日に現地入り。実質4日で石岡正人監督『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』を含む12本のコンペティション対象作品を観ることになった。他の審査員メンバーは、イタリアのドキュメンタリー映画界の重鎮ホルコ・キリチ監督、パリスシネマ映画祭の元プログラミング担当のアンナ・グロゴウスキ、スイスのドキュメンタリー作家・ヴィッリ・ヘルマン、同じくドキュメンタリー作家のアレクサンドル・O・フィリップ。彼らと共に、連日、夜9時や夜中1時から始まる公式上映を観賞しつつ、ミーティングを重ねて審査を行った。結果、優秀ドキュメンタリー賞は、オランダ出身フロリス=ジャン・ヴァン・ルーイン監督が、中国の公害問題に斬り込んだ『DE REGENMAKERS』に贈られた。

 
レトロスペクティブでは、今敏監督や黒澤明監督をフィーチャーした
「バックボーンの異なる5人だし、それぞれ我が出てくるので審査は喧々囂々。私は延べ約10年フランスに住んで議論には慣れている方だけど、そんな私でも自分の意見を押すことが出来なかった(苦笑)。特に中国の作品を映画祭に選んだり、賞を与える場合、その作品が政府の許可を得ているものか? 政府を批判している内容であれば、賞を与えることにリスクが伴うのではないか? 国際映画祭であるなら尚更、政治的な配慮が必要だと思います。その事を映画祭スタッフに問い合わせたところ、全く理解していなかった。そうした基礎知識や、セレクションした作品の質も含めて、まだまだローマ国際映画祭のスタッフは勉強が必要では?と思いました」



写真家・蜷川実花の写真展は、連日大盛況
 
 さすが!と思う面もあったという。イタリア政府とローマ市が全面的にバックアップしている事だ。会場は、ローマのポポロ広場からさらに北へ向かうこと車で約15分と離れているが、無料循環バスが日中は7分間隔、深夜も遅くまで走っており交通手段が整っている。さらに8歳〜17歳の学生向けのセクション「ALICE NELLA CITTA」には、学校単位で映画祭に参加しており、未来の観客の育成もぬかりない。第5回大会には1万816人の学生が観賞に訪れた。

 
映画祭バッグは3〜4柄アリ
「とにかく映画祭会場に人が多く、羨ましかった(※平均満席率は92%)。また私が東京国際映画祭で仕事をしていた時、コンペの審査員には日当を出して各自で食事をとってもらうのが基本だったのですが、今回は映画祭会場のレストランで使用出来る食事券が昼食・夕食の一日2回分が配布され、上映の合間に食事をとるのに非常に有り難かった。ただビジネス・ストリートで参加した時は豪華なホテルだったのに、今回は会場近くとはいえ三ツ星で部屋も狭いこと! 審査員は激務で、長期の滞在なのに。これには審査員仲間からも不満が出ていましたね」。


プレスルームはほぼイタリア人記者で占拠されていた
 
 些細なことを・・・と思うかもしれない。しかし、参加者に「また来たい」と思ってもらうために、作品のセレクションはもちろん、ホスピタリティーも映画祭の重要な要素であることをぜひ映画祭関係者には参考にして頂きたい。





〈第5回ローマ国際映画祭〉
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 2010年10月28日〜11月5日

【アウト・オブ・コンペティション】
『インシテミル 7日間のデスノート』中田秀夫監督

【トリビュート】
『パーフェクト・ブルー』今敏監督
『羅生門』黒澤明監督

【エクストラ部門】
〈ドキュメンタリー・コンペティション〉
『YOYOCHU SEXと代々木忠の世界』石岡正人監督

〈アウト・オブ・コンペティション〉
『−X−』伊月肇監督

【フォーカス・ジャパン】
『借りぐらしのアリエッティ』米林宏昌監督
『BOX−袴田事件 命とは』高橋伴明監督
『不惑のアダージョ』井上都紀監督
『さくらん』蜷川実花監督
『トイレット』荻上直子監督

〈スタジオジブリ・レトロスペクティブ〉
『宮崎駿とジブリ美術館』高畑勲監督
『風の谷のナウシカ』宮崎駿監督
『柳川掘割物語』高畑勲監督
『魔女の宅急便』宮崎駿監督
『おもひでぽろぽろ』高畑勲監督
『紅の豚』宮崎駿監督
『平成狸合戦ぽんぽこ』高畑勲監督
『耳をすませば』近藤善文監督
『千と千尋の神隠し』宮崎駿監督
『大塚康生の動かす喜び』浦谷年良監督

〈エキシビジョン〉
写真展「蜷川実花 for INternational Rome Film Festival」

※第6回ローマ国際映画祭は2011年10月27日〜11月4日開催



《次回予告》
Case.14
香港国際映画祭(中国)
 


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