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是枝裕和インタビュー

映画初主演となった“まえだまえだ”の前田航基(兄)・旺志郎(弟)や、内田伽羅をはじめ、出演した若い俳優陣が高い評価を受けた是枝裕和監督の近作『奇跡』。『誰も知らない』では、主演の柳楽優弥が、2004年度のカンヌ国際映画祭において史上最年少で最優秀主演男優賞を受賞したのは、誰しもの記憶に残るところだ。自身も国内外の多くの映画祭で作品賞、監督賞を受賞した。子供達の生き生きした表情を見事に引き出すその演出方法とは? 是枝裕和監督にその秘訣を聞いた。

取材・文/植山英美

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子供の言葉から台本の文字が浮かぶ事が嫌で
「渡さないでやってみよう」と思ったのが最初


 

『奇跡』
(C)2011「奇跡」製作委員会
――『奇跡』には台本がなかったとお聞きしたのですが。

是枝:一応台本を書いていますが、子供には渡さないで、現場で口伝えているんです。よかった面は、僕は東京の言葉しかしゃべれないから、彼らはそれを1度自分の言葉である大阪弁に直すので、あんまり”言わされている”って感じには、ならなかったのではと。

――以前の作品、例えば『怪しき文豪怪談』の中の『後の日』にも子供が重要な役割で出てきますし、『歩いても歩いても』でも子供達が出て来ます。同じ方法で撮られたのでしょうか。

是枝:子供(を演出する時)は全部そうです。『誰も知らない』以降の作品はみんなそういうやり方です。

――どのような経緯で、今の演出方法に至ったのでしょうか?

 
是枝:普段子供の芝居を見ていて、一番いやだな、と感じるのは、子供の言葉から文字が浮かぶ事なんです。「台本の文字が浮かぶ芝居はいやだな」と。「じゃあ渡さないでやってみようかな」と思ったのが最初です。『誰も知らない』の撮影の時、子供達を選んで、リハーサルを始めて、台本を覚えてきて演ってもらったら、あまりうまくなかった。なので、この子達をもっとナチュラルに、もっと自由に撮る為には、「台本を明日までに覚えてきてね」ていうやり方ではない方法が必要ではないかと。僕が撮りたいと思う子供が撮れるのでは、と思ったのです。試してみたら、ゲームのように遊び感覚で出来たんですね。宿題がないし、日々、何を撮るわからない状態で現場に来るので、緊張しないで入れるし、「今日は何撮るの? 今日はどこに行くの?」ていう感じで毎日が過ごせるようで、子供にはその方がいいなと思いまして。

――戸惑ったりする子供も、中にはいるのではないでしょうか。

是枝:『誰も知らない』以降は、”台本なし”が楽しめる子供をオーディションで選ぶようにしているんです。ですのでどの子も会ってみないとわからない。会って、オーディションの流れの中で、「この人はこう言うから、こう演ってみて」とか。実際それが不自由な子もいるんですよ。キャリアを積んでいると、事前に台本を渡されて、感情を掴んでからの方がやりやすい子もいるから。

 
――『奇跡』の子供達、みんな生き生きしています。

是枝:瞬間瞬間で生きて欲しいと思っていたので、子供は物語を知らなくていいと思っているんですね。例えば鹿児島のお兄ちゃん(前田航基)が久しぶりに福岡の弟(前田旺志郎)とホームで会う場面がありますが、弟が女の子達を連れて来ることを知らないので、お兄ちゃんが本当に驚いているんですね。そういう形でやっているんです。

――話の流れを知らせずに日々起こった出来事みたいに…

是枝:お兄ちゃん達が鹿児島に帰って来て、最後にみなで「ただいま」って言いますよね。犬が死んじゃった子がリュックをもう一度開けて中を見て、その場で生き返っているか確かめる。「生き返ってないけど、よしって歩き出すんだよ」て言ったら、「え、生き返らないの?」て。「ハッピーエンドにしてよ」とも言われたんだけど(笑)、彼の中では、映画はハッピーエンドで終わると思っていた。それでいいと思うんですよ。生き返らないって知らないでいた方がいいなと。

――母親のやっているスナックの上の部屋で、子供が集まって話しているシーンがとても印象が残っています。

 

『奇跡』
(C)2011「奇跡」製作委員会
是枝:あのシーンは、一人400feet まるまるカメラを回すと決めて、一人10分でね。”どんな奇跡が起きて欲しいか”と、「友達に聞かせてみて」と、好きにしゃべらせて、僕が、子供達に耳打ちしながらツッコミを入れて、「ほんとにこれでいいのって聞いて」とか、「お兄ちゃんは何をお願いすると思う?って聞いて」とか、耳打ちしながらその子の言葉で聞いてもらって。内田伽羅ちゃんの場合は、ちゃんと役柄のおかれたシュチュエーションを踏まえた上で、自分の内側を探しながら、「お母さんが女優を辞めたのは私が生まれたからだと思う」って。台詞ではなくて、彼女が自分で考えて答えた言葉だったので、すごいなあと思って見ていました。そういうチャレンジを撮影の前半でやっておいたから、「意外とこの映画は、覚えた台詞を言うよりも、もうちょっと自由にしゃべっていいんだな」という共通認識があったので、熊本行って、旅が始まったりする頃には、どんどんフリートークに、自由に話してもらえた。

――電車の中で、みんなで寝ているシーンも凄くかわいくて、足が長い内田さんが身体を折り畳むようにして寝てたり…

是枝:遊び過ぎて疲れちゃったんですよ。撮影が終わって、撮りたいものが撮れたんで、じゃあ休憩、となったら、子供がはしゃぎ過ぎて、疲れて寝ちゃったんですが、とてもかわいかったので、カメラマンをこっそり呼んで撮ったんです。

――”まえだまえだ”の前田航基君、旺志郎のお2人が、とにかくすばらしかったのですが、オーディションの時から目立っていましたか?

是枝:もう全然、いろんな意味で別格でした。理解力とか、跳ね返ってくるものですとか。やっぱりスピードがあるしね。言葉はひとつひとつのセンスはいいし、お兄ちゃんはもう会った瞬間にこの子だなって。最初は「男の子と女の子が新幹線を見に行って出会う」という話だったので、弟の役はなかったんですよ。ですが、弟の旺志郎君に会ったらあまりにも魅力的だったんで。それで、シュチュエーションとか、ストーリーを変えたんです。

――なんか甲高い声で、ペラペラしゃべるのが、かわいいですよね。

 

『奇跡』
(C)2011「奇跡」製作委員会
是枝:いいですよねー。しかもファインダー越しに見ると色っぽいんですよ。非常に色っぽい、いい役者になるんじゃないかと。

――おにいちゃんがちょっとぽっちゃりしてきちゃって、

是枝:(笑)今はちょっと痩せたけどね。

――東日本大震災以降、家族が離れて住むという悲劇が、多くの家族に降り掛かって来てしまっていると思うのですが、封切りの6月が震災3ヶ月後でしたし、DVD発売が11月中旬だったので、ちょうど映画のシチュエーションで、会いたくて会いたくてしょうがなくなっている兄弟の子供達って居るんじゃないかと思ってしまったんですが、「映画の兄弟と同じ気持ちなんだけど」という感想を聞いたりした事は?

是枝:仙台と福島で特別試写会をやったんですけど、そこには家を流されちゃったという人も見に来てくれたりして、「元気をもらいました」と言っていただいたり。あんまり震災に絡めて何かを言うつもりはないんですけど、ただあまりのタイミングだったので、自身に重ねた方もいらっしゃると思います。そういった方々の気持ちがちょっとでもほぐれれば、と思います。

――震災後にドキュメンタリー作品を撮ってみたいと思われたことは?

是枝:実は4月の頭に被災地へ行ったんです、カメラ持って。撮ったんですけど、僕はその時点で作品にするのは止めようって思ったんです。

――それは何故ですか?

 
是枝:無理だなと。あまりにも崩壊の状態が圧倒的だったので。ちょっとそれを目の当たりにして、ドキュメンタリー作品にしようっていう気持ちには、なれなかったですね。何故、って聞かれても難しいんだけど。ただその時の風景を見た事と、匂いをかいだ事。という記憶は強烈に残っていますので、まあそれを自分の中にとどめておいて、次のフィクションに向かおうと。直接震災に絡むと言う事にはならないと思いますけど、何かしらの影響はあるだろうと思います。




 
  Profile: 是枝裕和(これえだ・ひろかず)

1962年、東京都出身。87年に早稲田大学第一文学部文芸学科卒業後、テレビマンユニオンに参加。主にドキュメンタリー番組を演出、現在に至る。
主なテレビ作品に、「しかし…福祉切り捨ての時代に」(91年/フジテレビ/ギャラクシー賞優秀作品賞)、「もう一つの教育~伊那小学校春組の記録~」(91年/フジテレビ/ATP賞優秀賞)、「記憶が失われた時」(96年/NHK/放送文化基金賞)などがある。
95年、初監督した映画『幻の光』が第52回ヴェネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞等を受賞。2作目の『ワンダフルライフ』(98)は、世界30ヶ国、全米200館での公開。04年、監督4作目の『誰も知らない』がカンヌ国際映画祭にて映画祭史上最年少の最優秀男優賞(柳楽優弥)を受賞し、世界的な注目を集める。以降も、初の時代劇に挑戦した『花よりもなほ』(06)、自身の体験から生まれた『歩いても 歩いても』(08)、Coccoのツアーに同行したドキュメンタリー映画『大丈夫であるように―Cocco終わらない旅―』(08)、韓国の人気女優・ペ・ドゥナを起用し、第62回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品された『空気人形』(09)など、新たな試みに挑戦し続けている。
『奇跡』(11)では、第21回TAMA シネマフォーラムにて最優秀作品賞、第26回高崎映画祭では、最優秀新人男優賞を、前田航基、前田旺志郎、最優秀新人女優賞には内田伽羅が受賞した。

『奇跡』DVD&Blu-ray情報
DVD限定版 ¥6,300(税込)
DVD通常版 ¥3,990(税込)
Blu-ray ¥5,040(税込)
※いずれも発売・販売元:バンダイビジュアル /2012年11月9日より発売中
公式サイト:http://kiseki.gaga.ne.jp/
(C)2011「奇跡」製作委員会
   

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