HogaHolic LOGO
topNEWSREVIEWVOICETHEATERFEATURE
filmfestival
TOP > セカイノ映画祭カラコンニチワ
セカイノ映画祭カラコンニチワ
毎日、世界のどこかで行われている映画祭。日本で広く報道されるのはカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの世界三大映画祭ぐらいだが、邦画は昨今のジャパニーズ・ポップカルチャー・ブームの影響もあり、世界の意外な場所で熱狂的な歓迎をもって受け入れられているのだ。そんな現地の様子を、参加者自らレポートしてもらおう。
spacer
取材・文/中山治美
spacer

  http://filmex.net/

映画祭メーン会場の有楽町朝日ホール
spacer
 アジアを中心に、独創的な作品を紹介すべく2000年にスタートした国際映画祭。第1回から現在まで、ディレクター林加奈子とプログラム・ディレクター市山尚三という体制で運営されており、“ディレクターの顔が見える映画祭”として映画関係者のみならずファンの信頼は厚い。大きな柱は新進作家の新作を集めたコンペティション部門と、国内外の巨匠たちの足跡を振り返る特集上映。特に岡本喜八監督、清水宏監督らの特集上映のプログラムは、そのままベルリン国際映画祭をはじめとする他の映画祭で上映されるなど、日本映画の海外発信にも大きく貢献している。また、ゲストを招いての関連トークイベントも豊富で、映画の作り手とファンとの距離が近いのも特徴だ。2002年より特定非営利活動法人(NPO)を設立して活動しているが、実行委員会の理事には北野武監督作のプロデューサー・森昌行、諏訪敦彦監督、黒沢清監督、俳優・西島秀俊らが名を連ねている。

企画プレゼンテーションをする完山京洪監督


〈完山京洪監督が語る東京フィルメックス映画祭〉
「この中から何人スゴい奴が世界に出ていくのか…。
 このメンバーで再会したい」

 
有楽町朝日スクエアで行われた「Next Masters Tokyo 2010」のレクチャーの様子
 東京フィルメックスでは2010年から新たに、東京都と東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)との共催で人材育成プログラム「Next Masters Tokyo 2010」をスタートさせた。メイン講師に台湾の侯孝賢監督、プロデューサーでロッテルダム国際映画祭の元ディレクターのサイモン・フィールド、ゲスト講師にイランのアッバス・キアロスタミ監督、黒沢清監督、イスラエルのアモス・ギタイ監督ら豪華な顔ぶれを招き、商業デビューしていないアジアの新鋭監督20人がレクチャーを受ける権利を与えられるという、映画監督を目指すものならまたとない機会だ。第一回目ということもあり今回の参加者は、映画祭のプログラム・ディレクター市山尚三が各国のキーパーソンとなる映画人から推薦を受けた選りすぐりのメンバーたち。参加経験の講義はすべて英語で行われるため、語学が堪能であることも条件だ。


完山監督とメイン講師の侯孝賢監督
 
 その20人の中に選ばれたのが、初の長編映画『seesaw(シーソー)』でSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010のSKIPシティアワードを受賞した完山京洪監督。同映画祭で市山と出会い、通訳として参加していた米国帰りの山本兵衛監督と共に参加した。

「この中からどれだけスゴイ人が出てくるのか・・・と思うほど優秀な人ばかり。毎日が充実していましたね」

 講義は、映画祭期間中の2010年11月24日〜11月27日の4日間。全員が東京・神保町のビジネスホテルに宿泊し、講義場所の東京・有楽町の朝日スクエアまで通学するという合宿生活。土地勘のない海外の参加者を、完山監督ら5人の日本人がリーダー役となって食事の場所を決めるなど、生活面をサポートした。

「ホテルは4人部屋で二段ベッド。ちょっと狭かったですね(苦笑)。また、海外からの参加者には物価の差を考慮して食事代が支給されていたけど、僕ら日本人はなかった。なので交通費に東京でも物価の高い会場周辺で食事となると、正直言うと結構大変でした」


侯孝賢監督を挟んで参加者全員で記念撮影
 
 初日は東京国立近代美術館フィルムセンターで開催中だった「生誕百年 映画監督 黒澤明」展や東京・谷中散策をし、参加者同士の交流にあてられた。各自、挨拶代わりに自己紹介ビデオを制作して上映する趣向もあった。そして残り3日間は朝10時から夜8時30分まで濃密な講義が続く。中でも印象に残ったのは、イラン出身アミール・ナデリ監督の講義だったという。

「自身が昔作った短篇映画を上映した後、いかにして製作したかを説明してくれたんですけど、とにかく熱い! 『脚本は(胸を差し)ココで書け!』みたいな(笑)。インテリな雰囲気漂うキアロスタミ監督やギダイ監督とは対極的な、説得力あるシンプルな言葉の数々が胸に響きました。それに対して、映画の企画から製作、宣伝まで自分たちがどんな思いで向き合っているかを対談形式で講義した黒沢清監督と篠崎誠監督は、ずっと下を向いて話しており、一度も僕たちの顔を見てくれなかったのが残念でした。他国の参加者からも不満の声が上がっていたので『日本人はシャイだから』と説明しましたが」

 
「Next Masters Tokyo 2010」終了後、参加者全員で打ち上げに
 またプログラムには、企画コンペティションも含まれていた。参加者は事前に企画を提出し、選考の結果、会期中にプレゼンテーションする機会を与えられたのは8人。完山監督もそのうちの一人に選ばれた。

「侯監督から的確なアドバイスを頂きました。僕は前作『seesaw』に俳優としても出演しているのですが、侯監督が『今回の作品にも出るのか? でも、自分の映画には二度と出るな。監督と主演の両方をやっていいのは、北野武のようなスター性のある人物だけ。彼らは特別だ』と。見抜かれましたね。実際、『seesaw』で出演もしたら、監督として役者の自分を追い込むことが出来なかった。ただ『seesaw』は製作費20万円と予算がなかったので自分が出るしかなかった。なので侯監督には、『次回作の出演予定はないけど、製作費が20万円しか集まらなかったら、また自分が出るしかない』と答えました。そしたら侯監督が『市山に頼め。50万円ぐらいは出してくれるよ』と(笑)」


「Next Masters」参加者にも配布された、フィルメックスのスタッフTシャツは、アニエスベーのデザイン
 
 企画コンペの結果は、最優秀賞(副賞は賞金30万円)にシンガポールのアンソニー・チェン監督の『Ilo Ilo』、スペシャル・メンションにマレーシアのシャーロット・リム・レイ・クエン監督の『IT MUST BE A CAMEL』に贈られ、残念ながら完山監督は賞を逃した。それでも4日間は刺激的で、また参加者たちの親睦も深まったようだ。特に、同じ参加者の山本兵衛とは合同会社「vesuvius」(ヴェスヴィアス)を設立し、山本プロデュースで短篇『救命士』を制作した。また参加者のほとんどはFacebookを通じて連絡を取り合っているという。

 
フルメックスのオープニング作品はアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の『ブンミおじさんの森』。映画祭ディレクター林加奈子(写真左端)とQ&Aに応じるウィーラセタクン監督。
「韓国の金起賢監督は、日本で在日三世を主人公にした物語を考えているようで、在日三世である僕の話を聞きたいとインタビューに応じました。また井川監督には、『救命士』を制作する時にスタッフを紹介してもらいました。いずれまた、このメンバーで再会したいですね」

 東京フィルメックスでは、完山監督らをはじめとする参加者の意見を参考にしながら、第2回の開催を決定した。ベルリン国際映画祭のタレント・キャンパスと提携し、名称も「タレント・キャンパス・トーキョー2011」と変更される。ここから未来の巨匠が生まれることを期待したい。


完山京洪監督作
『seesaw(シーソー)

 
完山監督が主催する脚本の勉強会「カンキャク会」から誕生した長編映画。「30歳前後の恋愛観」と「大切な人の喪失」をテーマに、結婚を意識し始めた同棲カップルが、“現実”という壁を前に揺れる心を繊細に描いたビターテイストのラブストーリー。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010を皮切りに、ウィーン国際映画祭、ハワイ国際映画祭、ロサンゼルス・アジアン・パシフィック映画祭など国内外の映画祭から招待を受けている。年内公開予定。

公式サイト: http://seesaw-movie.jp/



〈第11回東京フィルメックス〉
spacer
 2010年11月20日〜2010年11月28日

【東京フィルメックス・コンペティション】

●最優秀作品賞
『ふゆの獣』(内田伸輝監督)

●観客賞
『Peace』(想田和弘監督)

【特別招待作品】

『The Depths』(日本・韓国合作) 濱口竜介監督
『妖しき文豪怪談』 落合正幸、塚本晋也、李相日、是枝裕和監督
『冷たい熱帯魚』(園子温監督)

【特集上映 ゴールデン・クラシック1950】

〜第一部「松竹黄金期の三大巨匠」〜

〈渋谷実監督〉
『本日休診』(52年)、『現代人』(52年)、『正義派』(57年)、『悪女の季節』(58年)、『もず』(61年)、『好人好日』(61年)、『酔っぱらい天国』(62年)、『大根と人参』(65年)

〈木下恵介監督〉
『肖像』(48年)、『カルメン故郷に帰る』(51年)、『カルメン純情す』(52年)

〈小津安二郎監督〉
『晩春』(49年)、『麦秋』(51年)、『東京物語』(53年)

【Next Masters Tokyo 2010】

〈参加者〉
塩崎翔平、山本兵衛、完山京洪、大野加寿夫、井川広太郎


〈第12回東京フィルメックス開催予定〉

開催期間:2011年11月19日〜11月27日
上映作品の応募:2011年7月31日締め切り。

「タレント・キャンパス・トーキョー2011」
2011年11月21日〜11月26日
募集人数:国内外あわせて約12〜15名
応募期間:2011年6月1日〜6月30日
http://www.talentcampustokyo.com


《次回予告》
Case.16
非武装地帯国際ドキュメンタリー映画祭(韓国)
 


ページトップへarrow    


©2008 HogaHolic TRYWORKS LOGO